LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/12/18   恵比寿 Brown Sugar

出演:Blackbyrd McKnight
 (Blackbyrd McKnight:g)

 現在のP-Funkでは鍵なギタリスト、ブラックバード・マックナイト。プライベートの来日にあわせ、大阪/東京でクローズドなイベントを開いた。

 ぼくは東京の部に参加。会場はソウル・バーでキャパは40人ほどか。二部構成の後半セットへ、仕事を終わらせて駆け込んだ。店中はぎっしり。
 すでにブラックバードは片隅に座り、にこやかに寛ぐ。彼の奥さん(日本人)もキュートな微笑で、観客と語らっていた。

 21時半の開演時間を15分ほど押し、客電が落ちる。フロア頭上のミラー・ボールが回りだした。マイクへ向かってブラックバードが軽く挨拶。
 横のスイッチを押して、オケを流す。じっとりとファンクが染みた。
 ブラックバードはギターを構える。"Maggot Brain"のテーマを、ディストーションたんまりの音色で奏でた。

 この日は他に"Fly on"、"#3"、"Funkarockaholic"の4曲を演奏すると告知あり。後半2曲はブラックバードがリリースを準備中の新譜"'Bout Funking Time!!!"収録予定という。これらは彼のMy Spaceで聴くことが可能。

 "Maggot Brain"のテーマはアドリブへうつる。
 バックは薄いキーボードと重たいドラムが耳に残った。
 コードと打ち込みのシンプルなバッキングかと予想してたが、ぜんぜん違う。ぐっと凝ってる。テープは全てブラックバードによるDAT録音だそう。

 ドラムは生演奏か。深い響きのタムが鳴り、要所でファンキーなフィルが入る。
 "Maggot Brain"だけで10分くらい演奏してた。かなり手の込んだ展開だった。
 ライブの盛り上がりをそのままパッキングしたかのよう。

 鈍く歪ませた音色で、ブラックバードは弾きまくった。リラックスした様子で。
 アームを軽く動かして、チョーキングも頻繁に使う。フレーズはぐいぐい粘っこさを増した。
 タッピングで早弾き。さらになでるようにフレットの上を指が踊る。
 途中でブライトな音色へ切り替え、ひとしきりプレイ。すぐにディストーションを復活させ、旋律を滴らせた。
 
 いったんブレイク、左手の押さえだけでフレーズをいくつか弾く。アームを押し下げて余韻を残し、すぐに次の曲に移った。
 ライブを通して間を置かず、30分ほどかけて4曲を演奏。

 2曲目からはぐっと洗練されたイメージに。ファンクを基調の上で、よりスマートな雰囲気のサウンドを披露した。
 ギターの音は比較的小さめ。バッキングが店内にどっかんどっかん響いただけに、もっとギターも轟音で聴きたかった。

 ブラックバードは2曲目の後半あたりから、真剣な面持ち。高音部で鋭く指を動かした。
 ほとんどがアドリブ。弦二本をまとめてぐいっと押し上げ、ときおりタッピングも。
 滑らかにフレーズが踊る。うつむき加減でギターと向かい合った。大きな手がネックをわしづかみ、軽々と指が上下する。
 観客はぐっと身を乗り出しブラックバードを見つめ、耳を傾けた。あえてミドル・テンポの曲を選び、じっくりとギターを聴かす演出だった。
 
 曲ごとに音の表情が変わる。トリッキーなフレーズは控え、ストレートなギター・ソロが炸裂する。テーマはごくわずか。即興の連発が嬉しい。
 切れ味鋭いフレーズが溢れる。休符をほとんど置かず、豪腕ギターでぐいぐい押した。

 ブレイクして次の曲に。ノイジーさより、ファンクな旋律でせまった。ハード・ロックの文脈も感じた。
 中盤以降はアームをほとんど使わなかったような。チョーキングを次々捻り、ギターを泣かせた。

 4曲が終わったところで、盛大な拍手。ブラックバードはギターを構えたまま。
 アンコール代わりか、さらにバック・トラックが続いた。今度はヒップホップ調のトラック。ときおりボコーダーのような電子声が、軽やかにラップやカウントを刻む。
 軽やかにギターでクリスマス・ソングを奏でた。

 "ジングル・ベル"など数曲をメドレーで披露。テーマはぐいぐい変奏し、アドリブと混在した。
 さらに重たい打ち込み・ドラムが響き、ベートーベンの"第九"まで。曲の節目で電子声がカウントを明るくとった。

 バック・トラックが唐突に終わる。盛大な拍手の中、ブラックバードが「まだまだ」と示すように、うつむいたままで軽く手を振った。
 ギターのつまみをいくつかひねる。
 最後は無伴奏。ふわりと伸びる音色で、柔らかく即興。やがて、もういちどクリスマス・ソングに変わった。
 
 全部で45分ほどノンストップだった。
 大きな拍手。ブラックバードはにこやかに観客の中を通ってカウンターへ向かう。スタッフと握手しながら、大声で告げた。
「忘れてたよ。今夜のDJにも盛大な拍手を!」

 そのあとはファンとの交流で、写真やサイン攻め。
 持参したCDにサインをもらいながら、もごもごと「来日を楽しみにしてます」と伝えた。
「ぜひ!近いうちにきっとあるさ」
 ブラックバードが応えた。実現するといいな。コンパクトなステージで、目の前にて演奏を聴けた。ファンの熱気で充満した、楽しいイベントだった。

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