LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/3/26   上野 水上音楽堂

   〜地上の宴〜
出演:渋さ知らズ、リマタンゴ、The black light orchestra、川下直弘トリオ

 琉球センター"どうたっち"が主催する野外音楽イベント。去年に引き続き、渋さ知らズを聴きたくて行った。今年は企画まで、渋さ知らズ側が担当したようす。The black light orchestraは数日前にブッキングされたという。
 しかもこの日は渋谷で夜からワンマン・ライブまで予定された、渋さファンには濃密な一日となった。ぼくは体力持たないので、昼のみの参戦としましたが。

 開演時間になると、上手からホーン隊の音が。渋さの面々が吹きながら登場し、客席を練り歩く。観客から歓声が飛んだ。一回りして袖に消える。
 鉄割りアルバトロスの司会に続き、ステージに川下直弘トリオが並んだ。ステージ中央で不破と岡村が向かい合い、中央に川下が立つ。
 無造作にサックスはアドリブを始めた。

川下直弘トリオ
 
<セットリスト>

1.ナポリタン
2.梅六個
3.至上の愛(第二楽章)
4.ニュー・ジェネレーション

 でかい会場で聴く川下トリオは、威勢よくていいもんだ。

 寒くて帽子かぶってたせいか、今日はPAの音がこもり気味に聴こえた。
 ベースはきちんと鳴るが、いまいちもどかしい。低音が軽く響き、宙へ飛んでしまう。
 川下は大きく身体を降りながら、テナーを吹き倒す。循環呼吸も取り入れ、ひたすらサックスを鳴らした。
 マイクの前をベルが行き来し、音量が微妙に変わる。かまわずに川下は演奏した。普段のステージと同様に、川下は延々とアドリブを重ねてく。

 一曲目はマレットも使い、岡村はドラムを強く叩いた。
 最初のサックス・ソロが終ったとたん、大きな拍手が飛ぶ。派手にアンサンブルを決めるたび歓声が沸いた。
 アップテンポで次々押す。頭の2曲はそれぞれ20分程度。ソロは、たまに岡村へ回る程度。メインはあくまでサックスだった。

 "梅六個"でドラムが賑やかなソロを飛ばす。
 不破はタバコを取り出すが、火が無いみたい。
 袖で身体を揺らして聴いていた小森慶子が、ライターを不破へ投げてよこす。不破はさっそくタバコへ火をつけた。
 
 40分程度のステージと告知あったため、2曲で終わりと思いきや。高速で"至上の愛(第二楽章)"に突き進む。
 さらにアイラーの"ニュー・ジェネレーション"へ。ドラムの音がどんどん強くなった。
 Tシャツ姿になった岡村はリラックスしたドラムを聴かす。派手なドラム・ソロを決め、1時間弱のステージは幕を下ろした。

 楽器を抱えて、メンバーがステージを去る。
 去り際に岡村が観客へ手を振る。とたんに大きくどよめいた観客が、いっぱい声援を送った。

The black light orchestra

 ベルギーから来たバンド。キーボード2人、フルート、バリサク、ドラムの五人編成。バリサクの男が2メーターを越える長身で、テナーサックスにしか見えない。
 派手な変拍子こそないが、タイトなアンサンブルだった。
 フルートやキーボードのメンバーは、クラシックをきっちり勉強したんじゃなかろうか。

 コミカルな要素を多分に含み、キーボードの一人が歌で引っ張る。ほとんどが歌入りだったと思う。
 アンチョコ片手にたどたどしい日本語でのMCあり。アクセント位置が変なところで、今ひとつ理解しづらかったのが残念。

 ボンゾ・ドッグ・バンドを連想するボードヴィルやシニカルな雰囲気を漂わせた。
 クラリネットを分解して象や火山の形態模写やニンジンを吸い込む。
 いきなりバリサク奏者が脱ぎだしミッキー・マウスに変身、曲の最後でドラムの効果音にあわせ、ピコピコハンマーでフルート奏者を殴り倒す。
 最後はメインのキーボード奏者が真っ赤な着ぐるみを着て、賑やかに終った。

 数曲では高岡大祐がゲストに加わり、チューバを鳴らす。面白かったが、でかい会場ではギャグが大味になってしまう。
 こじんまりしたハコでじっくり聴いてみたくなった。

リマタンゴ
 
 ライブを聴くのは初めて。数曲ではケンジ&リリアナも登場、中央スペースで優雅に踊った。途中でリリアナの衣装チェンジもあり。
 ちなみにバンド転換は鉄割りが繋ぐ。けっこう時間かかったため、間が持たずに絶叫で歌いだして可笑しかった。
 
 この頃になるとだんだん冷え込み、風も強くなる。途中で譜面が吹き飛ばされていた。
 聴いてて、残念ながら集中力が続かない。音楽が美しいだけに、ぶわっと広がるPAが恨めしい。轟音より、生音がいいなあ。やはりこれもインドアで腰をすえてじっくり聴きたかった。

 スズキイチロウや佐藤美由紀の丁寧で繊細な演奏を、リマの情熱的なテナーで盛り立てる。ちなみにウッドベースは、ほとんど聴こえなかった。
 7〜8曲やったかな。熱いテナーがびんびん響いた。

渋さ知らズ

 総勢35人か。見知らぬ若い奏者が幾人もいた。二人いるギターもあまり見ない顔。社長も勝井祐二もいない。
 まずはホーン隊が観客席を練り歩く。曲は"ナーダム"。テンポを半分に落とし、じっくりとフレーズを重ねた。近くにくると、それぞれがテーマを自在にフェイクしてるのが分かる。
 不破も客席練り歩きに加わり、厳しい視線で幾度かメンバーへ合図を送った。
 
 その間にステージへは白塗りが4人、前で見栄を切る。
 ドラムやベースがスタンバイ。練り歩きに加わらなかった片山広明が、すっくと中央で立ち上がってソロを太く奏でた。

<セットリスト>
1.ナーダム
2.ひこーき
3.股旅
4.渚の男
5.本多工務店のテーマ
6.仙頭
7.すてきち

 練り歩きメンバーがステージへ上がると、一気に観客がステージ前へ押し寄せた。The black light orchestra(以下、BLO)のメンバーもほぼ現れ、渋さに参加する。
 
 渡部がステージ上を軽やかに駈けて観客をあおり、さやペロも登場。のっけからヒートアップな展開だ。
 テーマから片山のソロへ雪崩れた。不破は何人かを指差し、一気に音を止める。
 立花を中央に置いて、パーカッション部隊のみをバックに猛烈なソロを聴かせた。

 テーマは幾度も登場し、合間にソロを挟む。静かに川口がハーモニカ・ソロを無伴奏で。そこへBLOのバリサク奏者がソロをかぶせた。
 さらに鬼頭、ソプラノを持った小森がバスキング風のフレーズで加わって、アドリブが混沌となった。

 不破は幾度もメンバーを指差し、きびきびと音を切り替える。
 無伴奏で室舘がハミングし、辰巳のtpソロに。
 ホーン隊やパーカッションが裏打ちで盛り立て、だんだんボリュームが上がった。
 改めて片山の野太いテナーが、たんまりと吼えた。

 "ナーダム"だけで30分ほど演奏した。
 キーボードと佐藤帆のテナーがフリーに絡み、メドレーで"ひこーき"へ繋げる。関根と室舘のデュオがきれいだったな。アカペラ状態でハーモニーが会場に広がった。
 薄くサックスやドラムが音を重ねてく。
 下手の高台に横たわってた白塗り舞踏女性が、ゆっくりと身を起こした。踊りはじめる。

 アドリブは立花のセンチメンタルなソロに変わった。
 中央でコミカルに東洋が身体をくねらせた。
 
 続く"股旅"ではイントロで高岡がいったん袖に消え、BLOのピッコロ奏者を引っ張り出した。そのまま彼の長いソロに。
 オケがみるみる音をクレッシェンドさせ、ぐわっとテーマをぶちかました。
 中間部は一気に音を減らし、ヒゴのベースとパーカッションだけのシンプルなバッキングに。
 小森がオリエンタルなフレーズの聴き応えあるソロを、たっぷりと響かせた。
 すでに日は落ち、とっぷり暗い。ステージの上で翻るスズキコージスキンの垂れ幕が、ゆるゆると風にそよいだ。

 オケでのブリッジから、立花のフリーキーなソロに。不破のキューで片山や佐藤も加わり、トリオでがんがんフリーに吹きまくった。
 オケがあおり、高まる。
 岡村の力強いタム回しがきれいなアクセントで、ひときわくっきり鳴った。

 渡部がMCであおり、"渚の男"へ。
 テーマが始まるとステージに4人のサンバ・ダンサーが登場。ぱんぱんの肢体を揺らし激しく踊りだす。
 辰巳が長いソロを勇ましく取る。ぱあんと轟いてかっこよかった。

 ホーン隊は再び客席の練り歩きへ向かう。ステージ前でモッシュしてた観客は妙にヒートアップ。
 ダンサーはステージ脇の高台に乗って、踊り続ける。歩き回るホーン隊を鼓舞するように、片山がテナーを強く鳴らした。

 ステージへ全員が戻り、"本多工務店のテーマ"へ。さくさくの進行だ。
 腕を振り回し、ギターが強いストロークで弾きおろす。
 そのまま一気に盛り上がった。もちろん最後は"仙頭"で締める。
 
 "すてきち"でゆったりメンバーが袖へ消えて行った。
 ダンサーや渡部が、大きく礼をしてステージを締める。二時間くらいの演奏だったろうか。

 若手メンバーが多かったせいか、ソロを取るのは限られたメンバーのみ。 
 たいがいはあちこちソロを回す不破だが、今回はメインの顔ぶれに集中してアドリブを任せた。"股旅"あたりで不破がギタリストに手まねでソロを促したが、そのまま立ち消えたりも。試行錯誤が感じられた。
 メインのメンバーがソロを固めると演奏は締まるが、大人数による混沌さやスリルが減じてしまったのは否めない。

 イベントだから、わかりやすい渋さ知らズに徹したのかも。むしろ後の渋谷ライブが、もっと実験的だったのかな。
 複雑で奔放で混沌とした渋さも聴きたい。聴きに行く場所を間違ってるのかもしれない。ピットインみたいな場所へ行かなくちゃダメか。

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