LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/6/5  西荻窪 音や金時

出演:太田恵資ソロ
 (太田恵資:vln,per,vo,etc.)

「・・・セッティングは、楽しんで頂けたでしょうか」
 かれが店へ姿を見せたのは20時をゆうにまわったころ。
 素早くセッティングを済ませる。マイクからチューニング、さらにサンプラーの確認。一通り終ったところで、観客に声をかけた。

 "ややの夜"はゲストを招き、ソロは別の日に設定するという。今日はその第一回。観客が大勢集まり、太田恵資は微笑みながら挨拶をした。

 客電が落ちて、背筋をすらりと伸ばした太田がエレクトリック・バイオリンを手に取る。
 エフェクターを踏みながら、ディレイで伸ばす。弦を軋ませる抽象的な音を幾つか。ボディも叩いたかな。ループさせたのは、なんだかサイケなパターン。
 ボリュームを絞りうっすらと漂わせる中で、アコースティック・バイオリンを手に取った。

 最初は爪弾く。シンプルなフレーズの積み重ねから、次第にクラシカルなメロディが溢れる。
 正直言うと、この日はへろへろで夢うつつになりながら聴いていた。だからかなり記憶があいまい。
 即興ボイスもところどころに織り込みながら、だんだんテンションが盛り上がった。

 前半は45分ほどか。切れ目はボイスで場面を変えるていど。そのまま一気にひたむきにバイオリンをかきむしった。
 終盤でのテンションの高さが素晴らしい。駆け上がるように旋律が溢れた。
 基本は即興だが、一部は曲をやっていたそう。詳細不明です。

 休憩を挟んだ後半はぼくが眠気覚めてきたので、ちょっと記憶が濃くなっている。
 まずはエレクトリック・バイオリンで下地のループ作り。ショート・ディレイやディストーションを薄くかぶせ、さまざまな音色を足しこんでループを作った。

 後半はそのままエレクトリックでソロを進める。しかし垂れ流しにはしない。
 10分ほど弾き進んだところで、すぱっとループを捨て去る。たちまち新たなループを組み立てる。ピチカートやボディ叩きを取り入れ、軽やかな音世界だったと思う。
 たちまち新たな世界が産まれた。

 エレクトリックで後半は通すかと思ったら、途中でタールを手に取った。
 ペダルで素早くバイオリン・ループを消し、すかさずサンプラーからパーカッションのループを流した。
 それにあわせて、ひたむきにリズムを流す。派手なソロは無い。ただ、リズムへ相対する。ストイックなひとときが続いた。

 十分近く、パーカッションを叩いてたんじゃ。いつのまにかサンプラーのビートが消え、太田の叩くタールのみが響いてた。
 おもむろに歌い始める。そっとタールを置き、アコースティック・バイオリンを持った。

 アラビックな即興を歌いながら、メロディは微分音を含む演奏へ。前半とはまた違う、旋律溢れるインプロに突入した。
 このセットでは、チャップリンなども演奏してたらしい。曲を良く知らず、詳細不明です。ごめん。

 最後はロングトーンで弓をゆったり動かし、ぽろんと軽く爪弾きで締めた。
 基本的に即興のため、どこまでが太田の狙いでどこまでが偶発性なのかは良く分からない。今日はあえてバイオリンを煮詰める方向性で、即興を弾いてる気がした。

 方向性は、これからどこに行くのか分からない。拡散も集中も、どちらでもいけるだろう。個人的にはラッパ・バイオリンでの即興や、曲を聴いてみたい。自作でも他の曲でもいい。もっともっと色々な太田の演奏を聴きたい。
 完全即興で充分なクオリティの音楽を産み出せる実力があるだけに、新味を狙うのかが読めない。手癖といわないまでも、毎回即興で演奏するだけでも、彼のライブは十二分に面白いだろう。
 どんな音楽が産まれるのか。今後のソロ演奏が楽しみだ。

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