LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/10/29   あきる野 自然人村キャンプ場

出演:渋さ知らズオーケストラ
 (片山広明,佐藤帆,小森慶子,立花秀輝,鬼頭哲,吉田隆一:sax、北陽一郎,辰巳光英:tp、
  
高橋保行:tb、ヒゴヒロシ,オノアキ:b、斉藤良一,大塚寛之:ds、磯部潤,岡村太:ds、関根真理:per、
  室舘彩:vo,fl、佐々木彩子:vo、渡部真一:vo、さやか,ペロ,東洋,しも,ちえ,たかこ:舞踏
  不破大輔:ダンドリスト)

 
 10回目を迎えたあきるの芸術祭。3日間にわたるイベントのトリを渋さ知らズがつとめた。メンバーは地底新聞を元に修正したが、若干違うかも。もう少し多い。20人くらいステージにミュージシャンがいた。
 2ドラム、2ベース編成。さらに今日はバリサクが3人もいるユニークな編成だった。
 今回はテント仕立て。思ったよりこじんまりだが、100人くらいは軽く入れる大きさ。 

 巨大な竹にモビールをぶら下げる、オノアキによるオブジェが、演奏前に観客の手助けで搬入される。後ろから見たら天使を模したかのよう。さしわたし10メートルほど。大騒ぎしながらスタッフが吊りさげ、緞帳とした。
 ほかにもステージ周辺に極太のゴム製ポールが数本立つ。1本は巨大すぎて売店のひさしに引っかかった。設置をサポートしてた室舘彩や、通りがかった小森慶子がそのさまを見て微笑む。

 開演時間が近づき、緞帳の奥でミュージシャンがスタンバイ。渡部真一や東洋組あらためトンデ空静、さやかやペロもステージへ姿を見せた。サウンド・チェックで"行方知れズ"が豪快に演奏され、待ちきれぬ観客が歓声を上げる。
 モニターがうまくいかないのか、細かくセッティング。10分ほど押して、おもむろに演奏が始まった。
 ステージ後方から明かりが強く照らされ、ゆっくりと緞帳が持ち上がる。観客が一気に前へ押し寄せた。

<セットリスト>
1.Spadce is the place
2.股旅
3.諸行でムーチョ
4.ライオン〜fishermans band〜ライオン
5.ひこーき
6.ナーダム
7.本多工務店のテーマ
8.仙頭

 ほぼ全て、メドレー形式で演奏。
 
 室舘や渡部らがリフレインを歌い、盛り上がってゆく。しょっぱなのソロは、片山広明。豪快にブロウするが、いまいち聴こえづらい・・・。PAはいろいろ工夫してたが、全体的には低音もっこり、ソロがかろうじて聴き取れる程度。バック・リフは音塊と化した。
 上手側ではスクリーンに映像。さらに客席後ろのテント高方では細線密のペインティングも。
 ぐぐっと持ち上がったオブジェは虫だった。蛾か蝉だろうか。演奏にあわせ、ゆっくりと羽ばたく。

 アドリブは辰巳光英へ。熱っぽく長いソロだ。
 不破は指をふって場面を切り替えた。ふかすタバコがスモークのように漂った。
 抜き出しを行うが、どちらかといえばソロを長くひっぱる。PAを意識してか、カウンターでアドリブをぶつける混沌さは控えめに聴こえた。実際にはやってたのかもしれないが、音が細かく聞き取れず、いまいち自信ない。
 バリサクのアドリブを抽出する場面もここだったかな。
 ソロのマイクが埋もれてしまい、いらだたしげに不破がPAへ手を振る。

 冒頭から東洋たちやさやペロが踊った。しばらくすると東洋らは上手のステージ前へ。白塗りの体に、行く筋かの線が描かれた。
 じっくりと"Spadce is the place"。5拍子の合図を不破が送り、"股旅"に。
 ここでは北らがソロをとった。ポケット・トランペットであおる北から、コルトレーンのような猛烈なフレーズを佐藤帆(?)が吹き鳴らす。

 演奏中に着膨れた私服の女性がステージをすたすたと横切り、上手の大塚寛之の横に立った。
 そっと東洋たちが袖へ消える。中央のせり出しでは、しもが大きいアクションで体をくねらせた。
 ギター・ソロは大塚から。ディレイで飛ばすようなサイケなアドリブの横で、渡部が大きなアクションのエアギターを決める。

 中盤では小森が静かにアドリブを決めた。ほぼ無伴奏、バリサクとパーカッションあたりだけをバックに、メロディアスに組み立てる。
 大騒ぎなアンサンブルときれいに場面を買え、ロマンティックな世界を披露した。
 ほかにも何人かがソロを取る。"股旅"だけで、30分近くやってたと思う。
 
 すたすたとマイクを持った、先ほどの女性がステージへ。佐々木彩子だ。室舘もハンドマイクに。佐々木のカウントで、"諸行でムーチョ"に曲が切り替わった。
 歌詞にあわせ佐々木がマフラーを、セーターを脱ぎ捨てる。あわせて室舘も脱ぎだした。
 ところがマイクが腕に引っかかり、悪戦苦闘する一幕も。ソロは片山だったかな。野太く疾走した。
 ボーカルへ戻るたびに、フロントの二人は脱いでいく。とうとう薄手の服だけに。服がうまく脱げない佐々木が、マイクをがっぷり口へくわえて腕を抜くのに大笑いした。
 佐々木はこの一曲だけでステージを去る。

 いったんブレイク、じわじわと"ライオン"のリフが。混沌としたイントロからテーマへつながった。
 幾人かのソロから、ついに渡部にマイクがまわった。すたすたと中央に立ち、観客をあおる。
 "Fishermans Band"を熱唱。観客が腕を突き上げ、ステージ前は大騒ぎになった。
 上手のスクリーンには欧州あたりの風景に渡部がいる映像や、イラスト仕立ての渡部がひょこひょこと舞った。

 汗みどろでねじり鉢巻はふっとばし、渡部は歌いまくる。すぱっと腕一本でバンドをとめるシーンがかっこよかった。
 不破は腰掛け、タバコをふかしながら渡部を見つめつつ、指揮をする。
 ひとしきり盛り上がって、再び"ライオン"へ。ここあたりから、渡部が中央で踊りまくり、ステージを盛り立てた。
 アドリブがサックスへ変わると、そちらの前で腰をかがめてがっしがっし踊ってあおる。

 高橋保行のアドリブもここか。無伴奏でソロを取る彼を、片山も立ち上がって合いの手。やがてビッグバンド編成を促し、"枯葉"などに変貌した。
 エンディングでは不破が両手を、広く横へ伸ばす。
 不破のキューで、"ひこーき"に。さやぺろが上手のスクリーン前へ移動し、背を向けて立ち尽くした。

 関根が伸びやかに歌声を拡げる。室舘が切なく透明な声で、カウンターのボーカルを響かせる。何度聴いても、この二人のからみが美しく心地よい。
 アドリブは立花秀輝。金ぴかのでっかい王冠を頭に載せ、すっと立ち上がる。
 ここではフリーキーさをぐっと押さえ、とびきり歌心あるアドリブを聴かせた。

 テント内、頭上にのった虫のオブジェがゆっくりと羽ばたく。
 スクリーンでも即興で鳩が描かれた。
 しもやちえ、たかこらがテント内のキャットウォークで体をくねらせた。

 朗々と"ナーダム"のイントロ。前方の観客が歓声と腕を突き上げた。
 スピーディなテーマに切り替わり、ごしゃごしゃに観客が踊りだす。
 せり出しでは渡部があおり、東洋が目をひんむいて体を揺らした。

 社長のギターソロから、大塚へ。いつのまにか社長は弦を切ってるが、かまわずに引き続ける。歯で弦を弾く大塚を見た不破が、社長にもしぐさをまねろとキューを送る。
 にやっと笑った社長が、ギターを持ち上げ弦に噛み付いた。
 いったんテンポが落ちた気も。
 小森がソプラノ・サックスで軽やかなメロディ。今夜はバックを静かにした上で、たっぷりと彼女のアドリブを展開した。
 
 テーマへ戻ると激しさが炸裂。
 前方ではさやぺろや渡部に加え、ウェディングドレス姿の男性が両腕を突き上げ観客をあおった。
 すでに時間は終演予定の20時頃。まだまだライブは終わらない。

 パーカッションの音がイントロで響く。観客が大歓声を上げた。
 渡部があおる。メンバーが立ち上がった。
 ついに、クライマックス。朗々と"本多工務店"を奏でた。
 頭上のオブジェが激しく羽ばたく。
 しもやちえ、たかこらがキャット・ウォークを駆け、紙ふぶきをばら撒いた。

 投げ銭の籠をもって練り歩きのなか、リフレインが続く。立花は頭を籠に見立て、ネックを加えて客席を歩き回った。
 かなりたっぷりと"本多"を聴けた。渡部が歌声を促し、せり出しで大暴れ。今夜は渡部がとにかく激しかった。

 不破の指が動き、"仙頭"へ。観客も飛び跳ねた。
 アンコールは当然ない。"ステキチ"を吹きながら、メンバーが去ろうとする。不破が観客へ手を振り、中央を開けさせた。ホーン隊がそこから降りる。投げ銭の籠とともに。
 しばらく入り口前で吹きながら練り歩きが続く終幕だった。

 ステージでは大塚がディストーションを響かせる。執拗にギターをうならせ、ついにエフェクターのつまみをいじってノイズを轟かせた。
 ステージ中にくっきり止めて投げ銭の時間を作らなかったせいか、なんだか幕切れはたっぷり余韻を含ませた。

 さいわいにして今夜は晴れたため、足元もさほどぬかるまず。休憩無しで2時間半にもわたる豪腕なライブだった。

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