LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/10/14   西荻窪 w.jaz

出演:エリーニョ
 (エリーニョ:vo,key、guest;?:ジャンベ)

 フォークっぽい弾き語りを集めたイベントへ、獏のエリーニョが参加した。このイベントはそもそも、バンドのボーカルのみを呼んで弾き語りってコンセプトかも。
 エリーニョは2番手で、下手へエレピをセッティング。
 セットチェンジのBGMはTOTOの"ロザーナ"だった。懐かしい。スティーリー・ダンかフェイゲンとおぼしき曲に変わった頃、セッティングが終わる。

 BGMが消えた瞬間、エリーニョはアカペラで声を絞らせた。
 ゆったりと。しかしどこか性急に。
 エレピへ指を置く。ペダルを素足で踏みながら。ほんのり声が震えた。

 1曲目は違うバンドのカバーらしい。MCでこまめに曲紹介をしたがメモを取らず。詳細は割愛させてください。
 次が、"胎児の夢"。獏のレパートリーだが、弾き語りでしっとり演奏したと思う。
 獏の曲だけでなく、ソロでの持ち曲もあるみたい。
 歌詞カードが入ったクリアファイルをぱらぱらぱらめくって曲を選んだ。

 背筋をわずか丸め、鍵盤を着実に抑える。硬い雰囲気がわずか漂ってたのは、やりづらかったのかな。
 「緊張する〜」と、ぼやきつつ前半ではMCしてた。
 
 3曲目もオリジナルらしい。右手で軽快に弾きつつ、時折左手が低音部で鈍く和音を叩く。
 ずうん、と響く和音が心地良い。聴きながらつい、その低い和音を楽しみにしちゃう。

 「昨日も飲んでたんですが。泥酔したようで。起きると指や足に落書きされてました。・・・なんか、したんでしょうねぇ」
 苦笑するエリーニョ。"次は酔っ払ったときに作った曲"と紹介した。"酔い子"ってタイトルかな?

 ラグタイム調のアレンジで、ほんのりブルージーなやけっぱちの節回し。
 エレピのファンキーな感じがはまってた。ボーカルへのオブリでぐいっとフレーズが食い込む。

 このあとゲストでジャンベ奏者を呼び込んだ。名前を紹介してたが、覚えられませんでした。ごめん。バンドは別だが、何度か競演したようす。
 シンプルなビートで数曲、ジャンベがバッキングした。
 彼が入ったとたん、エリーニョが目に見えてリラックス。のびのびと歌に張りが出る。
 
 友達の結婚式へ向けて作った曲"ミドリ"(だったかな?)はイントロの和音が、いかにもな開放する響きで面白かった。
 ほんのり陰のある音世界が持ち味と思っていたが、ここでは明るく歌い上げた。
 コード進行がきれいだなあと思ったのも、この曲だったろうか。

 バンドのメンバーに"「詩が可愛すぎる」と却下を食らった"歌も、ジャンベと競演したはず。
 次第にエリーニョはのってきた。マイクから口を離し、伸び上がって強く歌った。
 弾いてるうちに、ペダルがだんだん横を向いてくる。
 かまわずに素足の親指で、ぎゅっと踏みつけた。ぎしっと音が響くほど。
 最後もペダルを一踏み。力強くペダルが軋んだ。

 ジャンベ奏者との最後が、獏の曲"G"。CDで聴いて、とても好きな曲。
 イントロで少々ボーカルを載せ、アレンジをちょっと変えていた。
 裏拍でキーボードのはずみが、ドライブ感を強調。ジャンベの溜めたビートにあわせ、エレピのバックビートも目立たせない。さらりとコードを意識するのみ。

 エンディングはスキャットからピアノのアドリブまで。もっとがんがん盛り上がってほしかった。
 ボーカルを決め、軽やかに音が駆け上がる。そのままあっさりとコーダへ行っちゃって残念。

 再びエレピの弾き語りへ戻って数曲。獏のときより、内省さが強調される。ピアノだけでのグルーヴかと予想してたが、バンドとソロの違いを踏まえてた。
 すっかり寛いだ装いになり、のびのびと歌もピアノも鳴った。
 
 さらに一曲、カバーを弾く。日本語詩だったが、これもバンド友達の曲か。
 メロディラインは彼女のオリジナルと明らかに異なる。しかし独特な節回しで作品世界を、自分の領域へぐいっと引き寄せられるのがエリーニョの強みだろう。

 最後は観客へ何が聴きたいか、ふとたずねた。"砂の王国"のリクエストがすぐに飛ぶ。
「(終わり方が)暗くならないかな〜」
 つぶやきながら、滑らかなイントロへ。これも獏の曲。鍵盤を滑らかに重ね、朗々と声が伸びた。
 
 約10曲ほどで、40分くらいのステージ。存在感をきっちり持ち、ステージをたちまち自分の世界に塗り替えた。
 あっというまに終わってしまった感あり。グランドピアノでの演奏でも、彼女のライブを聞いてみたい。もっと表現が複雑に鳴りそう。
 普段、「バンドのライブでも、30分程度の持ち時間が多い」とMCだったが、ワンマンでじっくり聴いてみたいミュージシャンだ。

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