LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/8/26   入谷 なってるハウス

出演:川下+青木+不破+岩本
 (川下直広:ts、青木一郎:tp,per、不破大輔:b、岩本次郎:ds)

 なってるのHPに記載された紹介文は「川下さん、不破さんの原点ともいえる昔のお仲間との再会セッション。熱い80年代が復活?!」。
 本で読んだことがある、過去に小岩おーむあたりで繰り広げられたという、超フリージャズかと想像して聴きに行った。

 実際はストレートなバップ・ジャズ。寛いだ雰囲気だった。この顔ぶれではたまにライブをやるのかな。少なくとも今年の6月、所沢スワンで演奏したようだ(ライブは未聴)。
 ネットでざっと調べると、青木一郎は渋さの参加メンバーでも名前を見つけた。04年4月の中編成渋さにて。ただし楽器が(ts)とある。別人かな?

 おもむろにメンバーがステージへ上がった。不破はウッドベースを構える。
 リーダーは川下だろうか。まずはオリジナルを演奏始めた。たしか"ナポリタン"だったと思う。
 誰も譜面を使わない。青木は戸惑う様子もなく、自然体でオリジナル曲を吹いていた。

<セットリスト>(不完全)(*)
1.ナポリタン(?)
2."13日の金曜日"(?)
3.レイディズ・ブルーズ
(休憩)
4.ヨーロピアンズ
5."Vienna"(Clifford Jordan)
6."You've Got To Have Freedom"(Pharoah Sanders)

(*)Thanks to 3100男さま

 思いっきり不完全ですが、気は心ということで。

 青木は足元に幾つかパーカッションを準備。テーマで軽く叩いたが、それらを前面には出さないようだ。

 テーマを吹いた後、すっと青木は袖へ下がる。 
 しょっぱなから川下の長いソロが入った。身体を揺らしながら、テナー・サックスを軋ませた。循環呼吸で延々とメロディを溢れさす。
 曲によって明確な音使いと、ひしゃげた音色を使い分けていたようだ。

 川下トリオやフェダインと違って、どこか余裕あるふう。出てくる音は熱いが、わずかに寛いだサウンドだった。
 不破はあっというまに額に汗を滴らせ、猛烈なランニング・ベースを聴かせた。

 10分くらい、川下は吹きまくってソロを青木へ譲った。
 青木は顎を胸へつけそうな俯き加減に、小刻みに切ったフレーズを連ねる。果てしなく吹き続く川下と対照的なスタイルだった。

 ステージを通して、リズムの芯を支えたのはウッド・ベースだった。
 無闇に音を上下に飛ばさず、ひたむきにリフを叩き込む。ドラムが奔放に動いただけに、しっかりとグルーヴをわしづかみにするベースが頼もしい。
 
 岩本はスティックをずいぶん短く持つ。ライド・シンバルをブラシで叩き、途中からスティックへ持ち変えた。ビートは刻むが、リズムを支えるよりもパーカッシブなアプローチ。
 しょっちゅうタムをフィル風に叩く。とはいえ派手には鳴らない。
 ベースが拍でぐいぐい畳み込む。ドラムは時折ずらしながら、つっつくような軽いリズムで応えた。

 ドラムの個性が良く出たのは、1曲目でのドラム・ソロ。ロールで連打でもない。リフで華やかに盛り立てるのとも違う。
 ぐっと腰をすえ、隙間の多い叩きを提示する。ソロとしては相当に異質だ。けれどもテーマのメロディを頭に浮かべながら聴くと、きれいにメロディがはまる。あくまで旋律のカウンターとして成立させるアドリブだった。
 無伴奏でこのソロをあっけらかんと提示するところがすごい。

 最後は川下のアドリブからテーマへ。タイミングを計り、不破が楽器を構えて川下を見つめる。
 着地点と同時に強く一音、不破は弦をはじいた。

 2曲目は川下の提案で始まった。オリジナルなのかは不明。ビバップ風の短いテーマで、すぐにアドリブへ雪崩れた。
 青木のソロも次第に長くなってくる。じわっとアドリブを搾り出す。おとなしげな印象を受けた。
 ここでは不破のベース・ソロも登場。ランニングから付点音符を増やした柔軟なフレーズで、底からあおった。

 それぞれの曲は20分程度。川下のロング・ソロをたっぷりと味わえた。
 1stセット、最後は"レイディズ・ブルーズ"。ベースとテナー、どっちが先か軽く相談。
 テナーが無伴奏で短いイントロを奏で、すぐにテーマへ行った。今夜のベスト・テイクはこれ。4人の音ががっぷりはまり、ソロも良い。演奏へ耳のピントが合った気分。

 テンポは速め。前へ前へとブルージーに進んだ。
 ロマンティックなテナーのソロが終ると、ピアノの前へ腰掛けた青木がすっとステージへ上る。
 不破のソロはメロディじっくり聴かせ、終盤では得意の高速フレーズも少々飛び出した。
 岩本はかかとをきゅっとひねって、ハイハットを踏む。横に吊るしたスレイ・ベルを静かに振った。

 テーマでは青木がミュートをはめる。管二人はノーマイクで演奏してたが、さすがにこのアンサンブルではミュートで音が埋もれてしまう。
 ちょっと吹いただけで、青木はミュートを床へ置いていた。吹いていると、次第にベルが上へ上がる。ベルの先で水滴が、ふらり揺れた。
 
 後半セットを始める前、川下がメンバーにこのバンドのレパートリーを確認。
 「『ヨーロピアンズ』をやろう」と川下が告げた。
 そのままテナーを吹き出す。青木はここでもミュートを使おうと、ベルに息を吹きかけてねじ込む。
 やはりボリュームが足りないためか、早々に外してしまったが・・・。

 後半戦でも川下のロング・ソロが暖かく響く。矢継ぎ早にフレーズが溢れた。
 ソロが終ると、スッとステージ横に座って聴きに入る。何曲かでは、トランペットのアドリブにあわせ、オブリのロングトーンも挿入してた。

 後半2曲目はオリジナルかな?短いテーマで、すぐにアドリブへ行ってしまう。3曲目は聴き覚えあり。ジャズの有名曲だと思うが、曲名が思い出せない・・・。

 後半3曲目も熱がこもる。不破のソロでは、しょっぱなから高速フレーズで畳み掛けた。猛烈に弦が指先で鋭くはじかれ、暴れた。

 コーダへ。川下がメンバーを紹介し、さらりとステージは終った。
 肩の力が抜けた、温かい演奏。アドリブはきっちりと聴かせる。
 じわっとジャズが滲んだひとときだった。

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