LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/3/4   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之ソロ
 (明田川荘之:p,オカリーナ)

 アケタの店での、月例深夜ライブ。0時15分をまわった頃、「そろそろやろうか」と明田川荘之が唐突に姿を見せ、無造作に始まった。
 今夜は特に熱のこもった名演ぞろい。レコーディングされてたし、リリースを熱望します。

<セットリスト>(不完全)
1.ロマンテーゼ
2.外はいい天気
3.りぶるブルーズ
4.タイニー・ストッキング(?)
5.アルプ
6. ?
7. ?
8. ?
(アンコール)
9.アフリカン・ドリーム
 
 もしかしたら全てが明田川のオリジナルかも。いくつか曲目不明だが、ライブでどれも聴いたことあり。
 性急なテンポの"ロマンテーゼ"で、前のめりな展開の幕開けとなった。中間部でいくぶん穏やかになっても、どこか底の部分に力を感じる。ピアノの音にシンクロして、こつこつと小さな音がする。爪が鍵盤へあたる音だろうか。
 あちこちの箇所でおかしな響きがする。中断して調律するかと思ったが、かまわず弾ききった。

 "外はいい天気"は初期のオリジナルだそう。聴くの初めて。
 76年の3rdソロアルバムと同名。たぶん、ここに収録されてるんだろう。初期ソロは廃盤で聴けない。CDで再発されないものか。

 左手が淡々とシンプルな和音を刻み、サビではペダルでぶわっと世界を広げる。ドラマティックだ。かなりの部分が構成されてるのも、現在の明田川の世界と通じる。個性は初期からキッチリしてたんだ、と妙にしみじみしてしまった。
 ラフな展開はせず、おっとりした進行。当時はもっと素朴に弾いてたのかも。最近の曲で聴ける情感は、サビでぐぐっと盛り上がった。だからこそ冒頭テーマのシンプルな和音が心にしみる。

 次は市川りぶるに捧げられた曲。"りぶるブルーズ"は大好きなので、ひさびさにライブで聴けて嬉しかった。
 りぶるマスターの失踪に少々触れた後、オカリーナでイントロを吹く。
 バロック調のイントロから、"リぶるブルーズ"のテーマが浮かびフェイクした。
 二本のオカリーナを使い分けたあと、おもむろにピアノへ。テーマはさりげなく弾かれた。ピアノの中へ手を突っ込み、ピアノ線をぎりぎりと手の先ではじく。
 
 ステージが進むにつれ、テンションがみるみる上がった。"タイニー・ストッキング"は初めて聴く曲。オリジナルらしい。テンポ早く突っ走ったかな。ちょっと記憶があいまい。
 "アルプ"からエンディングまで、曲紹介なし。一気呵成に押した。
 唸りをこめ鍵盤が打ち鳴らされた。クラスターもちょっと登場した気がする。
 手のひらで低音部のピアノ線を幾度も叩き、調律狂いもかまわず演奏を続けた。

 もう一曲弾き、アップテンポの(7)へ。クラスターが炸裂し、テーマが浮かぶ。繰り返し破壊と構築が行われた。
 肘打ちだけでなく、低音部のキーを幾度も蹴り飛ばす。
 "りぶるブルーズ"弾いて、りぶるへの思い入れや苛立ちのテンションが、継続したと考えるのは穿ちすぎか。
 ぎりぎりと歯軋りするかのごとく、ピアノは濃密に響いた。

 これで終わりかな、と思いきや。きれいなメロディの小品を弾く。穏やかに幕を下ろした。
 叙情を滲ませ、クールダウン。猛烈な勢いで頭が朦朧となっただけに、静かな展開が心地よかった。

 「もう終るけど・・・あと一曲だけ弾くよ。なんかある?」
 詳しそうな観客から「"マライカ"が入ったやつ・・・」と、リクエストが入った。どういう意味かは不明です。ごめん。
 「ああ、"アフリカン・ドリーム"ね。あれは1曲で5曲分くらいあるんだよな〜」
 すかさず明田川が笑って答え、弾き始めた。
 冒頭から高音部を激しくキラキラ輝かせる。じっくりと演奏し、これだけで10分近くあったかも。
 中間部のアドリブもたんまりあって、堪能できた。

 そろそろ時計は夜中の2時。100分あまりぶっ続けの極上ライブ。
 ここ最近に聴いた明田川の深夜ライブでは、屈指の仕上がりだった。

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