LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2007/5/16 新宿 Pit-Inn
出演:川下直広トリオ
(川下直広:ts、不破大輔:b、岡村太:ds)
頻繁なライブ活動の川下トリオだが、ぼくは昨年11月ぶりに聴く。
川下トリオとして、ピットインでは2回目のライブ。ステージ中央へマイクが一本たち、右手にウッド・ベース。左手にドラム・セットの配置。
20時を回った頃、おもむろに楽屋からメンバーが登場した。
川下は最後に現れ、ステージの片隅に椅子をひとつ準備した。そして無言でテナーを構え、吹き始めた。
細く、軋ませながら。川下はアドリブで吹く。無伴奏で。
<セットリスト>
1.ウメロック
2.海
(休憩)
3. ?
4. ?
5.New
Generation
冒頭からテナーの即興は奔放に広がる。しばらく、テナーは無伴奏ソロだった。
岡村がスティックを片手に、参加の隙をうかがう。
すっとフレーズが着地しかけた瞬間、不破と岡村が一気につっこんだ。
最初の15分くらいはフリーが続く。やがてテナーが"ウメロック"のテーマを。
どこか、か細げに。ドラムが盛大に鳴る。PAバランスで最初は聴こえづらかったウッドベースは、次第に強く響いた。
結局"ウメロック"は、40分間ぶっ続け。テナーのアドリブが果てしなく続いた。
この日は3人とも独特の凄みあり。
川下は飄々とサックスを操る。体を揺らしは控えめ。どっしり立ってアドリブ。ときおり循環呼吸を取り入れて。
ダイナミクスよりも即興の紡ぎに軸足を置いたか。ふっと気づくと、彼の額は汗まみれ。行く筋も滴っていた。
不破は猛烈に弦をはじく。今夜聴いてた席では不破の姿が見えづらく、音のみがスピーカーから降ってくる。
最初は細身の音色は次第に太くなり、疾走した。
後半1曲目の早弾きアルコ・ソロもすさまじかった。がっしりとリズムをわしづかみに、高速リフが立て続け。むろん合間にアドリブをたっぷり挿入して。
鮮烈だったのが岡村。曲ごとにソロを取り、そのたびにリズムの表情を変えた。スティックやマレット、ブラシの使い分けだけでなく。後半セットではスネアの響き線も細かく操作するそぶり。
ドラムのアレンジで、サウンドにメリハリをつけていた。汗まみれで笑顔を貼り付けた岡村は、叩き続けた。
1曲目はテーマの繰り返しからテナーのアドリブへ。
ビーターがとれたか、岡村が叩きながら直す。レギュラー・グリップで突っつくように、ジャングル・ビートを提示した。
ハイハットが裏拍で小刻みに鳴る。しかしスティックはほとんど叩かない。
左手はタムとスネアをせわしなく行き来し、右手はライドを連打しつつ、スネアとフロアを移動した。
この日は1タム1フロア、シンバル3枚。一番左手のリベット付きクラッシュが、余韻を残す。ひたむきに連打するパターンで、ほとんど残響が聴こえぬのはご愛嬌。
テナーがドラム・ソロへ導く。拍の頭をときおり半拍ずらし、盛大にドラム・ソロが轟いた。
ロールっぽいアプローチながら、テクニックのひけらかし無し。あくまでもバッキングのビートを変奏させ、叩きのめす。
明らかにテーマをドラムで歌う。やがてメロディをリズムで歌い崩した。
不破が絶妙のタイミングで、低音を滑り込ます。ソロこそ無いが、ベースの音数で存在感をがっちり見せる。
無造作にアルコを持ち、ぐいぐいと弦をこすった。
くっきりとリフのイメージを整えつつ、フレーズはさまざまに違う。高速パターンも含め、隙間無くグルーヴを埋め尽くした。
2曲目はいきなりテーマから。
最近またレパートリーにしてるそう。久しぶりのライブ体験で、めっちゃ嬉しかった。聴きたかったんだ、これ。
フェダイン時代に演奏の、川下のオリジナル"海"。川下トリオではテナー一本で表現された。
テーマが高まり、ドラムのリフ。そして3人が疾走し、フェルマータへ。かっこいいなー。
2回繰り返され、アドリブへ向かう。まずはテナー。循環呼吸で即興が展開した。リズムはひとつながりで流れる。
ドラムソロでは、シンバル中心のアドリブに。3枚のシンバルとハイハットを駆使し、波濤が崩れるようにはじけた。
ハイハットを半開きにさせ、スティックの連打が鮮烈。
さらに各種シンバルの打ち鳴らしで乱打。それぞれのシンバルがてんでに動くさまも、波のようだった。
続いてベース・ソロへ。早いフレーズでぐいぐい押した。
グリサンドさせ、揺らがす音程で力押し。左手でも弦をはじき、両手で柔軟に低音を揺らす。
バッキングもリフが素晴らしい。絶え間なく音が弾け、次々にフレーズが展開した。
脇の椅子で座って聴いていた川下が、二音、三音軽く吹く。立ち上がってアンサンブルへ戻った。
テーマは幾度も繰り返し。最後に軽くテナーを振り、悠然とコーダを決めた。
フェダインとはまた違うアレンジで良かった。
後半セットのまず2曲、ぼくはライブで聴くの初めて・・・かな?
ファンファーレのようにテナーが甲高くフレーズを。すぐさまアドリブへ突入した。
前半の高テンションと変え、ちょっと一息ついた感触。
不破はアルコでぐいぐい弦をこする、激しいソロ。アルコ弾きでの早弾きは初めて聴いたかもしれない。
ドラミングはシンバルとタムが交錯するパターンを多用した風に思う。
続く曲がセカンド・セットのメイン。30分以上にわたって演奏された。
激しく炸裂はしない。どこかテンションをするりと抜いた感触。ほんのりユーモラスなメロディがアドリブへ変わる。
不破がリフを多彩に展開し、川下は延々と吹き連ねた。
岡村のドラミングは、ここで初めてブラシを持つ。左手はスネアの表面をこするより、はたくかのよう。
ぱたぱたと軽快なドラミングだった。ソロもブラシ中心だったか。
途中でマレット、そしてスティックへ持ちかえる。ひとしきりドラム・ソロが続き、不破ががっつりと低音を響かせた。リズムが強靭に締まった。
最後は"New
Generation"でロックンロールに決める。川下がイントロからすかさずテーマへ。ドラムとのソロ回しが盛り上がる。
岡村は軽やかに、そして体をゆすりながらスネアをひっぱたいた。
後半も約1時間のステージ。前後半でがらりイメージを変え、幅広さを示すかの選曲。前半セットの熾烈さが、とにかく印象深かった。