LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2006/7/10 西荻窪 音や金時
出演:GATO
LIBRE
(田村夏樹:tp、津村和彦:g、藤井郷子:acc、是安則克:b)
「前半はCDから。後半は違った演奏をやります」
田村の司会でライブは幕開け。GATO
LIBREのステージを聴くのは初めて。
CDでコンパクトでほのぼのしたアンサンブルと予想したら・・・まったく違う音楽の味わいなだった。
<セットリスト>*不完全*
1.カ
2.キ
3.ク
4.コ
(休憩)
5.ナ
6.ス
7.ニ
ふざけてるわけではなく・・・本当にこういうタイトルで田村は紹介していた。聞き間違いあるかもしれないが、どっちにしろ1文字のタイトル。
実際は頭3曲はCDに収録曲。"Then,Normal
life"や"Dreaming a
lot"だったと思う。もう一曲はなんだっけな?
4曲目や後半セットにもCD収録曲あったかも。思い出せずです。
ウッドベースとアコースティック・ギターのみマイクを通し、後は生音。
上手に藤井が座り、片足にアコーディオンを乗せる。始まっていきなり、アンサンブルの特異性を感じた。
トランペットやアコギがメロディを紡ぐが、ウッドベースやアコーディオンがドローンのように音を伸ばす。音響系的なアプローチみたいだ。
和音も複雑な響きを多用する。曲によっては楽器ごとにキーを変えてるような感じ。
それでいて、ギリギリのところでアンサンブルは成立する。
ソロ回しの感触は無く、タペストリのようにアドリブが交錯。ギターとベース、アコーディオンとトランペットが交互に、時に同時に即興を提示した。
1曲目は是安がアルコをじわじわと弾きつづける。エンディングも全員でコーダにせず、ひとり、またひとり音が消えてゆく。フェイドアウトのように静かな幕弾き。
ベース一人が残って、最後にデクレッシェンドした。
続く曲ではポリリズムのようにギターとベースが絡み、抽象的なフレーズをアコーディオンやペットが載せた。
藤井はふいごのようにアコーディオンを弾いた。蛇腹を短く開いては縮める。空気を掴んで鍵盤へ押し付けるかのよう。
ビブラートを上手く表現し、さらに音量も自在に操る。アナログ・シンセみたいな音色だ。片足に乗せたアコーディオンを、くいくいと軽やかに操った。
たしか二曲目。サイン波めいた音をアコーディオンから導いた瞬間が、強く印象に残る。
思ったより田村がフレーズを取らない。ベルを足へ乗せ、目をつぶって音楽を聴く。
曲によっては軽く宙を指さし、場面転換を指示した。
勢い、アンサンブルの上モノは津村が持って行った。むろんアコーディオンもソロを取るが、比較的アレンジの幅を膨らませ役だった。
芯はベースががっちり支える。どんどんフリーに傾く演奏を、低音が着実に支えた。
実際はベースも自由な方向へ向かう。しかし増幅された低音は、ひとつの耳しるべとなった。
前半数曲ではテーマへ行くと、穏やかな気持ちになる。メロディが優しく、柔らかく弾むから。
だからこそ中盤のフリーとのギャップが面白かった。
3曲目ではファンクな展開。指弾きでぐいぐいベースが押す。ポリリズムに突き進んだ。
そして4曲目。ふわふわと漂うメロディが音金に広がる。空調の音がドローンで広がった。
誰もがメロディと音の連なりの間を行き来する。
圧巻だったのは後半1曲目。20分以上演奏してたはず。初手からメロディ感を希薄に、4人が自由に展開した。ベースは弓弾きをテーマで、中盤だと指で弦を淡々とはじく。
テンポは緩やかだが、ビートはきっちり存在した。
津村はひっきりなしに指弾きとピックの間を行き来する。分単位でピックを咥え指弾きに、そしてまたピックへ。コード・ストロークはほぼ無し。
早弾きフレーズを取り混ぜながら、くっきりと弦をはじいた。
ラストは延々とベースが単音を弓で奏で続ける。弓ギリギリまで弦を弾ききり、そっと音を消した。
MCはほとんど無し。曲名を田村が呟く程度。曲名の指示によっては、メンバーが戸惑い顔を見せ合う。
しかし協議に入るでもなく、淡々と演奏へ向かった。
後半二曲目は「古い曲です」と紹介された。
これも調性感が希薄な曲。ベースの動きやアコーディオンの演奏を聴いてると、コードは確かに指定されてるみたい。
しかし互いの出す音はぶつかり合い、こみいった響きを常にアンサンブルが提示する。
安らぎではなく、緊張を常に横に従える。それでいてテンポは穏やかなまま。
ときおりボサノヴァっぽく盛り上がっても、無意味な熱狂へ走らない。
ある意味、田村や藤井の音楽として納得しうるサウンドだった。CDではえらくポップだと思っていたから。
最後の曲はトランペットのテーマを踏まえ、残る三人がユニゾンで早いフレーズをキメまくる。
ときおりバラけてしまい、津村と藤井が笑いあった。
アドリブも入ったが、比較的あっさりとしめる。
とにかく硬質なアヴァンギャルドさがにじみ出る快演。
ストイックなアンサンブルを志向しつつ、それでいてテーマでは優しいメロディを忘れない。
訥々とした旋律が聴こえると、ある意味ほっとする。そして逆に、だからこそ中間部での即興も映える。
次なるGATO LIBREの展開が楽しみな、刺激いっぱいのライブだった。