LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/3/19   西荻窪 アケタの店

   〜<早川生誕記念祭>〜
出演:早川岳晴セッション
 (早川岳晴:b、渡辺隆雄:tp、小森慶子:as、加藤崇之;g、磯部潤:ds)

 毎年恒例、早川岳晴の生誕記念ライブ。例年通り、満員の盛況だった。
 20時をまわった頃に客電が落ち、挨拶代わりか短めに力強いファンクが提示された。そのまま続けて"手品師のルンバ"へつなげる。

(セットリスト)
1.Down Down
2.手品師のルンバ
3.ターザン・イン・トーキョー
4. ?
5.玄武
(休憩)
6.Freedom Jazz Dance
7.バリタコ
8.ワームホール
9.キャラバン
(アンコール)
10.ウオーターメロンマン

 一曲づつ、丁寧に早川は曲紹介してた。しかし今夜はメモしそびれ、いまいち記憶があいまい。3曲目のあとに、もう一曲やった気がする。
 オリジナルとカバーが入り混じった構成なのは、リハの時間が充分に取れなかったため?
 それぞれのメンバーを曲毎に順番で前面へ出す、目配り効いた構成だった。
 ちなみに今夜の早川は全てエレキベース。一曲だけでも、アコースティックで聴きたかった。

 "Down Down"は骨太な早川のベースを生かし、あっさりめに終る。
 早川は肩の力を抜いて、ぐいぐい音楽をドライブさせた。奔放なフレーズ使いがめちゃめちゃかっこいい。

 "手品師のルンバ"では加藤が冴えたギターソロを披露。ピックを使って高速で駆け抜けた。小森もアラブ風味のラインを生かしたソロをとったが、いまいちフレーズ使いが堅い。
 ベースはフロントがソロのときも自由に旋律を操る。常にきっちり、低音でグルーヴをわしづかむ。
 
 "ターザン・イン・トーキョー"は渡辺の曲。加藤と小森はいったん休み、トリオ編成で演奏された。加藤はステージを去るが、小森はそのままステージ脇で腰掛け、観客状態で演奏を楽しんでた。
 イントロはフリー。早川はショート・ディレイを軽くかませ、フレーズ終わりを強くループさせる。
 トリオ編成では初めて聴くが、コンパクトなアレンジが前のめりなパワーを強調した。渡辺が猛スピードでトランペットを吹き鳴らす。

 確かここでドラム・ソロも挿入。磯部のドラムを単独でキッチリ、改めて聴いた。シンプルでシャープな叩ききっぷり。バディ・リッチやジーン・クルーパのようにきっちりリズムを身体に刻んで、連打の瀑布を撒き散らす。まぶたに汗を光らせ、磯辺はたんまりソロを取った。

 シンバル2枚にハウス・ドラムのシンプルなセットを、汗まみれで真剣なおももちで叩きまくる。
 アクセントをあちこち変えつつ、微妙にパターンを変えた。
 しかしありがちなジャズ・ドラムソロのように、手数自慢の単調なアドリブにならない。
 ドラムロールの手数が多いわりに、ノリがどんどん停滞するナルシスティックなドラム・ソロって嫌いなので、彼のアプローチは好みだ。

 "玄武"ではソロがどれも聴き応えあり。加藤はエフェクターをメインに弦を指弾きし、スペイシーなフレーズをばら撒く。まったく弾かずにつまみ操作だけで音を組むひとときも。
 ギターのソロを聴きながら、小森が楽しげに身体を揺らす。自らのソロでは、ステップ踏みながらパワフルなフレーズを展開。矢継ぎ早にフラジオを、きれいに響かせた。
 
 磯辺のドラムが見事。加藤のソロが終ったとき、つとサウンドが弛緩する。
 ソロ回しでありがちな瞬間だが、すかさずスネアを四つ打ち。
 きっちりサウンドを引き締め、次のソロに場面を繋いだ。

 全体の音は大きめ。1stセット終ったときには、すでに耳がきんきん鳴っていた。
「ベースの音が小さかったら、遠慮なく行ってくださいね」
 なのに早川は1ステージ終わったとき、にこやかに宣言してました。
 
 後半は小森が準備した、エディ・ハリスの"Freedom Jazz Dance"で幕開け。
 小森はソプラノ・サックス。ほんとうはサックス・トリオの予定だったらしい。ステージに加藤がスタンバイし、ギターも加わったカルテット編成となった。
 この曲聴くの初めて。ソプラノがメカニカルなテーマを、存分にアドリブで展開させる。早川は途中で弾きやめドラムとギターのデュオにしたり、アンサンブルにメリハリをつけた。

 とにかくここでは小森のソプラノが聴きもの。スタンドのネジが緩まり、サックスがあたるたび、くるくる移動する。
 そんなマイクの動きに苦労しつつ、ひとときも弛緩せぬアドリブを繰り広げた。

 その場で曲目は変更され、"バリタコ"が演奏される。一曲、削ったのかな。
 "バリタコ"はHAYAKAWAの轟音アレンジで馴染んだので、二管のテーマは柔らかくて新鮮だった。
 冒頭、いきなり渡辺がトランペットを軋ませる。音を滲ますように、搾り出した。
 そのまま探るようなイントロへつなげる。

 磯部が特徴あるリフを冷静に叩き、ベースは豪腕でテーマを刻んだ。
 ホーン隊は優しげにテーマを奏でる。これもアラビア風の香りがして意外。オリエンタルな響きが心地よい。加藤が自在に弾きまくったのもここだったか。

 「何も決めてません」
 そう宣言して"ワームホール"を。
 冒頭はドラムとベースのデュオ。ひたむきなドラムに乗り、早川はディストーションたんまりにベースを唸らせた。
 小森がアルトを強く吹き、加藤も加わる。おもむろにホーン隊のテーマが高らかな響きで膨らんだ。

「今日はストーンズほか、いろんなライブがある中で大勢来てくれてありがとう。
 最後は・・・"サティスファクション"」
 と、早川がおどける。
 曲はエリントンの"キャラバン"。早川のセッションでは馴染み深い。
 さすがに磯辺はメル・テイラーのアプローチを取らず、シンプルな刻みに徹する。
 ソロは常に一定のビートをがっちり握り、いかしてた。HAYAKAWAでの演奏が楽しみ。
 フロント陣のソロも活き活き。小森がキュートに吹きまくり、場面をさらった。 

 アンコールの拍手へ応えステージに上がるとき、渡辺が"Happy Birthday"をさりげなく奏でた。観客からも大きな拍手が飛ぶ。
 そしてアンコールの選曲は、ハンコックの"ウオーターメロン・マン"。早川はこの曲、好きなのかな。よくセッションで聴くが。
 ソロ回しは短め、2コーラスづつ。

 加藤がソロの時は小森や渡辺が腕をぶんぶん降って踊って見せる。早川のソロでは手をひらひらさせて盛り上げた。
 小森がすっかりムードメーカーだった。
 最後はピアニシモでテーマが幾度か繰り返し。小森がアルトを高く振り上げ、どかんと盛り上げて終った。
 
 堪能した。聴いてるだけで、じわり汗ばむ熱演。翌日も耳の奥が、きーんと鳴っていた。
 終ったときには23時。力強いジャズをたんまりと浴びた。

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