LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/11/20  吉祥寺 Manda-la2

出演:sim featuring Kamura Moe
  (大島輝之:g.comp,大谷能生:key,electro、植村昌弘:ds+佳村萌:vo,key)

 simに佳村萌が加わったライブ。ゲスト扱いと思ったら、きっちり最初から佳村が登場。しかも演奏曲のほとんどが新曲と、力のこもったステージになった。
 観客席は満員で立ち見が出るほど。下手から植村、大谷、佳村、大島とぐるり舞台へ乗る。

 19時半時間きっかりにメンバーが現れ、すぐに客電が落ちた。
 大谷がキーボードをいじり、強烈な低音ノイズが店内に轟き渡る。
 ツインペダルのバスドラが、断続的に響いた。

<セットリスト>
1.1
2.Sea song〜ルータ
3.インプロヴィゼーション
4.グラン・シーク
(休憩)
5.636
6.ブルー・ジェイ・ウェイ
7.シス
8.ディム
9. ?
(アンコール)

10.ムール

 (2)の前半はロバート・ワイアット。(6)はもちろん、ビートルズのカバー。あとは全てオリジナル曲。ほとんどが新曲だそう。
 基調となるのは大谷のキーボードか。カオスパッドを二つ載せ、横のミキサー(?)で音質をいじってた。この日は後方から見てたため、あまり細かいとこまで見えずじまい。

 全員が耳にイヤホンをつけての演奏。クリックじゃなく、もしかしたらモニターかもしれない。
 最初はエレクトロ・ループをベースに、大島が静かにギターを弾く。やがて植村が、ジャストなドラミングでポリリズムを産んだ。
 
 "1"とはこのライブのため、大島が1曲目に書き下ろしたという。他の曲も、タイトルに意味はないらしい。
 MCはほぼ植村が担当した。珍しい。本人も「ドラマーとしてギャラは安いけど、MC単価は高いぞ」と韜晦する。
 喋りは時にきつすぎるほど。毒舌いっぱいで面白かった。
 
 "Sea song"はオリジナルを聴いたことない。
 ギターの爪弾きを足がかりに佳村が静かに声を載せた。PAバランスでボーカルが小さく、聴き取りづらくて残念。
 もちろんエレクトロ・ループも続く。かなり音量は大きめ。高音や低音、曲によってはハーシュ・ノイズを延々かます。マン2でのこういう音圧は新鮮だった。
 ゆったり寛いだあたりから・・・いきなりでかい音が炸裂。
 ドラムの手数も多くなった。ここから"ルータ"へメドレーかな。

 "インプロヴィゼーション"と題された曲だが、かなり構成が決まってるようす。
 演奏前に大島が説明しかけ、「喋るなよー!」と植村が怒ってた。
 曲が終わったあとに解説もなく、どういう段取りか良く分からない。
 佳村がときおり指を上げ、英語で数字を幾度も呟く。たまに別の言葉も。
 拍子かと思ったが、違うみたい。どこまで即興かは不明ながら、佳村のハンドキューが切っ掛けにみえた。
 
 佳村や大谷の手元にキーボードはあっても、ほとんどメロディはなし。 
 全員が譜面をじっくり見ながら演奏するため、弾いてるさまが良く見えずじまいだった。

 大谷の打ち込みやカオスパッドでのエレクトロ・ループへ逆らうがごとく、植村のジャストなビートが刻む。タムの涼しげな響きが心地よい。
 エレキギターは、フレーズは控えめ。シンプルなストロークで曲の輪郭をくっきりさせた。

 佳村はこのユニットへ、自ら望んで加わったという。ウィスパーで言葉を呟くパターンが多い。
 メロディ皆無、ストイックなサウンドが繰り広げられた。

 20分ほどの短い休憩時間をはさみ、"636"から。CDで聴き覚えあるループが顔を出すが、別の曲らしい。
 佳村が日本語で数字を呟いたのは、この曲かな。

 "ブルー・ジェイ・ウェイ"で初めて、simのアレンジ手法が良く分かった。さすがにオリジナルを知ってるから。
 simのライブでは良くやるそう。もっとも植村は「ビートルズ聴いたことない」と言い放ってた。
 今夜のステージでもっとも分かりやすいアレンジ。植村のドラミングはエイト・ビートが基調だった。

 やはりループが無機質に提示される横で、エレキギターがゆったりストロークでコード弾き。佳村は音符を確かめるように、じっくり歌った。
 中間部で電子ノイズも挿入され、ボーカルのフレーズもフェイクされてゆく。

 喋りすぎて時間が無い、と"シス"と"ディム"は次々と演奏された。
 このあたりでsimの音楽にようやく馴染んだ気分。
 どっちの曲か忘れたが、途中に強烈なホワイト・ノイズがえんえん挿入されるが耳に痛い。

 どういう譜面か不明だが、曲のサイズはきっちりきまってそう。
 たとえばホワイト・ノイズが10秒くらい炸裂しカットアウトすると、そろってドラムとギターが加わった。即興部分もありそうだが、根本は譜面ベースだった。

 佳村とのコラボがまとまって聴こえたのも、後半戦の半ばから。
 やはりボーカルのボリュームは抑え目ながら、ストイックなsimの音楽に佳村の呟く声がサイケに乗っかった。

 最後はsimで良く演奏される曲らしい。MCで紹介無く、曲名不明。
 エレクトロ・ループがあってもダンサブルさは皆無だったのに。
 最後の曲では、ドラムが活き活き跳ねるグルーヴを感じた。最後にかっこよく決めたよ。

 いったん客電がつくも、拍手は続く。
「全然用意してない・・・」

 大島が呟きながら曲紹介。演奏前に佳村はなにやらメンバーと喋り、打合せする。
 アンコールそのものは短め。しかし佳村のボーカルもきっちり加え、ユニットとして見事な演奏だった。

 佳村はポエトリー・リーディングっぽく、有機的にからむと予想してた。だからどっぷりsimの世界にはまったアプローチは意外。
 でもステージ進行につれ、音世界が調和するのが分かる。
 二度目あるのか分からないが、興味深い音楽だった。

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