LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/10/8   下北沢 Lady Jane

出演:不破+立花
 (不破大輔:b、立花秀輝:as ゲスト:小山なおこ:p,vo、高橋保行:tb)

 レディー・ジェーンの前で、不破大輔が譜面を片手に入り口前へ座ってた。今日のライブはインプロじゃないのかな。なんで譜面見てるんだろ。
 店に入ると、アップライト・ピアノもセッティングあり。出掛けに地底新聞を見ず知らなかったが、今日はゲストが二人入るそう。
 不破と立花は、昼間にドルフィーで名古屋勢と渋さがあった。ダブルヘッダーのライブ。
「横浜でやったあと、そのまま二人連れてきました」と不破がMCでゲストを紹介していた。

 前半は立花と不破のデュオ。まずインプロから始まる。
 不破が無造作にビートを提示するが、立花は簡単に寄り添わない。サックスを軋ませ、超高音をいくつか。
 ついでまったく違う譜割で、ポリリズミックにぶつかった。
 立花は体調悪そう。鼻をすすりながら、カウンターへ寄りかかるように吹いた。

 混沌としたインプロがしばし。フリーク・トーンは控え、次第に立花はメロディへ軸足置いたアドリブを展開した。10分ほど二人のアンサンブル。
 やがて不破のソロ。額に汗をにじませ、頭へ掲げるようにウッドベースのネックを構え、しゃにむに弦をはじく。
 得意の高速フレーズもうなりながら飛び出した。ふっと不破がピアノの上の時計へ視線を投げた。

 このベース・ソロのあと、二人の息が合う。ベース・ソロは幾度も挟まれ、そのたびに曲調が変わる。もしかしたらほとんどが、曲なのかもしれない。
 ある部分では不破が一定のフレーズでワン・コードをずっと弾き続ける。
 立花はくっきりと音のエッジを立ててソロを吹きまくった。決して熱くならず、どこかクールさを残して。

 ベース・ソロのたびに不破は汗を滴らせる。どんどん熱気が増した。時には"行方知れズ"の香り漂う場面も。明確なテーマへ行かず、違うかも。
 ふっとコードが変わり、"レイディズ・ブルーズ"へ。最初は立花のアドリブから。
 曲の断片をさりげなく提示しつつも、なかなかテーマへ行かない。軽やかに音符を操った。
 最後の最後でフェイクしまくりのテーマへ。やけに明るい"レイディズ・ブルーズ"。

 結局ノンストップで50分間、ふたりは演奏し続けた。ときおり立花は休憩できたが、不破はまったく休まずに弦を響かせる。どんどんサウンドはグルーヴィになった。

 いつのまにか二人のフレーズが5拍子に。テンションがぐいっと高まり、アルト・サックスのソロが盛り上がったところで、立花と不破が視線を合わす。
 いっきに"股旅"のテーマへ。
 不破のベースはオーケストラ版の畳み込むアレンジだが、ふっと空間を活かすフレーズ仕立てだった。
 ここで1stセットが終了。息を切らせながら、不破が休憩を告げた。

「まず、インプロからね」
 小山と高橋は2ndステージ最初からステージへ立つ。後半は二人のゲストではなく、4人のアンサンブルとしてライブが行われた。
 
 不破がリズムを示し、小山はそっと鍵盤を抑える。ハミングのようなボイスをかぶせた。
 最初にソロをとったのは高橋。ゴムの吸盤をミュート風にトロンボーンのベルへあててははずし、ひねった音色を出す。たっぷりとソロのあと、立花へソロが受け継がれた。

 冒頭から30分近いインプロ。4人の暖かなアンサンブルが心地よい。
 ピアノの長く伸ばす音が柔らかく響き、ボーカルと溶ける。
 高橋は抑え気味の音量で、穏やかなアドリブを吹く。
 立花もフリーキーさを控え、4人揃って寛げるふくよかな音世界を組上げた。レギュラー化してもいいくらい、サウンドがハマってた。

 不破はピアノとアルトサックス、ベースとトロンボーン、とさりげなくメンバーへキューを飛ばす。全員が一気に弾くだけでなく、抜きのアレンジでメリハリをつけた。
 立花のバックでは小山が静かに鍵盤を抑える。叩かず押し付けるように。不破は目を閉じて二人の演奏に聴き入った。
 
 最後は不破のベース・ソロ。一音弾いて、間をおいて一音。
 それを続けながら、譜面を開こうとする。メドレーにあくまでこだわり、譜面を開くのに四苦八苦。
 むりやり弾き続ける姿が面白くて、観客も大喜びだった。

 小山のオリジナル曲へ。曲名を告げず、高橋が伸び上がって譜面を確認した。

 ちょっぴりひねったポップスで、優しく華やかなムード。小山はシンプルな鍵盤さばきで、キュートに喉を響かせる。
 立花や高橋の歌心溢れるアドリブもたっぷり聴けた。

「時間なくなってしまいました・・・あと一曲やります」
 不破が時計を見て、残念そうに一言。全部で3曲ほど準備してたようす。即興が盛り上がって、時間足りなくなるあたりが興味深い。

 アップテンポの軽快な曲。ピアノを弾きながら、コケティッシュに小山が歌った。
 不破のアレンジがすかさず入り、ソロや楽器編成のサインが飛ぶ。小山を活かしつつ、トロンボーンとピアノのデュオに。
 高橋は吸盤ミュートをたくみに織り込み、アドリブを優雅にとった。
 不破は立花に目配せ。高橋のソロからベースとサックスのからみへ雪崩れる。

 後半は約50分程度。コーダを決め、メンバー紹介であっさりと終わった。アンコールは残念ながら無し。
 立花と不破の硬派な斬り合いを想定してたら、別次元で充実したライブだった。
 このカルテットは、ゆったりとフルセットで聴きたい。一回限りのセッションでなく。

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