LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/7/16  三鷹 三鷹市芸術文化センター 風のホール

出演:花響V
 (特別出演:サプトノ、
  カルティカ:秋間ゆう子・植村紀子・大田美郁・片山雅子・小西正大
        佐々木美奈子・佐草夏美・曽根朗子・武元民雄・田村史子
       戸張勢津子・長谷川ひろの・三浦牧子・宮元雪絵・森岡真理子
  クスモ:稲毛やよい:on 2、藤島育子 on 2、針生すぐり on 5
   Guest:中田一子:ガムランゴング、櫻井あきら:ランバンサリ、後藤弓寿・古川麦、
         江刺孝敏:tp、佐々木弘一:snare drum,

   
 ジャワのガムランと舞踏のグループ、カルティカとクスモによる自主公演"花響"の5回目。特別出演のサプトノはジャワの有名ミュージシャンだそう。ガムランは興味あってCDなら何枚か聴いている。しかし生の公演は03年8月のウロツテノヤ子ぶり。

 会場の風のホールは初めて行った。けっこうきれいな公共施設でキャパ600人強。ローカル・テレビの取材も、この日は入ったらしい。
 おもむろに1ベルが鳴る。強い電子音でなく、鈴のような響き。この公演に音色をあわせたみたいで、なんだか面白かった。

 客電が落ち、カルティカのメンバーが登場。客席のしわぶきが消えるのも待たず、静かにゴングが鳴り、演奏が始まった。

【プログラム】
1.グンデン・ボナン"ドゥングントゥルラレ"
2.スリンピ"パンデロリ"
(休憩)
3.グンデン"チョンドロ"
  スラカルタ様式による古典の名曲。
4.トルバンガン
5.ガンビョン"パンコル・ラングン・クスモ"
(アンコール)
6. ?
 セットリストというよりプログラム、と記したほうがこのコンサートにふさわしそう。
 全般的にジャワ宮廷っぽい、おっとりしたガムランな印象を受けた。
 曲順はプログラムより転載。解説も丁寧で読み応えあり。以下の曲説明もほとんどがプログラムの記述を基に書いてます。

 (1)はペロッグ音階リモ調。グンデン・ボナンとは青銅楽器と太鼓で演奏される楽曲種類で、ボナン(鍋みたいなゴング)がリード楽器になる形式だそう。
 ステージ下手奥のの小ぶりの鍋ゴング、ボナン・バヌロスが小刻みにリズムを提示し、手前のボナン・バロン(ちょっと大きめ鍋ゴング)がゆったりと旋律らしきものを出す。 鉄琴たちが波打つようなフレーズをカウンターで紡ぐ構成だろうか。ときおり、ゴングがそっと鳴る。
 静かな雰囲気につつまれだんだん朦朧と、次いでウトウトとしてきた。

 心地よいひとときに続いたのが"パンデロリ"。ジャワ舞踊のひとつで、本来の踊り手は四人。ふたりの場合はサリ・クンバルと呼ぶそう。
 プログラムから推察するに、伴奏はペロッグ音階バラン調のいくつかを、メドレー形式で奏でたようだ。
 
 いったん暗転し、メンバーが楽器交代する。テンポはゆったり、しかし細かいフレーズが重なる。リード楽器はボナン・バロンだったろうか。明確なメロディで押すのでなく、噛み合いながら展開した。
 トランペットやスネア・ドラムが入る編成。20世紀初頭に始まったスタイルだそう。
 スネアはときおり明確なロールを出す。トランペットはアンサンブルに埋もれる形で、わずか自己主張をした。伝統編成から見れば異物ながら、微妙に調和していた。
 
 無言で踊り手が登場。中央へ向かい鏡写しなポーズでふわり、ふうわりと舞台で回った。

 素足を踏み出し、じわり地を踏む。土踏まずを曲げるように、地面へ足を。ぺたり足裏がつく瞬間、足指はまだ宙にある。一番最後に、足指が触れた。
 ステップの細かな動きも、手順があるのだろうか。

 やがて二人は剣を抜いた。互いの背に向かい突き出し、くるくる丸く舞う。あくまでも優雅に、静やかに。
 体重を感じさせぬ舞が続き、踊り手は舞台から去る。まだ演奏は続いたまま。
 たっぷりと音楽を聴かせ、前半の幕を下ろした。

 後半は特別出演のサプトノによるルバブ(2弦楽器)を前面に出した演奏。
 チューニング風の響きから、無造作な独奏へ向かう。即興なのかは不明ながら、途切れずに。伴奏はグンデル(鉄琴の一種)だったかな?
 鉄琴はフレーズを紡ぎ、回転させる。
 ルバブへつかず離れず演奏した。マレットを人差し指と中指で握るように見えた。他の奏者は、ほとんど親指と人差し指の間でマレットを持ってるようだったが。

 ルバブとグンデルの合奏が一段落。一呼吸置き、全体のアンサンブルが加わった。
 
 (4)では奏者が全員、ステージ前に集まった。小さな太鼓などを手に持つ。まず一人がゴングを鳴らし、カウンターでもう一人。さらに別の奏者が、ポリリズム風にゴングを小刻みに叩いた。
 そして、いっせいに他の奏者がトルバン(タンバリン風の楽器)を、細長いスティックで威勢よく叩く。ときおり揃って別の方向を向きながら。

 オレカマの原型のひとつを見てるよう。ポリリズムで勇ましいビートの応酬が爽快だった。サプトノが本公演のために書き下ろしたという。

 何人かは途中でジャンベ風の楽器に持ち替える。リズムが深まり、さらに下手二人が金属の短い棒で出来た、小さいパーカッションを交互に叩く。
 音程がそれぞれ異なり、互いが叩くフレーズが応答するメロディとなった。
 途中から幾人も登場し、歌を披露した。
 
 最後に全員が楽器へ戻る。前列に座った男女のリフレインが強く印象に残った。特に男性が数音で構成するエキゾティックなフレーズが好み。
 踊り手が一人、現れる。体にたらした布をときおり跳ね上げ、舞台を丸く回った。
 リズム、メロディ、歌声、そして踊り。ここで全ての要素がひとつにまとまった。

 大きな拍手が飛び交う中、そのままアンコールへ向かう。
 各自が座ったまま、トルバンや金属のパーカッションを持ち、演奏したと思う。

 前後半で2時間の公演。ほんの少し、ガムランのアンサンブル・アレンジがイメージわいた。もっと見たら、さらに細かいところまで味わえそう。
 この日は優美なゴングの響きにどっぷり浸かってるだけで、時間が立ってしまったかも。

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