LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/3/11   吉祥寺 Manda-la 2

出演:加藤+梅津+今堀+吉田
 (加藤英樹:b、梅津和時;reeds、今堀恒雄:g、吉田達也:ds)

 NYを拠点に活動する加藤英樹が帰国、さまざまな編成でライブ・ツアーを行った。今日は加藤のユニット"Tremoro of Joy"の東京バージョン。NYではマルコ・カペリ、アントン・フィア、ブリガン・クラウスと組み、何回かライブをStoneなどでやっている。

 凄腕ミュージシャンを揃え、てっきりスリル満載インプロ合戦と思った。
 実際はかっちり譜面つき。チェンバー・プログレのようなライブ。アドリブの部分はあっても、基本はスコアありに見えた。
 
 簡単にメンバーを加藤が紹介したあと、MC無しの1セット式。
 1時間強で6〜7曲くらい、次々に演奏した。ほぼ全員、ずっと譜面を見続ける。
 吉田は叩きまくる合間で、たまに譜面を見ていた。しかしステージを通して、ずっと同じ譜面を使ってた気がする。他のミュージシャンは曲ごとで丁寧に、譜面を入れ替えていたが。

 加藤のベースは聴くの初めて。フレットレスのエレベを高く掲げ、自らも食い入るように譜面を見るしぐさだった。
 腰を大きく曲げ、屈むように弾く。譜面へ顔を近づけ、時にミュージシャンを睨むような仕草。眉間にしわを寄せ、上目遣いに見つめながら、タイトなベースを弾いた。
 
 どこまで譜面か不明だが、加藤のベースはタイトにフレーズを重ね、ぐいぐいと前のめりにグルーヴを操る。植村昌弘のドラムに合いそう。ベースをむやみに前面へ出さず、あくまで芯を刻むのみ。あとは全体のアンサンブルへ気を使ってるようだ。

 メロディがきれいな曲が多い。最初はテンポを落とし始まり、次第に盛り上げ高速で突き進む構成が印象に残る。
 たまにソロを吹き鳴らす梅津や今堀の瞬間を、つい心待ちで聴いてしまった。

 テーマは今堀と梅津のユニゾンで突き進むシーン多し。変拍子もあるが、基本はシンプルなメロディ。テクニシャンな二人がメロディをおとなしく吹くのが、すさまじく贅沢だった。
 だれもが軽々と弾きこなすので、演奏に破綻は無い。しかしスタジオミュージシャン的な使い方はあまりにももったいない。せっかくの豪華な顔ぶれだから、即興部分をもっと増やして欲しかった。贅沢な望みだろうか。

 一番自由度が高かったのは吉田か。テンポをキープしながら、フィルは自由に入れてるようす。
 見た目は梅津が派手。バスクラからライブを始め、ソプラノやアルトサックス、クラリネットを場面ごとに持ちかえる。二本吹きやフラジオなどの特殊奏法も。アンコールではリードを指ではじきながら吹いていた。
 おとなしい雰囲気は常に漂う。いつもの梅津らしい、重心軽く舞うサックスは控えめだった。

 今堀は譜面へ忠実に見せかけ、音色で変化を見せる。エフェクターでいじったり、時に場面ごとにタイミングをずらしたり。譜面に留まらぬ一癖ひねったフレーズを提示した。
 中盤では高音部をタッピング、ホンキートンク・ピアノのような堅い響きでフレーズを作る。あの奏法だけで一曲じっくり聴きたい。

 拍手が続き、メンバーはステージへ戻ってきた。
 一枚の譜面を加藤が吉田へ示し、合図一閃。ハードでアップテンポな展開だった。
 梅津や今堀は少しの間だけ、ソロを取ってたようだ。
 ざくざくギターのストロークがばら撒かれ、疾走して終了。

 終わったときに加藤は満面の笑み。メンバー全員が握手をしあった。

 自分の予想と違った音楽への戸惑いを咀嚼せぬ間に、ステージが終った感あり。チェンバー・プログレが好きな人なら、楽しめたのでは。
 2ndセット前の休憩で頭を整理しようと思った矢先に、1stセットのみでライブが終わり拍子抜けだった。
 NYでもここまで構築された音楽をやってるのか。CDでいいから、オリジナルの"Tremolo of Joy"を聴いてみたくなった。

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