LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/12/3  大泉学園  In-F

出演:津上+坪口+吉見
(津上研太:as,ss、坪口昌恭:p、吉見征樹:tabla)

 予想以上にストレートなジャズだった。

 選曲はパーカーを2曲、クリフォード"I remember April"、ジョビン"Corcovado"、エリントン、そしてスタンダードなど。
 吉見が加わることで、フェイクした音楽を予想してた。
 たしかにビートは4ビートとは無縁だ。
 しかし坪口の強固なジャズで、がっちりと音楽がスイングした。

 このトリオを聴くのは初めて。
 DCPRGはもちろん、他のバンドでもそれぞれの演奏は幾度も聴いている。しかし坪口のピアノが、ここまで素直なジャズを追求するとは。

 上手に津上が椅子を起き、腰掛ける。下手よりのピアノの前に吉見はタブラを据えた。位置関係が新鮮。ピアノに近いほうが演奏しやすいのかな。
 曲ごとに吉見はキーを坪口に尋ね、微妙にタブラのチューニングをいじる。
 バーを一本、挿入するだけでキーを変えていた。

 津上がほとんどの曲紹介をしたが、メモを取りそびれたのでセットリストは割愛させてください。
 MCは津上が担当。もっとも曲紹介を一言しただけで、すぐに次へ移ってしまう。
 1曲も短め。10分くらいか。1セットに5曲ぐらいを演奏した。
 
 このそっけなさも戸惑う。そこらのジャズ・クラブで箱バンドならわかる。でもin-Fだと、もうちょい突っ込んだ何かを期待してしまうから。
 音楽も、パフォーマンスも。別に、もっと喋って欲しいわけじゃないが。

 演奏は吉見が完全にバッキング。テーマから津上が長いソロを取り、ピアノのソロへ。そしてテーマへ。時に4バーズ・チェンジを。
 とにかくオーソドックスなアレンジだった。
 2回ほどタブラがソロっぽくなる瞬間もあったが、ごく短い。
 口タブラもなし。あのジャズにぶつけたら、違和感が面白そうなのに。

 もっともタブラのリズムは奔放なまま。4拍子で動いてても、ステージが進むにつれて多彩なフィルがびしばし挿入される。
 唯一アンプを通したタブラの音は、硬い音色で上のスピーカーから軽やかに降り注いだ。
 ベースパートのいない編成で、タブラの役割が相当重要だ。決してひとところにとどまらぬビートが、柔軟なノリを確保した。

 前半の最後のほうで、エリントンのバラードを演奏する。
 吉見が、坪口へテンポを尋ねた。カウントでテンポを教える。
「ワーン、ツッ、ワンツッスリッフォー」
 えっらい速いテンポでカウントとる坪口。

 が、ピアノは思いきりゆったり弾く。
 さすがに吉見はつられないたが、ちょっとしたいたずらに客席でくすくす笑いが広がった。

 津上は曲によってソプラノとアルトを吹き分ける。
 サブトーンをたんまり生かした音色。ああいう音で前も吹いたっけ?
 何度かリードを取り替えても、さほど音色は変わらず。あえて、だろう。

 前半/後半ともにあっさりめの演奏時間。
 アンコールの拍手が飛ぶ。
 ステージから降りる儀式を省略し、さっそく応えてくれた。

 ちなみに今夜は坪口の誕生日だそう。三人で軽く"Happy Birthday"を。津上のソロからピアノのソロへ。
 「自分で演奏してるよ〜」
 笑いながら、坪口は軽くアドリブを弾いた。

 アンコールはメル・トーメの"The Chistmas song"。
 最近だと菊地成孔のバージョンが頭に浮かぶ。
 
 ちなみに演奏前、さっそくタブラで吉見はクリスマス・ソングを。
「どの現場でもそれ、やってるでしょう」
 と、メンバーがげらげら笑う。決まりごとだから当然、と吉見は胸を張ってニヤッとした。

 "The Chistmas song"はロマンティックな演奏。
 タブラはあえて叩かず、横につるしたベルを静かに鳴らした。

 穏やかなメロディとふくよかなソロ。ふだんちょっとひねったジャズを聴いてるだけに、今日のアプローチは楽しかった。
 ムーズヴィル盤を聴いてるようなライブだったよ。寛げました。

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