LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2006/12/31 新宿 Pit-Inn
出演:ALL NIGHT CONCERT 2006 〜2007
寒い。ピットインへつくと、ちょうど南博GO
THERE!の真っ最中。1曲半ほど聴くことが出来た。水谷浩章がウッドベースにもたれ、南のピアノを聴いている。
立ち見びっしりの盛況で、立ち位置を探すのに一苦労。さらに上から空調の風が吹き降ろし、とても寒い。いまいち集中できなかったのが残念。
とはいえ一曲は丸々聴けた。曲は"Praise
song"かな。
サックスがか細くフラジオを響かせ、メロディをつむぐ。ベースとドラムのからみがたまらない。
シャープなハイハット・ワークがきれい。ピアノは訥々と叩かれる。
さほどアップに押すことも無く、あくまでもロマンティックに幕を下ろした。
EMERGENCY!
(芳垣安洋:ds、大友良英:g、斉藤良一:g、水谷浩章:b)
「司会進行の芳垣安洋です」
なんだか馴染みな挨拶で幕を開ける。後ろの立ち席にはミュージシャンもどっさり。
いきなり"Run
and run"がぶちまけられる。混沌のギターを社長が鋭く突き刺し、大友は超高音を響かせた。曲によっては磁石も。
芳垣がすぱっとシンバルをミュートし、ブレイク。また疾走。4人の勢いがごっつりたくましく響いた。
一曲目からかなり長め。芳垣と水谷は2セット目になるがテンションはまったく下がらない。
社長は目の前のつまみでリバーブをあやつる。さらにエンディングではアンプへギターを押し付け、フィードバックを引きだした。
<セットリスト>
1.ラン・アンド・ラン
2.シング・シング・シング
3.小さな願い〜あふれ出る涙
4.ベター・ギット・ヒット・イン・ユア・ソウル
「ここはジャズの聖地ですから、きれいなメロディの曲を」
と、芳垣が曲紹介。勘違いを大友らが指摘する。
「ほら、昨日今日と大掃除で疲れてるから」
芳垣がごまかし、すかさず大友がつっこむ。
「ピットインの大掃除?」
「・・・何でおれがピットインの掃除しなきゃならんのだ」
仕切りなおしでベニー・グッドマンで有名な"Sing Sing
Sing"を。さほど音量はでかくない。強烈に軋む高音と、うねる低音の対比が最高。
水谷が着実にリフを繰り返し、二本のギターが吼える。
さっそく社長が一本弦を切り、演奏中に交換を。すばやく行ったとたん、別の一本が切れるしまつ。
袋から弦を取り出し、足元へ残りを投げ捨てる社長。メンバーはハイテンションの演奏を止めぬまま、笑いながら見ていた。
立ちっぱなしで聴いてるのしんどかったが、演奏はばっちり。うう、万全の体制で聴きたかった。
あらためてバカラックの"小さな願い"を。
メロディを社長が奏で、大友がリズムのイメージ。ちょっとモタるメロディの入り具合が、フレーズのフェイクとして味わいを出す。水谷は楽しそうに弾いていた。ときおりウッド・ベースをぐいっとと引き寄せつつ。
メドレーでカークの"あふれ出る涙"へ。前半のフレーズを社長、後半を大友の受け持ちと思う。
ソロへ行かず、ごくあっさりと。大友のギターが金切り声で鳴った。
最後は"ベター・ギット・ヒット・イン・ユア・ソウル"。ドラムとベースのからみがますます濃密に。
ボーカル部分のとたんに音が薄くなり、大友以外の3人が、マイクへ向かってがなる。特に社長の声がよく聴こえた。
どこかゆったりした寛ぎを残し、約1時間のステージが終了。大きな声援が飛んだ。
板橋文夫 TRIO+3
(板橋文夫;p、井野信義;b、小山彰太:ds、片山広明:ts、田村夏樹:tp、吉田隆一:bs、太田惠資:vln)
Emergency!の演奏中にぞろぞろと、板橋や片山、太田らが下手の入り口から登場。板橋はいったん楽屋へ入った後、下手奥で演奏を眺めてた。
時間は押しており、始まったのは深夜3時50分くらい。まず板橋が田村へ指示を送る。
無伴奏ソロで田村が短く吹き、アンサンブルへ向かった。
だいぶ板橋オケを聴きそびれており、知らない曲ばかり。さらに眠気で朦朧として、細かい部分はいまいち覚えてない。
1曲目では片山から田村、吉田へぐるりとソロが回る。
次の曲で太田がたっぷりとソロをとった。まずいきなりホーメイ。
「初ホーメイです。今年もよろしく」
直後にとんでもなくロングトーンでのホーメイ。声が途切れない。隠しブレスかな。数分くらいぶっ続け。とんでもない肺活量だ。
「・・・息の長い演奏が、今年も出来ますように」
ニッコリ笑って、太田はバイオリン演奏へ移った。この日はほとんどがエレクトリック・バイオリンを使用。
この曲では壊れたかに見えるスレイベルで、板橋はピアノ横のタンバリンを無造作にバンバンひっぱたきながら、メンバーをあおった。リズムやコードを取るより、溢れるエネルギーを放出するかのごとく。
板橋は初手からすさまじいテンションで鍵盤を叩いた。指の様子が良く見えるセッティングだったが、ほとんどクラスターまみれ。ときおり右手の親指が弾き損ね、鍵盤からはみだすように見えるほど。
さらに親指をぐいっとまげ、指圧のように押しつける。さらに拳固で殴り、体全体でグリサンドを幾度も繰り返した。
元気いいのが片山。田村は飄々として、太田はなんだか疲れ気味に。吉田はベテランぞろいの面子にまったく臆さず、堂々と渡り合う。濃密なアンサンブルだった。
バリトン・サックスを軽々と操ってソロを響かせた。
井野は奥で指とアルコを使い分け、しっかりと支える。ところがいまいちPAで音が聴き取れず。疲れてるのかな、おれ。
全部で6曲くらいか。"ローリング・ストーン!"と絶叫させたり、複雑なリフをホーン隊に任せてピアノを弾いたり。テンションと味わいが濃厚。聴いてる体力の無さが恨めしい。
既に1時間は軽く押した。ついに小山のドラム・ソロ。連打からロールへ。さらにシンバルとフロアタム回しに、スネアの乱れうちを加える。
リズムは小山の乗りに切り替わり、長尺ソロに向かった。
そのまに板橋が片山に譜面で次の指示を行う。
ドラムのブレイクを待って、ホーン隊がしゃっきりとリフへ。片山がソロを取りかけた。
「ちがう!おれのソロだ!」と、板橋が叫んだようだ。
ピアノ・ソロと8バーズ・チェンジなもよう。いきなり怒鳴られた片山は苦笑しながら憮然とした面持ち。
あらためてピアノのソロが一段落し、テナーを吼えさせた。
ハイテンションでピアノが突っ走る。中腰で鍵盤上をめまぐるしく指が、拳骨が暴れた。コード感をわずか残したクラスターのため、がけっぷちのところでグルーヴが残る。
テナーからトランペット、バリサクからバイオリンへ。
次々とソロが回り、合間にピアノの猛然たる打撃。一周だけでなく、2〜3周した。
大団円から挨拶。メンバー紹介をする。
ふたたびピアノに座りなおした板橋が奏でた、美しいメロディ。太田が急いで譜面を繰り、アコースティック・バイオリンに持ちかえる。
曲は、"For
you"。
アンサンブル全体でテーマが幾度も繰り返され、ぐいぐい盛り上がる。アドリブは混沌へ向かった。
太田がバイオリンを弾きながら、強く叫ぶ。何を言っているかは聞き取れなかったが、熱い気持ちが伝わる。
大きい拍手。さすがにアンコールは無し。"For
You"がアンコールみたいなもの。
締めて1時間半。かわらぬ豪快なボリュームのライブだった。体調万全のときに、改めてきちんと味わいたい。
後半数バンドのみの参加だったが、どれも力のこもった演奏で満足。ほんのり風邪気味、へとへとで帰ったが耳はたっぷりと音楽を吸収できた。
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