LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2006/3/10 江古田 バディ
出演:Coil
(鬼怒無月:g、早川岳晴:b、田中栄二:ds、中山努:key)
鬼怒無月、早川岳晴のwebで前日の3/9に、解散が発表されたCoilのラスト・ライブ。唐突な発表ながらチェックした人も多く、バディは一杯になった。
"自分の中で今のフォーメイションでできることに限界を感じてしまい"と鬼怒は自らのBBSに綴る。バディ入り口のライブ・メンバー表には「今までありがとう」と彼の肉筆コメントがあった。
「こんなにいっぱい入るなら、解散ツアーやろうかな」
演奏前に客席を見渡して鬼怒が笑う。
「最後なので、ソロはなるべく長くやりましょう」と宣言して、鬼怒はブルージーなイントロを無伴奏で弾いた。
中山がキーボードの上へ置いたカオスパッドでエレクトロ・ノイズ。
早川のベースがぶっとくうねる。
この日は体調ヘロヘロなためか、最初は音楽へのめりこめない。まるで鬼怒+早川ユニットに、トラでドラムとキーボードが入ってるような違和感をおぼえた。Coilのグルーヴって、こんなちぐはぐだったかな。
田中は溜め気味に叩き、中山のキーボードも音が控えめ。
ジャストでうねるギターとベースのアンサンブルに、どうもそぐわない。ステージが進むにつれ、リズムが耳に慣れたけど。
この一週間の体力消耗も手伝って、正直なところ1stセットはうつらうつら聴いていた。
ライブは19時40分にとっとと始まった。宣言どおり、鬼怒はたんまりとソロを弾く。曲ごとに二本のギターを使い分けた。
2曲目は早川ソロがイントロ。
"Prodigal
song"ほか、5曲を約1時間で演奏する。
ソロの比率は圧倒的にギターが多い。鬼怒が7割、早川が2割。中山が1割ってとこ。
曲によって音を歪ませたり、ブライトなトーンで超高速ソロを鬼怒はたんまりと奏でる。ロック寄りな豪腕プレイだった。
早川はギターのアドリブ中も、自由にバッキング・フレーズを重ねる。鬼怒もベース・ソロのときに、ピックや指でフレットをつっつく音や鋭いストロークでカウンターをぶつけた。
頭がしゃっきりして音楽へ集中できたのが、1stセット最後の"Winds
of the
light"。
「アルバム・タイトル曲でもなんでもないですが、とても重要な曲です」
と、鬼怒が紹介したと思う。
ステージ後ろが緑に染まった。爽やかなテーマから、たんまりとギター・ソロへ雪崩れる。
休憩を挟んだ後半は、さらにアンサンブルが締まった。ソロの比率は前述のままで変わらず。曲によってはイントロにドラム・ソロが入った。
シンバルをいっぱい並べ、ハイハットの横にセカンド・スネアを置くセット。セカンド・スネアはハイピッチにチューニングされ、軽快にシンバルと混みで打ち鳴らす。
"Wild life"で幕を開け、まず2曲をメドレー。"Wild
life"をさくっとコーダへ導き、鬼怒の合図で次の曲へシャープに繋げた。
鬼怒のソロは曲によって様々な表情を見せた。
ハウリン・ウルフの"Spoonful"では、演奏前に早川と喋る。
「クリームの曲、が分かりやすくても、ハウリン・ウルフの曲って紹介がこだわりなんですよ。実際ぼくはクリームより、ツェッペリンがいいと思うもの。
・・・・とはいえ、早川さんはどっちもどうでもいいと思ってるでしょ?」
笑う早川。「ベストのロックバンドは?」って鬼怒の質問に対し、
「ジミヘンだね」と、即答した。
「なら、今度の北陸ツアーで"ジミヘンしりとり"やりましょうよ」
鬼怒の謎な提案へ、早川も客席も大笑い。
"Spoonful"ではボトルネックでギターを野太く響かせた。
鬼怒のボーカルに、早川はファルセットでコーラスを入れ、サビでは揃ってテーマを歌う。
あっというまに喉をやられたか、早川は直後のMCで声を嗄らし気味だった。
「"Sand"と思いましたが、良く似たタイトルの"Land"を」
これは中山が弾くの初めてだったらしい。イントロは指弾き。鬼怒が口に咥えたピックを、演奏中に床へ吹き捨てる。
ゆったりしたメロディが、たっぷり情感込めて弾かれた。素敵な演奏を、しみじみ聴いた。
2ndセット最後は"Earthman"。田中が力強くバスドラを踏む。
なぜかこの曲のイントロでだけ、ひときわ大きくドラムが響いた。
早川のベースとあいまって、フロアの壁がびりりと震える。
ギターはテーマを歌い上げ、ソロへ突入。ベース・ソロも力強く応えた。
「当然、アンコールはやりますよ」
ステージへ戻った鬼怒は微笑む。
曲はマディ・ウォーターズの"I've got
my mojo working"。ソロ回しはあっさり、シンプルに演奏された。
ほんのり客電がつくも、拍手はやまない。間をおいてメンバーがステージへ再び姿をあらわした。
「ダブル・アンコールですか。嬉しいな」
何の曲をやるか相談し、選ばれたのが"Cramp"。
「曲を覚えてない・・・やってるうちに思い出すかな」
鬼怒が呟き、イントロを奏でた。
この演奏が、もっともCoilらしかった。
けっこうラフな演奏だが、グルーヴは力強い。テクニックを超えた力技でアンサンブルをまとめ、突き進む腕力がCoilって印象あったため。
解散だからって、悲壮なムードはまったくない。肩の力を抜き淡々とステージは進行した。
そして最後を締めた"Cramp"のパワフルさに、ぐっときた。田中は叩き終ったとたん、スティックをほおり投げる。
4月末に鬼怒と早川は沼直也(ds)を迎え、北陸ツアーを控えてる。今後はこちらが新バンドか。KIKI
Bandをのぞけば、鬼怒が猛烈にギターを弾きまくるバンドがCoilだった。
だからこそ、この編成は続けて欲しい。早川とのアンサンブルだって、ばっちりだったもの。