LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。


2006/12/31 西荻窪 アケタの店

    〜AKETA行く年来る年ソロ〜
出演:明田川荘之ソロ
(明田川荘之:p,オカリーナ)

 23時半を回った頃に、明田川はピアノへ向かった。助走するかのように、"I closed my eyes"がさりげなく弾かれた。ミドルテンポでゆったりと弾む。

<セットリスト>
1.アイ・クローズド・マイ・アイズ
2.りぶるブルーズ
3.アローン・トゥギャザー
4.ロマンテーゼ
5.ブラックホール・ダンシング
6.山崎ブルーズ(incl:亀山ブルーズ、ヘルニアブルーズ)
7.杏林にて
8.アフリカン・ドリーム〜黒いオルフェ
9.越後の乳配り

 (1)、(3)、(8)の後半以外は全てオリジナル曲。
 "I closed my eyes"はテーマは次第にフェイクされ、アドリブへいく。この日は左手のパターンを次々変え、多彩な表情を見せるアレンジ。いきなり10分以上にわたる長尺で、ぐっとのめりこんだ演奏がうれしい。
 
 オカリーナを手に持ち、ひとしきり前奏。スニーカーで踏むリズムが、ぱたぱたと床を静かに叩いた。  

 しっとりとロマンティックなテーマの"りぶる・ブルーズ"へ。手順を踏んでテーマへ行く。
 中盤ではいきなりクラスターが現れた。鍵盤へひじ打ちやかかと落しだけでなく、ヒップ・ドロップも登場したのはここか。もうちょっとあとかな?
 大好きな曲。くっきりとアドリブを展開したあと、後半のテーマがろうろうと奏でられた。

 間を置かず"Alone together"へ。ファンキーな曲だが、この日は黒っぽさを控えめ。テーマの音をいくつか抜いて、虫食いの不安定なアプローチをとった。
 左手のリズムもちょっと変えてた気がする。勿体をつけるように、なかなかテーマへ行かない。イントロがじっくり即興で盛りたて、雪崩れた。
 アドリブではぐっとのった演奏へ。

 さくさくとステージは進む。"ロマンテーゼ"へ。
 演奏中に0時を回ったろうか。曲は短めに終わらせ、時間を確認。
 あらためて"せいくらべ"などの一節を、いくつか短く弾いた。
「あけまして、おめでとうございます」

 軽快にフェイクするアドリブへ。"ブラックホール・ダンシング"。
 ぐいぐい上る旋律がたまらない。このあたりでもクラスターが現れた気がする。
 ほんのり眠くなってきて、体は乗りながらも記憶があいまいです。おっかしいな。

「新年ソロは試行錯誤でして。なんかリクエストあります?」
 満員の観客へ明田川がいきなり尋ねた。すかさず飛んだ"山崎ブルーズ"を採用。
「昨日もやりました。娘のボーカルつきで。こんな歌詞です」
 まずは鼻歌っぽく歌詞を紹介。さらに"亀山ブルーズ"や"ヘルニアブルーズ"もあるという。"何とか"の3部作、と説明した気もするが失念。ごめん。
 
 改めて"山崎ブルーズ"を弾く。何度か聴いたことある曲だった。シモネタを含んだコミカルな歌詞を、きっちりポーズも含めて明田川は歌った。
 さらに"亀山ブルーズ"や"ヘルニアブルーズ"も挿入するサービス振り。

 続く"杏林にて"もリクエスト。04年の新年ソロや、05年10月の深夜ソロで聴いた記憶あり。
「何年もやってないよ・・・できるかな〜」
 ぼやきながら鍵盤へ指が行く。雄大なテーマが打ち鳴らされ、次第に変貌。凝った曲展開がきっちりと提示され、さらにアドリブへ深化した。
 ごくあっさりかと思ったら、ずうっとソロが続く。
 10分以上やってたかも。存分に弾いてくれて、大満足なひとときだった。

「"アフリカン・ドリーム"をやって終わります」
 つぶやいた明田川は、オカリーナを手に取った。複音を響かす素朴な鳴りでひとしきりソロ。さらにオカリーナを持ちかえる。足元に置いた鈴を、強くじゃらじゃらと鳴らした。
 メロディが静々と進む。即興が粘っこく広がった。

 さらに曲が違うメロディに展開。"黒いオルフェ"に。聴いたことはありながら、曲を覚えてなくタイトルが頭に浮かばず。恥ずかしい。
 フェイクしながら情熱的に弾かれた。

「あともう一曲、やりたいな。藤川いる?」
 次の座長に気遣った発言。呼ばれた藤川は「もちろん、どうぞ。どんどんやってちょうだい」と快諾。

「何かリクエストあります?」
 そこでぼくが、前曲を知らずに"黒いオルフェ"をリクエストしてしまう失態。
 すかっと終わる"アケタズ・グロテスク"や、広々とした"チンギスハーンと二頭の駿馬"や"アルプ"を選ぶべきでした。ああ、恥ずかしい。
 結局、別の客のリクエストで"越後の乳配り"が選ばれた。

 イントロはしゃっきりと弾かれ、一瞬別の曲かと。そもそもライブで聴くの久しぶり。
 いったんブレイクし、日本情緒溢れるメロディが展開する。最終曲のためかアドリブが次第にフリーへ寄り、クラスターも炸裂。
 最後は静かにまとめて、幕を下ろした。
 新年ソロでも気負わぬ、自然体で滑らかな充実ライブだった。今年もずっと聴き続けたい。

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