LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/02/25  新宿Pit-Inn

出演:Altered States
 (内橋和久:g、ナスノミツル:b、芳垣安洋:ds)

 アルタード・ステーツはライブを初めて体験する。
 なぜかBGMはずっと、初期のシカゴ。アルタードとあまり関係がなさそうだが、誰の選曲だろ。
 
 メンバーがぞろぞろステージへ。ひとくさり喋る。
 全員が大阪弁で喋るあたり、あらためてアルタードが大阪のバンドだって実感した。

<セットリスト>*時間は目安です。
1.即興#1(10分)
2.即興#2(45分)
(休憩)
3.即興#3(60分)
(アンコール)
4.即興#4(5分)

 チューニング風にロングトーンをギターとベースが奏で、ランダムに芳垣はドラムを叩く。シェイカーも振っていた。
 やがてギターのソロへ。長い符割りのフレーズ。ナスノはエフェクタをかけた長音符を続ける。じわじわテンポが上がった。

 ドラムはパターンを避け、ノービートで叩く。変拍子を狙ったか、奇数フィルが立て続けに現れた。ギターソロは長め。フレーズの断片がやがてメロディに進化した。テンポはメリハリつけ、曲の中でコロコロ変わる。
 芳垣はスネアにタンバリンを載せ、スローに叩いた。
 ベースがソロの主導権を受け継ぐ。4拍子のパターンに変化してコーダへ。

 次の即興はギターの小刻みなフレーズと、ベースの長音の絡みがイントロ。ドラムもギターに合わせ、テンポが速まる。
 内橋はフレーズをサンプリングし、高音を強く響かせた。ぐいぐいテンポが速くなり、幾度もストロークを重ねてソロに雪崩れた。王道ロックなフレーズ作りだ。

 ベースは3拍子リフをぶつけ、ソロへ向かう。ドラムがハチロクから4拍子に変わったあたりで、ベースがゆっくりフレーズを重ねた。アクセントの位置が異なって、微妙なポリリズムが聴こえる。三人が醸すアンサンブルが心地よかった。

 ゆったりした時間は長く続かず、内橋の激しいソロへ。ナスノはスケールを意識したフレーズで上手くからみ、演奏はコクを増した。
 ドラムは叩きづめじゃない。時には音を抜いて変化をつける。
 ドラム抜きのギター・ソロへ、静かに芳垣がおかずを入れる。ウインド・チャイムっぽい音をさらさらと響かせた。ドラムセットにつるした小さなシンバルを鳴らしてたのかな。ぎざぎざに割れたシンバルをマレットで軽く撫ぜ、音を響かせた。

 曲はまったく止まらない。コーダの機会が訪れても、そのたびにテンポ・アップで即興が始まってしまう。
 ベースのソロではアルペジオ風の旋律を多用。テンポを緩急させ、音を操った。いったん内橋が弾きやめ、ドラムとデュオへ。
 
 おもむろにギターがディストーションを効かせ、切り込んだ。ざくざくとフレーズが吼えるなか、がっしりベースが頭を確保。
 フェイドアウトで終らせず、まだまだ曲は続いた。いつのまにかギターのエフェクトは消え去り、ブライトに響いて心地よい。ナスノはポリリズム気味にオブリを入れた。ギターのフレーズがあいまいに変貌し、混沌に。

 スティックを鋭く振る芳垣は、シンバルのねじを叩いたか。さりげなくローディが袖から現れ、ネジを締めなおした。
 テンポはグイグイ速まる。一瞬、ユニゾン気味にぴたりとリフを決める。内橋は倍音を飛ばし、ナスノはじわじわ盛り立てた。シンバルを吉垣がそっと叩いた。

 横に置いたカリンバ(?)を芳垣が取り出す。内橋の高速ギター・ループの中、響きを殺したカリンバを静かにはじいた。
 ナスノが、内橋が、音をフェイドアウトさせる。カリンバだけが幽かに音を残した。約45分のプレイ。メリハリ付いて、あっというまだった。

 逆に後半は、もう少し細切れにして欲しかった。途中で集中力が切れてしまう。内橋はデュオだと構築性ある短いインプロ志向なのに、アルタードは長尺路線だな。改めて違いを実感。

 後半も冒頭は雑談から。お喋りからそのまま、演奏となった。したがって芳垣は立ったまま。かまわずシンバルを打った。いったん座っても、最初は幾度か立ち上がって、ドラムを叩いた。
 ひっきりなしに内橋はサンプラー(?)のスイッチを切り替え、悲鳴のように歪んだ高音が噴出。ベースはうねる。

 テンポが上がり、重たいフレーズのギター・ソロへ。ここだけでなく、いくども内橋のギターにザッパを思わせるフレーズが現れた。内橋はメロディを延々弾かない。その点の共通性は無いんだが。
 力強い3人の演奏の上で、ベースが出してるとおぼしきループが重なる。世界がスペイシーに塗り変わり、ループがアクセントとなった。ここでも内橋はロックを意識したソロを取る。
 オスティナートで攻めたり、高音をかきむしったり。バラエティに富ませた。

 一番面白かったのはここ。いきなりディック・デイル風のフレーズを内橋が弾きだし、ナスノも芳垣も乗っかる。
 アンサンブルががらりと、暗黒サーフ・ミュージックとなった。
 じきに音が途切れ、爪弾きに変わる。芳垣はフロアタムの横へ置いたグロッケンでメロディを作った。ナスノも内橋も世界を壊さず、グロッケンを生かした演奏に切り替える。
 ロングトーンを伸ばすベースを、ギターも同様のアプローチで追った。ナスノがメロディアスなフレーズでソロを取った。

 しゃくりあげるストロークを、ギターがノーエフェクトで。
 シンバルを連打するドラムに力づけられ、ギターが強まった。ベースがグルーヴに乗り、ストローク中心のギター・ソロとなる。ドラムはテンポを上げてあおった。
 ワウでのサイケなブリッジを挟み、ベースはランニング気味にフレーズを重ねる。ここでも内橋のギターには、ザッパの影響が溶け残る。
 軽快なテンポが断続的となり、コーダを装う。しかし内橋は演奏をやめない。
 ドラムが軽くリズムを回し、ナスノは早弾きでつっこんだ。ショート・ディレイを組合せたフレーズで、内橋はソロを取る。
 
 芳垣がメガホンを持った。なにやら呟き、シンバルを叩く。鳴りが金タライみたい。ギターのディレイはループに。芳垣はメガホンをスネアへ押し付け、ハウらせる。そのまま軽くスネアを叩いた。
 ナスノがステージ上をうろつき始め、ポリリズムっぽいアプローチで気分を変えた。すぐにテンポが速まり、ギターがディストーションたんまりなソロを弾いた。

 世界がスローへ戻ると芳垣が小物を次々鳴らし、目先を変える。
 ただしこのあたり、かなりぼくの集中力が落ちていた。いっそ曲をいったん止めて、まったく別のアプローチが欲しくなる。
 いったんコーダを感じさせたが、内橋は終らせずに弾き続けた。

 芳垣はブラシへ持ち替え、スローにきめる。3連を弾くベースとハードなギターが対照的な響きになった。内橋はネックへ指を滑らせ、高音を鳴らす。咥えピックでソロを弾きまくった。
 ベースが4拍で刻み、ドラムも雪崩れた。

 グルーヴィなベース・ソロとギターのかきむしりが交互に。ナスノの和音も取り入れたアドリブは聴きものだった。
 内橋もナスノも首を振ってリズムを取る。ドラムがラッシュし、ギターはストロークのあとハウリングを唸らせた。
 ドラムのタム回しへベースのリフが乗る。シェイカーへ持ち帰る芳垣。シェイカーを握ったままブラシを持ち、高速でエンディングへ向かう。

 ナスノが、内橋が音を止める。シェイカーだけが最後は、静かに響いた。
 長尺即興の余韻を残し、メンバーは楽屋へ去る。アンコールの拍手にはすぐ応えた。
 最初にちょっとMC。内橋がマイクをナスノへむけて喋らすが、ナスノが口を開いたとたんにマイクのスイッチを切る悪戯に笑いが飛んだ。
 マイクを奪ったナスノが喋る後ろで、ドラムとギターがムーディにBGM。そのままアンコールの演奏が始まった。

 メガホンのサイレンが鳴る。ギターが断ち切り、グルーヴィにギターとベースが組んだ。
 芳垣はマラカスをスティックにドラムを叩きまくる。パワー控えめで、マラカスの音が重点で響いた。ベースが低音をズシンと唸る。最後はメガホンのサイレンで幕を下ろした。

 あまりの長尺に戸惑うひとときもあった。疲れてて、音楽へのめりこみそびれたかもしれない。互いの音がごく自然なアンサンブルで、安心して聴ける。即興のスリルを突き抜けた、ベテラン同士の予定調和がきっちりあった。醍醐味の歩留まりもかなり高く、充実したライブだった。

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