LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/11/25   西荻窪 アケタの店

出演:緑化計画
(翠川敬基:vc、早川岳晴:b、石塚俊明:ds )

 メンバーの片山広明が体調を崩し入院中。トラを入れず、三人編成のライブとなった。緑化計画の長い歴史でも、この編成は珍しいことだそう。
 20時をまわった頃、メンバーが店内に顔をそろえる。
「まずは早川君の曲を。"タンゴ"。トシは曲も知らないよな?」
 翠川が笑って石塚のほうを向いた。珍しい選曲だな・・・。

<セットリスト>
1.タンゴ
2.メノウ
3.アグリの風
(休憩)
4.Seul-B
5.サウザンド・アイズ
6.ウエスト・ゲート

 三人編成でも、定位置につく。翠川が座ったのは、ちょっと上手寄り。
 エレキベースを抱えた早川も、パイプ椅子に座って演奏した。
 イントロはフリーから。チェロのフラジオを多用するフレーズに、そっとベースが乗る。
 最初は二人だけ。やがてトシがマレットで静かにドラムを鳴らした。

 静寂さを強調したサウンドだ。店内の空調ノイズが聴こえるほど。
 テーマへ移り、二人の音が絡み合った。

 翠川も、早川も、足でリズムをとる。
 同じテンポ、同じフレーズを弾きながら、二人の足踏みは微妙に違う。
 早川はインテンポ、翠川はわずかにゆったりと。
 そのわずかなズレがグルーヴとなった。

 アドリブは翠川と早川が主体。ときおりくっきりしたソロ回しを提示しつつ、自在に二人が絡む。
 音量が小さめなせいかトシのドラムはマレットを中心に、やわらかくパーカッシブなアプローチで迫る。ビートを刻む場面はほとんど無い。
 すっと椅子から立ち上がる早川。野太く、エレベでフレーズを彫った。

 続く"メノウ"でも、翠川と早川の絡みから。トシは指先を使って、シンバルを軽やかにこする。
 ふわっと三人の音が溶け、ふくよかな響きが広がった。
 エレベは低音を店内一杯に広げ、アンプを通したチェロが飛び切り滑らかな旋律で歌った。

 翠川が主導権をがっちり握る。ごく自然に。フロントがチェロだけなせいもあるだろう。
 とにかくチェロの響きが心地よい。
 早川はときおり顔を上げて、翠川を伺う仕草も幾度かあった。
 ひとしきりソロを弾き、ふっと視線を投げる翠川。ベースを持ち直し、ソロを早川が受け継いだ。

 前半の圧巻が"アグリの風"。
 トシがパルス・ビートを叩き、翠川はチェロのボディを後ろから叩く。執拗に。
 やがて早川が加わった。フリーな空間が提示され、翠川が指で弦を弾く。 勢い良くテーマへ雪崩れインプロに繋がった。
 くるくると役割が変わる。チェロもベースも、そしてドラムも存分に奏でられた。

 「これをやろう」
 短い休憩のあと。曲名を言わず翠川が譜面を指差し、早川に示す。
 確かこの曲が、イントロで4ビートっぽくなったんじゃ。二人とも指弾きでゴッツリとグルーヴさせた。
 翠川がテーマを弓でふくよかに響かせる。

 「緑化計画として、とても古い曲です」
 そう前置きされたのが、"サウザンド・アイズ"。
 「今日は片山がいないけど・・・」と呟いた。彼のエピソードにちなんだ曲なのかな?
 三人でのアンサンブルが構築され、お互いの立ち位置に探りあいが無い。 
 力強いソロ回しを聴かせたのは、この曲でだったろうか。
 ここぞとトシがスティックをドラムへ打ち下ろす。しかしごく短時間。 あとはブラシだったはず。

 トシのドラミングは、ひときわビートを回避した。
 どの曲でも二人の音をよく聴き、盛り立てるタム回し。指先を使ってドラムを叩く奏法もひんぱんに出た。
 ときおり身体を大きく動かしても、ドラミングはかなり気をつかってた。
 クライマックスは"ウエスト・ゲート"。
 再び早川は、パイプ椅子に腰掛けて弾く。
 これも美しい瞬間が幾度もあった。ベースとチェロだからこそ、ベースラインもフレーズもくるくると役割分担する。
 早川が高音部分を多用し、早弾きでアドリブを弾きまくった。

 アンコールはなし。いつものとおり、あっさり楽器を片付け始める。
 最初は聴いてて、片山の存在の重要さを実感するときもあった。明らかに、ふだんと音が違う。
 早川も抑え気味で、翠川のピアニッシモからフォルテまで、降り幅大きい世界に合わせた。
 もちろんトシのドラムも。ステージを通してマレットやブラシ、指先を多用。スティックをほとんど使わなかったもの。

 しかしアクシデントな編成でも、もちろん緑化の音楽は成立する。
 緑化計画はすくすくと強靭だ。いいライブだったよ。

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