LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/12/9  下北沢Modaic

   〜獏企画vol.3 『耳の現状』ーアルバム『現状維持』発売記念ライブー
出演:獏、CAUCUSほか

 
 現在はベースとキーボードのユニット、獏の1stミニアルバム"現状維持"のレコ発イベント。続々観客が押し寄せ、フロアはぎっしり。200人ほど入ったか。
 ユニットNombecotによるケータリング企画もあるユニークなイベント。リゾットやタンドーリ・チキンを販売していた様子。食べてみたかった。冒頭はタイミングを逃し、その後はごった返す観客で近づくことも一苦労。あきらめた。
 "耳の現状"とイベントを呼称し、出演者の耳をポラロイドで撮影。ロビーに展示してたそう。こちらも見そびれたなあ。
 
 モザイクは初めて。B1のステージ・フロアは禁煙、撮影禁止もしっかり謳う。この規模のハコ(公称キャパ200人)では珍しい。フロアはこじんまりした四角形のイメージ。
 二階テラスがPA。天井も高く、ライトも充実で、プランも音楽にあわせ凝っていた。フライングのスピーカーは少々物足りないが、たまたまかな?イベント後半では小気味良く大きな音を響かせた。
 
 フロアへ下りる階段途中に、ライトが2本強く照らされる。両壁に漠の写真が飾ってあった。公園で取ったスナップがいくつか。フロアへ入ると、石灰のような匂いが漂う。ステージから大量に振りまかれた、スモークのせいか。
 
 オープニング・アクトはShota Tamura(blgtz)。初めて聴く。エレキギターの弾き語り。カポをかまし、ショート・ディレイでU2風に音を返す。爪弾く程度だがエフェクタ効果でサイケな効果を呼んだ。
 下手側へマイクを向け、半身で客へ歌う。コミュニケーションを拒否するかのよう。スリムジーンズの足が、えっらく細く見えた。スロコアの分類、かな。
 何曲かでは、弾きながらステージ奥のドラムセットに向かい、手前側にペダルを置いたバスドラを踏む演出が印象に残った。
 
 力いっぱいペダルを一踏み。二踏み。リバーブをごっそりかけた低音がずうんと響く。ビーターが打ったあと、勢い良くゆらゆらゆれた。
 最後もバスドラをゆっくりと、強く踏み続ける。暗転にドラムの音だけが轟いた。
 呟き気味の声質と伴い、内省的な印象を受けた。ステージ手前にバスドラ置いて、もっと観客を意識の演出だと凄みがでるかも。

CAUCUS
(柳川勝哉:vo,g、蛭海和亮:ds、川上宏子:g,cho高橋哲:b)

 めあてなバンドの一つ。セッティングが終わるといったん下がり、60年代サイケ・ポップをBGMにメンバーが現れる。曲はハーパース・ビザール"エニシング・ゴーズ"だったかな?もっとアレンジがロックぽかった。彼らの趣味とハコの演出、どっちだろう。
 いきなり2曲をメドレー。静かなストロークの曲から。フロントに立つ柳川と川上の腕が、動きをそろえるように、ゆったりと弦をダウン・ストロークするさまが絵になった。
 ボーカルは呟き気味。前のほうで聴いてたが、いまひとつ声が聞き取れず。PAバランスで歌をもっと前に出してほしかった。

 ドラムがまっすぐに刻み、ベースがときおりじわっとフレーズを重ねる。バンドの音がかっちり一体化した。メインは柳川。とつとつと弦をはじく川上がギター・ソロを受け持つ場面もあるが、やはりアームを多用する柳川のほうがインパクトあった。
 冒頭から柳川がギター・ソロで飛ばす。曲によってはぐっと前傾、床に触れるほどギターを低く構える。アームを引っつかみ、激しくかきむしった。滑らかに操るメロディは安定感あり。
 ささやくボーカルに、吼え声をまぜる歌いっぷりで柳川はステージをまとめた。

 曲はブロックごとにテンポやリズムを変え、モノトーンの印象ながらもバラエティに富んでいた。3曲目が"Father of the sea"か。前半はMCなしで疾走した。
 激しくアームを動かすためか、頻繁に柳川はチューニングをした。4曲目あたりで川上にMCを任せ、準備する。彼女のしゃべりはほのぼのと。

 アレンジで面白かったのは、6曲目あたりの曲。タイトル不明。いきなり川上が袖のスピーカーへ向かい、ギターを弾かずにぐいぐい揺らす。フィード・バックを引きだし、柳川のリフに飾りをつけていた。
 録音物だとノイズの高まりが雰囲気を出す。だが川上のギターを振る懸命なさまが、ひたむきさも加味されて見えた。
 彼らのステージは40分くらい。最後に"sing"を勢いよく奏で、シンプルに終わった。


(エリーニョ:vo,key、TSUTOMU YAMAGUCHI:b,cho)

 もう一バンドはさみ、獏の登場。21時頃か。どんどん観客がフロアに現れ、スタッフが「あと一歩、詰め合わせてください」と幾度もアナウンスする。
 メンバー自身が楽器をセッティング。途中でエリーニョがエレクトリック・ラテンパーカッション・セットを、えっちら担いで現れた。
 ドラムの横に据え置き、そのまま。サウンドチェックもしない。なんでだろ、と不思議に思ってた。セッティングが終わると引っ込む。

 客電が落ちた。ファンファーレのテープが流される。
 ステージが幾種もの色に染まった。現れたメンバーの姿に、盛大な拍手。一曲目のインストが始まった。
 いったん演奏がブレイク、再び暗転する。

 暗闇の中、エリーニョのささやき。
「・・・こんばんは、獏です」
 炸裂する演奏。まばゆくステージが照らされる。タイトにインストを奏でた。曲名は不明。

<セットリスト>(不完全)
1.(?)(Inst.)
2.胎児の夢
3.とまと
4.グレープフルーツムーン 
5. (?)
6.I want you back
7.心に水を体に光を
8.G(アンコール)

 ドラマーはサポート・メンバー。ひげもじゃに帽子姿。まっすぐにスティックを振り下ろす。ベースの山口のほうが、弾むフレーズで演奏をうねらせた。キーボードは時折グリサンドをまぜる。

 インストからメドレーで"胎児の夢"へ。伸びやかなエリーニョの声が、フロアいっぱいに広がった。泣き出すように顔をしかめつつ、歌はぐんっと響いた。
 白を基調のドレスを、まっしろなスポットライトがこうこうと射した。
 メンバーはふたりともはだし。がっつりまとまったアンサンブルが、ボーカルをしっかりと支える。

 続いて、発売されたミニアルバムより、二曲続けて。"とまと"はエリーニョが友達の結婚式のために作った歌という。先日のソロ・ライブでも聴いた。
 今回はストレートなロックにアレンジされる。つっこむビートにきちんと乗って、間延びせずにメロディが盛り上がった。
 ライティングが細かい。フレーズごとで鮮やかに切り替わった。

 "グレープフルーツムーン"では、山口のコーラスも前面に出した。
 ソロでぐいぐいチョッパーを決めたあと、一人でコーラス部分を歌う。
 マイクをフロアへ向け歌を促すが、最初の一回目は誰も唱和しない。「あれ?」と首を傾げて見せる。

 イントロを3人が弾きながら、語りを入れたのが次の曲。「これを歌うといつも雨が降る」と説明され、歌詞にも雨が含まれたと思う。ミニアルバムにも入ってないようで、曲名不明です。すいません。
 かっちりと入りを決めたかったようす。
 途中で「あ、ずれた」と素早くつぶやきカウントを出した。エリーニョは語りながら「もう一回ね」と指示。ところがイントロが始まってしまった。
「はじまっちゃった〜」と、苦笑しながら彼女は鍵盤を叩いた。

 ここからが怒涛。年末だからゲストを、と山口が紹介して続々現れる。このためのパーカッション・セットか。ギターにパーカッション、トランペットにフルートと、とたんににぎやかな舞台に。
 曲はジャクソン5の"I want you back"。MCで演奏前にタイトルを告げたとき、「I want you,獏」って曲か。凝ってるなー、と思ってしまった。
 
 パーカッション2セットで厚みが出た上、ギターが膨らみを出す。ゴージャスなアンサンブルだった。
 とりわけ華を添えたのが、フルートの女性。体をスマートに動かしながら、見事なのりでコーラスを決めた。アカネイロってバンドのメンバーらしい。
 途中でボーカルもエリーニョと交代で、涼やかに決める。いまいちマイク・バランスが低く、声が聴こえづらかったのが惜しい。

 そして全員で"心に水を体に光を"を力強く演奏。シンプルなアンサンブルだけでなく、編成を増やしたアレンジでも映えそう。
 エンディング前に、エリーニョの前フリでゲストも含めたソロ回しを一人づつ。
 誰か終わるたびに「よかった?よかった?」とフロアへ尋ねる。山口のソロ前には「きちんと決めろよっ」と釘刺す。そんなさまがキュートだった。
 ちなみにベースのソロはばっちり。チョッパーを混ぜ、ぐっとグルーヴさを増す。
 最後のソロはエリーニョ自身。ファンキーに盛り上がった。

 アンコールの拍手で現れたのは、3人のみ。"G"だ。この曲、大好き。
 イントロにサビのメロディを持ってくる。泣き出しそうな表情で、感謝の言葉を歌詞に載せた。
 裏で弾むメロディ、拍の合間を動くベース。ドラムはジャストに叩く。3人のアレンジがいかしてた。

 演奏時間はアンコールを入れても50分ほど。コンパクトなステージで、あっという間だった。3人だけでなく編成を増やした場合でも、きっちり成立する。
 このバンドでのワンマン・ライブを見たくなった。これからの活動が楽しみ。

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