LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2006/2/18   駒込 琉球センターどうたっち

出演:不破大輔ソロ
 (不破大輔:b)

 数年ぶりという、不破大輔のベースソロ。渋さ知らズの曲か、ジャズのスタンダードとがっぷり組合うか。はたまた全編インプロで突き進むか。予想がつかず、楽しみだった。
 どぅたっちは沖縄関係の店。奥にステージの場所作って、周りにずらりとパイプ椅子を並べる。次々観客が訪れ、いつのまにか店はほぼ満員だった。
 
 ウッドベースを構えた不破は19時をちょっとまわった頃、無造作に演奏を始めた。

 かなりベースを傾け、ネックの下に首を置く。ベースを捧げるように弾き倒した。
 ほとんどインプロかな。ときおり、聴き覚えのあるフレーズが飛び出す。
 うんうんと不破は唸り、ウッドベースを弾きまくる。メロディを口ずさみ、みるみるテンションが上がった。
 前半セットは全て指弾き。緩急を効かせ、ひたすら低音が突き進む。目を閉じた不破はずんずんと音楽へ没入。深く、太く。低音がうなった。
 激しく右手が唸り、フレーズが高まる。5年ほど前にフェダインなどで聴けた、高速フレーズは控えめ。猛スピードで駆け抜けても、どこかどっしりと足元を固めた。

 床に敷かれたゴムのシートには、ガムテープでスティックが貼り付けられた。そこへ不破はエンドピンを押し付け弾く。右足は靴を脱ぎ捨て、せわしなく踏み鳴らした。シンコペーションの効いたフレーズと、かすかな足踏みが溶けるビートがかっこいい。

 特殊奏法に頼らず、ひたむきな音展開が強い。いっときボディを叩きもしたが、基本は指先。左手はめまぐるしく指板を駈け、右手が猛烈に強く弦を震わせた。
 前へ進む。まるで丸太を力技で削り取るよう。
 強靭なグルーヴを常に意識させ、付点で音が炸裂する。
 うなり声はいつしかベースの音と溶け合った。
 いちおう後ろにスピーカーを置いていたが、ほとんど生音に聴こえる。
 
 1stセットはまったく曲の区切りなし。途中から低音の奔流に朦朧となった。
 約40分の演奏。唐突にグルーヴを叩き切る。
 不破の額には、汗が滲んでた。

 しばしの休憩を挟んだ後半は、すでにピストンへ油が回った。
 ほとんどがフリー。しかしいきなりセカンド・ギア。すぐにトップ・ギアで、不破の演奏は邁進した。
 やはり右足でリズムを取る。たちまち靴を蹴り棄て、靴下姿で床を踏んだ。
 
 ときおり耳馴染みあるフレーズ。曲名思い出せない・・・。あきらかにメロディを奏でるときも。きっちりしたビートで空気を震わせ、やがてフリーに拡散した。
 3拍子から4拍子へ。音符が流れ、次のステップへ滑らかに進む。

 ほとんど不破は目を閉じて、ひたむきにベースを弾いた。
 中空を睨み、低音を加速させる。
 ボディを叩きつつ、開放弦で猛烈に弦をはじいた。振動する弦が野太く膨らみ、豪快に響く。

 ちらり時計を確認した不破は、横に置いたアルコを手に取った。一度、二度。強く弓を引いた。
 最初は毛の脇をつかって、高音を響かせるプレイ。クラシカルなメロディを取り出し、解体する。
 弓はいつしか表面が弦にあたり、あれよあれよと音が太くなった。フラジオを取り出し、フリーにかきむしる。アルコのほうが特殊奏法をやりやすいのか。豪腕でがむしゃらに弓がベースを吼えさせた。左手はランダムに弦の上で暴れる。

 演奏しながら不破はベースへ屈みこむ。
 一筋、二筋、額の汗が零れ落ち、ウッドベースの表面を滴った。

 後半は45分くらい。テンポを揺らがせ、リズムを自在にあやつり、たんまりとベースを聴かせた。
 小細工は何もない。ベース一本で邁進する、濃密なライブ。すごい。べらぼうに贅沢で充実したひとときだった。

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