LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/8/13  新宿  Pit-Inn

出演:外山+大儀見
  (外山明:ds,per、大儀見元:per)

 しばらくぶりに聴く新ピ昼の部、外山明と大儀見元のデュオ。お盆なせいか観客がどっさり。椅子席はほぼ埋まった。
 いつものように中央向かい合わせに、楽器がセッティングされた。

 大儀見は各種コンガを中心に、椅子でカホンを置く。さらにウードゥー(で正しい?アフリカ風の壷の楽器)を横にセッティング、マイクをかました。
 外山は深胴のバスドラ中心に、シンプルなドラムセット。横のジャンベに布をかぶせ、ンビーラを準備した。コンタクトマイクをつける。
 さらに二人の間へ外山のバラフォンが置かれた。

 軽くカホンを叩く大儀見。ランダムにコンガも指先で軽快に叩く。ドラムセットに座った外山は、規則正しいリフを執拗に繰り返した。
 タムとリムショットを組みあわせ、クリックのようにリフを続ける外山。微妙にアクセントをずらしタイミングを変えても、鬼のように正確なビートだった。

 ライトに照らされた影の闇から、しなやかに腕を動かす。叩きながら大儀見は外山を見つめた。
 リフ周辺を取り囲むように手数を次第に増やしながら、フリーなパーカッションで応酬した。
 ビートが複雑になる。酩酊するようなリズムの会話。テンポが速まり、高まった。

 ふっと途切れ、外山はンビーラを腿に乗せた。軽く両指ではじく。ここでもパターンが産まれる。
 早いフレーズを正確に繰り返し。大儀見は横に置いたウードゥを手のひらで叩いた。
 コンタクトマイクをつけたンビーラは、腿の上でこするとスクラッチのようなノイズが乗る。
 故意に外山はこするノイズを取り混ぜて、小刻みに軽やかなフレーズを響かせた。
 足はバスドラを踏む。低音がせわしなく轟いた。

 いっぽう大儀見はウードゥを執拗に叩く。開口部を手のひらで押さえ低音を導き、表面を軽く指先ではじく。
 さらに竹ヒゴをまとめたようなスティックを片手に持ち、硬質に叩き始めた。
 左手は手のひらのまま、右手に竹スティック。打音がしっかりと鳴り、軽快なグルーヴに変わった。

 ンビーラを置いた外山もドラムセットへ座る。ジャストなビートで自在にアクセントをずらして応酬。
 基調は4拍子か。まったく拍のイメージがわかない。外山も大儀見もビートの頭を奔放に操った。それでいて、ばっちりリズムが噛合う。

 果てしなく盛り上がる途中。いきなり、控え室から大きな電話のベルがなる。
 「時間か・・・。しばらく休憩します」
 唐突に演奏をやめる。外山が軽く挨拶して、あっけなく終った。約50分ほどか。

 休憩挟んだ後半は、もっとのめり込んだ構成となった。
 大儀見はカホンを軽く叩くが、あとは竹スティックを持って初手からコンガを叩きまくり。アクセントでウードゥも。
 
 外山はバラフォンの前に座る。これが、すばらしかった。

 ビートはアフリカン。めまぐるしいフレーズが、外山の両手から溢れる。背中から外山を見る位置で聴いてたが、背筋はほとんど動かない。
 どっしりして腕も力が入っていないのに、聴こえるフレーズは風のよう。

 猛烈なフレーズが、正確に繰り返された。ランダムに叩きのめすのではなく、きちんとメロディが再現される。完全にコントロールされ、かつ、ぐいぐいグルーヴする演奏だった。
 大儀見のリズムももちろんすごい。前半以上に手数を増やし、迫った。

 しかしぼくは外山のバラフォンを、あっけに取られて聴いていた。フレーズが繰り返され、素早く次のフレーズへ移る。
 背中から見てると、無駄な動きがまったく無い。正確にマレットがコントロールされ、高速フレーズが果てしなく展開した。
 メロディが明確なぶん、よけいにビートの確かさが強調された。外山の底力を見せ付けた演奏だった。

 大儀見は途中で、バタ・ドラムを抱えた。軽快にビートを膨らます。
 鋭い目つきは変わらず。暗闇の中で、腕がしなった。

 大儀見と外山のコンビネーションは果てしなく続く。たぶん、いつまでも力の続く限り止まらないだろう。
 バラフォンのフレーズが高まり、静けさへ着地しかけたとき。二人ともビートはまだ生きている。

 刹那、楽屋からアラームがなった。またしても演奏をさえぎる格好で。
「ああ・・・終っちゃった」
 外山が残念そうに呟く。演奏終了だけでなく、構成も惜しんでか。
 ちらりとドラムセットを見た気がする。たぶん、途中からドラムを叩くつもりだったんじゃないかな。

 約40分の演奏。外山がンビーラを口にあて、コンタクト・マイク越しに歪んだ声で大儀見を紹介。外山は大儀見が、手を振って力強く紹介した。
 すっと楽屋へ消える二人。客電がつかないのをいいことに、拍手を続けてた。
 しばらくして、二人は登場。楽器の前に座る。
「・・・二人でやってて、アンコールって初めてじゃない?」
 外山が大儀見へ笑いかけた。
「短く、ね」

 呟いた外山は、スティックでドラムセットを勇ましく叩く。コンガ群の連打で大儀見は応えた。
 ソロ回しのような小細工は無し。互いの力強いビートのコンビネーションを10分くらい。

 聴くたびに圧倒される。リズム楽器のデュオで、かなりシンプルなのに。
 二人のかもしだすビートのうねりがとても気持ちよい。時間をかけて聴きたい。長く、もっと長く。
 
 前回はタイマーをドラムセットにぶら下げ、時間をきっちり指定した。今回は構成を決めたのかな、と思いきや。やはりタイマーで強引に終らせる。
 終らないビートを続けられるがゆえに。うーん、また聴きたくなった。

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