LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/12/28 西荻窪 音や金時
〜ややっの夜〜
出演:太田+青木
(太田恵資:vln,etc.、青木タイセイ:b,tb,横笛,etc.)
客電が落ち、スポットライトに太田恵資が浮かぶ。小さなラジカセから流れるスイング・ジャズ。今夜もややっの夜が始まった。ほんのちょっと、ふだんより口上が長かった気が。
ゲストは青木タイセイ。トークが苦手とのことで、即興演奏一杯のライブとなった。
まずエレクトリック・バイオリンを持った太田が、口火を切る。
膝に手を乗せ、ちょこんと椅子に腰掛けていた青木。まっさきに持ったのはフレットレスの五弦エレベだった。
ライブを通して、ほとんどがエレベを使う。トロンボーンとアコースティック・バイオリンのメロウな演奏を予想しており、意外だった。
エレベを叩き、弦を擦る。音をサンプリングし、ループさせた。単なるディレイで返すときも、それぞれタイムをずらして膨らみある音像を作る。
太田の音も抽象的なリフへシフトし、アンビエント・テクノのような音世界が広がった。
淡々と漂う音像を広げ、おもむろに青木はトロンボーンを持つ。
そこでのメロディがきれいにハマった。
トロンボーンの音そのものも、マイクでサンプリングできるようだ。
それぞれの即興はあまり長くならず。太田は「短編小説みたい」と評した。
お互いに手ごたえある即興だったみたい。演奏中やコーダに、相手の出す音を聴いて、にっこり零れる笑顔が印象に残る。
前半2曲目の即興にいたっては、青木はトロンボーンすら持たない。
エレクトリック・バイオリンをバックに、ポリリズミック要素も軽く交え、ベースをゆらゆらエフェクターで操った。
すっとメガホンを持つ太田。静かにドイツ語っぽい即興の語りを載せる。
青木提示した音楽へ、みごとなアクセントをくわえた。
前半は3曲だろうか。記憶があいまいです。
その曲で太田は、笙のような縦笛を出した。一つの和音を、座って静かに吹く。同時にリズムボックスを鳴らした。
青木はまず、ベースを持ったかな。ループを広げたあと、トロンボーンでメロディを吹く。
太田は笛を吹きながら、アコースティック・バイオリンに持ち替えようと四苦八苦。
なんとか肩当てを外し、エレクトリックを横に置く。だがすぐに持ちかえが叶わず。アコースティック・バイオリンを膝に載せ、強く爪弾いた。
そして最後はメロディアスに展開。ヨーロッパあたりのクラシカルな響きを聞かせたはず。気持ちいい。
フォルクローレをイメージして聴いてたが、実際はラテンだったそう。
「本場ものの人にラテンをぶつけちゃって・・・失敗したと思いながら弾いてました」
と、太田が笑う。青木は太田の吹いてた笛はサンポーニャの一種と思ってたらしい。
確かに、と笛をいじる太田。管の端から吹くのを試してた。音は出ずだったが。
後半セットの青木はむしろ、ベーシストのよう。ほとんどベースを体から離さず、肩から下げたままトロンボーンや横笛を吹いた。
MCでも言ってたが、バトルする即興は皆無。穏やかで静かな演奏が、ほのぼの広がる。
故意か不明ながら、青木のスピーカーからハムノイズがずっと響いてた。その音が、演奏中も消えずに聴き取れるくらい。
後半最初の即興は、太田が太鼓をずっと叩いてた曲か。あやふやです。ごめん。
タールを捧げ、たしかリズム・ボックスもかぶせた。無言で打面をはじく太田。
青木がベース音を、幾つかループで重ねる。たまに響く、低音の音列がいいアクセント。しだいにノリが前のめりになる。
つと、立ち上がる青木。
身体を左右に揺らしながら、ベースをたっぷり弾く。
シンプルなファンクが提示された。うーん、こういう嗜好もあるんだ。
このあとの即興は、かなり記憶があいまい。
風邪薬が効いて、ボーっとしながら聴いてました。
心地よい即興が目白押しだった。
アコースティックな展開では、太田のメロディに青木の横笛が絡むシーンが脳裏に残る。
その前段階でループさせたベースのリフへ、太田があわせようとバイオリンで切り込む。
やがて牧歌的な展開となり、バイオリンと横笛が絡んだ。
エレクトリックのパターンでは、青木のボイパが聴きものか。太田も青木にあわせ、旋律よりもリフ中心のプレイ。マイクを持って高速舌打ちみたいな声を幾度か重ねる。
スピーディなリズムでも激しいテンション合戦へ行かないのが、この二人の個性だろう。
エンディングでアコースティックをひたむきに弾く太田。"Mosqus"の断片を連想したが、曲にならず。
徹頭徹尾、二人の即興だけで押し通した。
最後の最後は太田がバイオリンを構えたまま、固まる。
ぎり。ぎり。弓をゆっくり、ゆっくり動かす。軋む音を静かに響かせた。
じわじわと弓が動く。弦を軋ませて。
そして、音楽がやんだ。
コルネット・バイオリンに持ちかえた太田は、エンディング・テーマを弾く。
演奏の余韻が残ったか、ひときわ訥々さを強調したバイオリンだった。
深く頭を下げる太田。音金の照明が全て落とされた。
最初は青木に、もっとトロンボーンを吹いて欲しかった。
ベースは流麗に押すタイプでなく、拍を溜めて弾く。太田はジャストにリズムを取るので、最初は断片的なグルーヴが違和感あった。
ところがトロンボーンになると、不思議に太田のノリと噛合う。歌心溢れる展開が小気味良かった。
しかし2ステージが終る頃には、すっかり青木のベースのノリに慣れた。太田との絡みあいを、たっぷり楽しめたよ。
素朴で隙があるように見せかけ、そうとう凝った音楽。手癖の応酬ではない。むしろ二人の作曲行為を、こっそり覗いているような気分。
次々にアイディアを提示し、膨らます。そんな、刺激的なライブだった。