LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2005/12/9   新宿Pit-INN

出演:unbeltipo Trio
 (今堀恒雄:g、ナスノミツル:b、佐野康夫:ds)

「前に組んでたバンドは、一年間リハーサルでライブやらないこともありました。自分にしては(unbeltipoって)ペース速い活動です。リハ二回でライブに臨めました」
 ステージ途中のMCで今堀が笑いながら喋る。改めて圧倒された。これをリハ二回で出来るの?

 CDとはかなり違う。エレキギターをたっぷり聴け、複雑に揺らぐサウンドに酔った。
 ウンベルティポのライブは初体験。もっとかっちり、コンパクトな展開かと思ってた。とんでもない。

 演奏前のBGMは編集テープか。"スマイリー・スマイル"から頻繁に選曲された。
 20時をまわった頃、三人が無造作にステージへ。すっぽり帽子を被った今掘は、ギターをもって登場した。
 まず今堀が目の前のエレクトロニクスをいじる。サンプラーかな?
 指を動かすと、混沌としたビートがいくつか現れた。

 タバコをすってた佐野は、ドラム・セットの前でスティックを構えなおす。
 シンバルをいくつか叩き、エレクトロ・ビートへ絡んだ。ナスノがずうんと弦を静かにはじく。
 そして、今堀がギターを弾いた。

 一曲目は残念ながら曲のバランスが今ひとつ。ギターがこもり、ドラムがやたら堅くパツパツに響いた。
 曲はCDで聴き覚えあり。アドリブあるのかもしれない。けれどもとにかく、がっつり構成されていた。

 2曲目が圧巻。これもCD収録曲の変奏。前半はめったにライブでやらないそう。バラードのアレンジだった。
 やはりサンプラーをいじってある程度の下地を作る。今ひとつ雰囲気が掴みづらい。
 中盤でテンポアップし、軽やかにビートが弾んだ。

 ・・・今堀に圧倒された。あまりにも軽々とギターを奏でる。身体の一部みたい。
 今までライブハウスでいろんなギタリストを聴いた。たいがいのことじゃ、驚かないつもりだ。
 なのに今日、ひさしぶりに呆然となった。あまりの凄いギターに。

 佐野のドラミングは飛び切りシャープ。手数多く、シンバルやタムを打ち鳴らす。かなりきっちりタイミングは決められていそう。
 曲の途中で今堀の視線一閃、からりとリズムが変わる。フレーズの途中でいきなり倍テンやテンポ・ダウン。みるみる走り、急に変化する。頻繁じゃないが、とにかく奇妙なタイミングで変わる。
 4拍子や3拍子でも、しばしばアクセントはギターやベースとずらす。複雑でかっこいい。
 タイトで勢いあるドラミングだった。

 前半のナスノは抑え目。単音のロングトーンやゆったりフレーズで、じんわりとサウンドを支えた。
 だからこそ、ときおりテーマやオブリの高速フレーズが引き立つ。
 2曲目の最後だったかな・・・フィードバック・ノイズを高らかに響かせて、ナスノは曲をまとめた。

 とにかくぼくは、今堀の指使いに釘付け。もちろんドラムもベースも聴いたよ。でも主役は明らかにギター。休むまもなく、2ステージを弾きまくった。
 たまにポップなメロディも現れるが、すぐさまストイックなフレーズに埋もれてしまう。
 指をぐわっと大きく広げ、フレットを抑える動きに迷いがない。

 単音だけじゃなく、コード弾きやストロークもがんがん挿入される。
 ロック・ギターのかっこよさを踏まえつつ、先鋭的な音符使いだった。
 アドリブっぽい箇所もあるが、根本はインプロじゃない。頻繁にアンサンブル全体でのキメが入る。
 即興の弛緩は微塵もなく、全てが譜面に書かれているかのようだった。

 ステージ終盤でいくどか、ナスノは汗をぬぐう。
 今掘は対照的に、終始涼しい顔。俯きかげんで軽々と、べらぼうなテクニックのギターを奏でた。
 特殊奏法なんて使わない。左手はフレットを押さえ、右手が弦を指かピックではじくだけ。オーソドックスなスタイルなのに、ギターが凄まじかった。
  
 「1ステージ目、最後の曲です。"Desert for Desert"」
 え?まだ3曲目なのに。慌てて腕時計を見た。すでに20時45分を回ってる。あっというまに時間がたっていた。
 3曲目はゆったりしたテンポだったかな。疲れてたので、途中で朦朧としてしまいました。

 休憩挟んだ後半は、新曲から。
 バンド全員がスタート&ストップで、やがてばらけてく。エレクトロニクスは、使わなかったと思う。
 やはりギターのスピードに目が行く。ナスノも手数が多くなり、今堀と高速フレーズで切りあうシーンが幾度かあった。
 もっとも即興じゃなく、きっちり譜面がありそう。

 後半も二曲目は長尺だった。最初にサンプラーでひよひよとたゆたうフレーズをループさせる今掘。
 そして口にピックを咥えたまま、爪弾きで滑らかにメロディを操った。
 
 中盤ではディストーションをいくつか使い分け、次々にフレーズを溢れさす。
 アームもつけたギターだが、ほとんど使わなかったな。

 最終曲を濃密に駆け抜け、終ったのが22時15分位。ずいぶん早い。
 もちろんアンコールあり、すぐにステージへ現れてくれた。
 最後は"JD"シリーズだったかな。ぐっとロック寄りなアプローチ。猛烈なギターソロが延々と続いた。

 ウンベルティポはCDとかなり違う。ライブのほうが肉体的なアプローチで、より今堀のギターが強調された。
 むろんナスノと佐野の確かなテクニックあってこそのアンサンブルだ。
 演奏自体は短めだけど、お腹が一杯。濃密な音世界に頭が朦朧となった。MUMUとの対バンで聴いてみたいな。

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