LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/2/2   西荻窪 アケタの店

出演:マルハウス
 (石渡明広:g、上村勝正:b、外山明:ds)

 マルハウスのライブを聴くのは昨年の6月ぶり。彼らはその後、アケタで9月にもライブをやっている。6月も9月もゲスト(?)に石田幹雄が加わったが、今回は完全なトリオ編成。ホーン隊が抜けたマルハウスだが、完全トリオだとどんな演奏か楽しみだった。
 ステージの最下手に石渡が立ち、上村が中央。外山はアケタのドラム定位置に。思い切りステージの左手にメンバーが集中する立ち立ち居地がなんだかユニーク。
 20時を15分ほど回った頃に、客電が落ちる。
 ぎゅっと凝縮したステージだった。

 まず3人が無言で視線を交し合う。誰も音を出さないさまに、それぞれがにやり笑った。
「どうぞ」
 石渡が上村へ頷く。太い音でリフを弾きだした。すかさず外山も加わる。始まって3秒で、極上のファンクが溢れた。

 執拗にワンコードのリフがつむがれ、シンバルやドラムを先端ではたくリズムがあおる。最初の曲はなんだったろう。"C-Zone"かな?
 ブライトでほんの少し歪んだギターが、柔軟なテーマからアドリブへ雪崩れた。
 ソロ回しは皆無。とにかく石渡がギターを弾きまくる。一塊のフレーズを積み重ねるように。次第にフレーズ単位が長く。初手から猛烈な勢いだった。

 外山のドラミングが刺激的。ドラムのスツールにパイプ椅子を二つ重ね、高い位置からスティックをドラムへ落とす。アクセントは多様ながら、そこかしこでばっちり拍の頭に乗っかる。
 ギター・ソロが続くけれど、リズム隊はバッキングのように聴こえない。ベースのフレーズもリフの合間に挿入され、シンプルなコンボ編成ながら三様の個性がからんだ。

 石渡の譜面台にはセットリストらしきメモも。ただしステージが進むにつれ、石渡がその場で曲順を決めていたのかも。
 後半セットでは石渡が曲名をつぶやき、上村が譜面を繰るシーンもあった。

 外山は譜面なし。石渡をじっと見つめ、リフにのってドラムを叩きのめす。ハイハットがすうすう浮かんだ。
 2曲目の途中ではすっと立ち上がり、左足を軽くまげて重心を保つ。バスドラを踏みならした。
 指先だけでスティックを操る合間に、手首や腕とさまざまな関節を使い分けてボリュームやフレーズに多彩さを出す。
 立ちっぱなしじゃなく、曲によっては座ったまま演奏した。

 スティックを左右にはたくがごとく、ライド・シンバルを刻む。左手はスティックの中ほどを持ち、スネアに押し付けながらタムのリムを叩く奏法も多用した。
 対照的に上村はがっしりと両足を動かさない。広いスタンスで立ち、上半身を揺らしては弦をはじく。ときおり唇を軽く開けて、グルーヴを搾り出した。

 MCは皆無。1曲目が終わったときに石渡がメンバー二人を紹介、自らの名前も告げずに次の曲へ雪崩れる。
 アップテンポを2曲続け、混沌なスローへ向かった。
 前後半とも5曲くらいやったろうか。CDで聞き覚えある曲と、耳馴染みない曲が半々くらい。多分前半では"Third Runner"、"魅惑のプールの底に眠る水泳者のように"、"First runnner"などをやったと思う。

 1stセット後半では思い切りフリーに。上村が断片的にフレーズをつむぎ、石渡は弾きやめて見つめる。外山が間を抜いたドラミングで、空間を活かした。
 リフではぐいぐい押す上村が、アドリブではグルーヴを避ける展開を選び興味深かった。

 最後が"First runnner"だったろうか。曲名をつげ、目をくりっとさせた石渡が上村を眺める。一呼吸置いて、滑らかにベースがリフを連ねた。
 すっとブレイク、一気にインテンポへ。鋭いギターとあわせ3人が一丸とつっこむ。
 前半は40分程度。

 後半セットは"Hot Brain"から"Flowers"と向かった。シャープに石渡がテーマのリフをストロークで弾き続ける。
 外山と上村がポリリズミックなからみをみせ、やがてがっしりテンポが合った。
 リフを繰り返す石渡を、外山がじっと見つめる。ニットキャップをかぶった石渡が、ゆっくりと頭を下げて合図。
 すっと音が抜かれ、超高速で複雑なテーマのギターがつっこんだ。

 "Flowers"ではゆったりと音が広がる。サイケな響きが3人編成だとタイトに展開した。
 ボリュームつまみやペダルで、ふわっと音を膨らますアドリブはここだったか。
 後半セットのほうは、かなりその場で曲順を決めていた感じ。やはりMC無しで、立て続けに演奏した。
 
 外山が立ち上がり、ドラムをめったやたら叩きまくる。素晴らしくかっこいい。
 ベースが唸り、ギター・ソロが果てしなく続く。3人とも刺激的だった。
 明確なソロ回しはないが、曲によっては石渡がドラムやベースにソロのスペースを作る。
 外山がリフの合間に手数多く叩くさまも。もっとも彼はステージを通じて奔放に疾走した。きっちりとビート感あるのが不思議。シンバル・ワークが聴きどころ満載だ。
 スティックの腹でライド・シンバルの端をつつく。小さな玉が零れるように、先端でカップの部分を泡立たせる。ひとつひとつの音のボリュームやアクセントを変えることで、ビートに幅を持たせた。
 
 ギターのアドリブは右肩上がりに鋭さを増す。
 最後はアップ・テンポのテーマ。ギター・リフのテンポが上がり、3人がにやりと視線を交わした。ぐいぐい盛り上がり、一気に切り落とされた。
 
 後半セットは30分強。短めな演奏が残念だが、内容はばっちり。
 ベースを軸にドラムが遊び、ギターが突き進む。この編成でも録音をぜひ残して欲しい。

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