LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/2/19   Fitzroy,Melbourne Rainbow Hotel

出演:Paul Williamson Hammond Combo

 Paul Williamson Hammond Comboのライブは、現地のフリーペーパーで適当に選んだ。場所も現地のインフォで尋ねた。だからまったく予備知識なし。ローカルバンドかな、と気楽に考えてた。
 ところがこの説明によると、リーダーのポール・ウイリアムソンはメン・アット・ワークらとも競演歴あるベテラン。今まで3枚のCD出してるそう。買いたかったな。CD手売りしてたのかも。
 ちなみにポールがリーダーだと、今初めて知った。バンド名からオルガン奏者がリーダーかと。どうりでサックスのおっさんが、ずっと司会して目立ちまくりなはずだわ。

 上記のバンド説明サイトではトリオ編成だが、今夜はギターも加わったカルテット。たまたま今夜だけなのかは不明。こまめにMCしてたが、自分の英語力では歯が立たず。
 毎週月曜日に12年以上、ここで演奏を続けてるらしい。全員が50歳がらみかな?

 Rainbow Hotelはライブを聞かせるパブ。メルボルン市内からトラムで移動が手軽だ。
 112番のトラムに乗って15番の停留所で下車、信号渡ってSt David Streetを東へ、2ブロックほど行ったところ。

 店名からおしゃれな場所を期待したし、あとで見つけたサイトでは、えらくきれいな写真も載っている。実際はどっこい。えらく汚いパブでした。床は沁みだらけで薄いカーペットだし、バーカウンターはぐらつきそう。いかにも使い込んだ感じだった。
 ステージは入って右奥に、スペースあり。4mx2mくらいの大きさかな?こじんまりしてる。

 ちなみにここではGrand Wazooってバンドが、毎日曜日に演奏。面白そう。やたら大人数だが、Rainbow Hotelの小さいステージにのりきるのかね。
 なおRainbow Hotelは日によってブルーズやロックもやるハコのようだ。
 
 店の看板見ると「ライブは21時半から」の表示あり。21時ごろから店の隅で粘る。客が誰もいやしねえ。
 ビールが一番小さいコップで3ドル強。ミュージック・チャージは無いかわり演奏中に飲み物頼むと、料金が倍(この例なら、7ドル)になるシステムで。一杯毎の清算みたい。
 タバコを店内ですえるのが嬉しい。メルボルンでは屋内で全て禁煙のため。

 スタッフによればライブは、21時半頃から1stセットが始まる3セット制。1セット45分くらいらしい。
 実際は21時半ごろに、やっとミュージシャンがぞろぞろ集まり、のんびりセッティングを始めた。顔見知りらしい観客と談笑。しだいに客もあつまり、演奏始まる頃には立ち見も出るほど。50人くらいかな。
 ただし、音楽目当てでなく、単に飲みにきたと思しき客も多し。演奏中もひっきりなしに喋ってた。ライブを売りにしても、あくまで酒が主体の場所なのだろう。

 セッティングはのんびり。スーツケースに入れた譜面を足元へばら撒く。ドラムは2タム。ひとつは小さい口径だった。
 ポールはテナーとバリトン・サックスを準備。
 驚いたのがオルガン。本物のハモンドB−3だろうか。さらにスピーカーはレスリー。あんなでかいの、よく毎回のライブで持ち運ぶなあ。

 演奏が始まったのは22時を回った頃。
「そろそろ始めるぞ。タバコの火を消してくれ」
 ポールが告げ、客電が落ちる。コップ片手の観客がわやわやと、ステージ前へ集まった。かまわずカウンターで喋り続ける人たちもいるのが、いかにも。
 客層は幅広く、リタイアした老夫婦から、刺青入れたスキンヘッドの若者まで。洋服も普段着からパンクス、こざっぱりお洒落までばらばらだった。
 
 まずはスローなジャズから。曲名は不明。ポールはテナーをふくよかに鳴らす。
 音使いはオーソドックスながら、甘いメロディをじわっと聴かせた。メンバー紹介を兼ねて短めだが、オルガンやギターへもソロを回す。10分くらいの演奏。
 かなり寛いだ、スイング系のジャズ。エフェクターを通さぬギターのブライトな響きが心地よかった。

 1stセットで5曲を演奏。そのなかで緩急をつける。
 2曲目はちょっとテンポを上げ、ブルージーに駆けた。まずはドラムのソロから。ハイハットをこまめに踏みながら、軽快にスネアを叩く。シンプルなスティックさばきで、しゃきしゃき刻んだ。

 ところがPAがおかしく、後ろへ音が届いてないらしい。中断、あれこれステージ横の機械をいじる。
 「これ、聴こえてる?中域はどうだ?」
 とか、言ってたようだ。
 
 気を取り直して、テナーやギターのソロをたっぷりのジャズ。オルガンはさほど目立たない。ステージ横で若い男がノリノリで踊ってた。
 ほかの楽器がアドリブ中も、テナーは薄く吹いて音へ厚みを出す。ギターとオルガンはスピーカー越し。ドラムはPA無しだった。
 テナーはMCマイクを使って拾う。スタンドをベルに向かわせず、口の位置へたてたまま。サックスの音がでかいので、きちんと拾ってたみたい。

 3曲目はたぶん、スタンリー・タレンタインの"シュガー"だ、と紹介したはず。
 ポールはバリサクへもちかえて、クルーナー調で歌い始めた。体が大きいためバリサクが小さく見える。
 アドリブもたっぷり。音を割らせず、訥々と展開。明るい雰囲気で進んだ。
 2曲目以降はソロ回しをじっくり行い、それぞれ15分近く演奏してたと思う。ギターは早い指回しこそないが、淡々とフレーズを重ねた。

 聞き覚えあるがタイトル思い出せない4曲目は、ファンキーに盛り上がる。
 テナーへ戻ったポールが吹きまくった。ドラムの長めなソロもここかな?
 ギターやドラムへソロを回すが、リーダーはサックスだと強烈にアピール。
 だからこそ、オルガンがバンマスと誤解してたので「おとなしいオルガンだなあ」とマヌケに考えてた。
 実際、ベース役もつとめるオルガンは前面に出ない。たまにソロを取るていど。がっしりとグルーヴを支えてはいたが。

 ドラムのリズムが不思議な感じ。ポールのアイコンタクトで倍テンポっぽくオルガンやギターが疾走しても、マイペースで刻み続ける。ちょいとモタり気味か。
 盛り上がりそうで足踏みする、奇妙なノリだった。

 最後の曲もボーカル入り。曲名や作曲者も言ったようだが、聴き取れなかった。聞き覚えはある。
 テナーをぶら下げて、ポールが歌う。短いソロ回しでぐいぐい押し、1stセットの幕を下ろした。約1時間の演奏。

 終演はたぶん1時を回ったと思う。治安が不安なのと、タクシーが拾えるか心配で、1stセットでとっとと帰った。
 ちなみにトラムはぎりぎり動く時間。たまたま流しのタクシーを拾えたが。市内まで1000円くらい。
 同じく1stセットのみで帰った客もいたのかな。演奏終わったとたん、オープン・スペースへコップ持って何人かは移動してた。

 地に足のついた、寛げる演奏。前衛性は無いが、どっしり安定してる。
 観客も地域密着。ライブを楽しむもよし、一日の終わりに酒飲みながら生演奏聞くもよし。思い思いに楽しんでいた。ある意味贅沢な、現地の日常に触れるいい機会だった。

目次に戻る

表紙に戻る