LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/10/8   吉祥寺 Planet K

出演:CAUCUS/獏/LiN CLOVER

 36もの若手バンドを集めた、3枚組コンピ"Wild Gun Crazy compilation vol.2"レコ発のイベントが3日間連続で行われた。この日は二日目。入場者にはこのコンピそのものをプレゼントする、太っ腹な企画だ。一バンドあたり、20分ほどの時間が割り当てられたようす。
 目当てはCAUCUS。シミーのクレイマーが、おそらく初めて日本人をプロデュースしたバンド。いったいどんな音楽か、ライブを体験したかった。
 なお、バンドメンバーのクレジットはすべてコンピから引用しています。

CAUCUS
(柳川勝哉:vo,g、川上宏子:vo,g、高橋哲:b、蛭海和亮)

 タイムテーブルでは16時50分とあった。ほぼ時間通りに行くと、ちょうどセッティングしているところ。10分押しくらい。さくさくと進行していた。
 中央に柳川が立ち、エレキギターをゆっくりと弾く。ライブが始まったとたん、どんよりと漂う、重たいサイケ・ロックが忍び寄った。なるほど、クレイマーが好みそう。

 意図かは不明だが、かなり出音が混沌としていた。ドラムがずっしりとリバーブを使って硬く響かせた。
 ちょっと音が割れ気味。きっちりとしたPAで聴きたいな。前のほうで聞いてたせいかもしれないが。

 全編でほぼ柳川のギターとボーカルが前面に出され、川上の音や声が聴こえづらい。彼女がソロをとっても、ディストーション満載の柳川のストロークが、どかんとスピーカーから溢れてた。
 もっとも彼女、あともう50センチステージ中央側へ移動してほしかった。上手奥でちょこんと隅っこに立ってるような印象だったもので。

 歌詞は良く聞き取れない。ゆったりした譜割で喉を膨らます歌声のみが聞こえる。
 ドラムがどっしりと刻み、ベースが時折オブリを入れた。
 スローなテンポは、柳川のギター・ソロでとたんに弾ける。おおきく屈み、豪快にギターをかきむしる。ディストーション満載の歪んだ音色を存分にばら撒いて。
 曲によってはアームを左手で握りながらソロを展開、さらに混沌さを増した。

 1曲目が終わるなり、ベースの返しを依頼。観客へ拍手の隙を与えず、次の曲へ進んだ。
 今度もゆっくりなテンポ。川上のギターは柳川と同じタイミングでストロークする。
 彼女が同じコードを弾き続け、柳川がさまざまにコードを展開するように見えたのは、この曲だったか。川上のソロはブライトな音色で訥々とフレーズを刻む。

 高橋がさりげなく挿入するオブリのベースがきれいだった。
 ステージが真っ赤に染まり、スモークでいっぱいになる。Caucusの闇が強調された。

 「MCをしま〜す」
 やたら明るく、メンバーに対し他人行儀な川上のMCが愉快だった。とたんに雰囲気が変わる。
 ここから2曲を演奏。一転してシンプルなロックンロールを、アップテンポで疾走した。
 まずコンピへ収録された"sing"と、もう一曲。

 前半とはうってかわったムードでアグレッシブに押す。しかしギター・ソロになった瞬間、へヴィな音塊がばら撒かれた。うっすらフィードバックもまとって、ひずんだギター・ノイズが豪快に吼える。

 最後はいきなりカットアウト。「つぎは獏です」とつげ、あっさりとステージを去った。


(エリーニョ:vo,key、ヤマグリ:b、カリー:ds)

 次に行きたいライブまで時間あったし、ちょっと見て行こうと居座る。今度はピアノとベース/ギターの3ピース・バンド。
 しょっぱなはインストでアップテンポに駆けた。真っ赤なワンピースを着たメガネの女性、エリーニョがのめるような動きで鍵盤を押す。曲は"Oui"かな?
 ドラムのはねる感じが心地よい。軽快なプログレかと予想した。
 ところが次の曲でエリーニョが歌いだし、一気に引き込まれた。

 R&Bの香りが漂う鼻にかかった歌い方で、伸びやかに歌声が小節をまたぐ。ドラムもしゃっきりとグルーヴし、ベースは合間を縫って素早いフレーズを巻き込む。
 アドリブではベースが早弾きでタイトなフレーズをまくし立てた。
 演奏の弾むムードも心地よいが、なによりもエリーニョの歌声。いいなあ。好み。ライブ終わったら、即座にデモCDを買った。

 キーボードの演奏はシンプルだが、ツボを抑えてる。
 コンピに収録曲を含め、4曲ほど。最後の曲ではエリーニョがドラムへソロを促し、次の瞬間バスドラの上へ素足ですっと立ち上がる。
 飛び降りてドラムのソロはベースとのからみに。
 短い演奏だったが、とても充実していた。思わぬ発見できたバンド。

LiN CLOVER
 (Yuri:vo,Nao:g,Ren:b,Yukinori Hijitaka:ds)

 中央に小柄な女性が立った。重たいビートとゆがんだギターが刻まれる。
 ボーカルの歌声に惹かれ、そのまま聴き続けた。

 まだ20代前半と思うが、不思議に老成した雰囲気漂う年齢不詳な面持ち。
 堂々たる貫禄で、伸びやかなボーカルをふりまいた。前の獏とは違う路線での、歌のうまさがある。特にファルセットのきれいさに舌を巻いた。

 へヴィなロックの文脈ながら、ブレイクや無音をうまく生かすアレンジ。さらに豪腕一辺倒でなく、静かなアルペジオも効果的に仕込んだ。
 彼女の音楽性は重たいロックだと思うが、静かなバラードも聴いてみたい。地声とファルセットを同列に操り、透明な声質がフロアへきれいに響く。
 
 やはり4曲ほどを演奏。ときおりステージ前の柵へ背筋を伸ばして立つ。ハンドマイクをうまく操る、ステージ進行も堂に入ったもの。これから年齢を重ねた上でのボーカルも聴いてみたい。ずっと活動を続けてほしい歌手だ。
 
 終盤へ向かうにつれテンションがあがり、最後は重たいエイト・ビートが轟然と鳴る中、彼女はマイクスタンドを引っつかみ、ぐしゃぐしゃにノリながら歌った。
 短い時間をたっぷり使い、さまざまな表情の声を聴かせた。

 若手バンドを聞く機会は、この年になるとあんまりない。客層見ても、思いっきり浮いた。
 実際のところ、何人がずっと音楽活動を続けるのかはわからない。けれどもチャンスがある限り、音楽をやり続けてほしい。
 年寄りくさい感想だけど、たった3バンドを見ただけで、才能の原石がごろごろ転がってるとわかった。音楽を続け、才能を磨いて欲しいな。素敵な音楽をいっぱい作って欲しい。

さて、次のライブへ行く時間だ。

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