LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/11/5   吉祥寺 Manda-la2

出演:渋さ知らズ劇場
 (sax:片山広明,小森慶子,立花秀輝,川口義之,鬼頭哲,tp:辰巳光英,tuba:高岡大祐,
  g:大塚寛之,key:中島さちこ,per:関根真理,ds:倉持整,fl,vo:室舘彩,舞踏:シモ
  b:不破大輔)

 不破が、小森が倉持がだんだんステージへ上がる。客電が落ち、メンバーがスタンバイした。
 メンバー紹介を不破が始めても、中央の席がぽっかり開いたまま。
「片山さんは?」
「・・・(客席の)後ろでくつろいでます」

 笑いながら、おもむろに片山がステージへ登場。テナーサックスを構える。
 不破の合図で、一曲目が始まった。
 ステージ上方の狭いスペースに、VJが映像を映す。最近はすっかり定番なんだ。

<セットリスト>
1.パ!
2.股旅
3.大沼ブルーズ(incl."fishermans's band")
 (休憩)
4.反町鬼郎
5.サリー
6.ナーダム
7.P-chan
8.千頭

 午前中に早稲田の学祭にも出演と、この日はダブルヘッダーな渋さ。そのためか冒頭は、メンバーの幾人かはくたびれた表情。エンジンかかったのは後半セットだった。
 ソロを並行林立させる、渋さ得意のアレンジが多かった。

 "パ!"を聴くのはひさびさ。中編成の渋さだが、これだけのホーンズが揃ってテーマをぶちかます響きは爽快だ。
 不破はステージに座って、ウッドベースを弾く。
 
 ライブを通して、かなり片山がソロ回しや進行を仕切った。
 まず立花を立たせ、ソロをまかせる。バックリフを小森と連れ立ち、片山が吹いた。
 ソロは川口、小森と回る。肩慣らしのように、じわじわとテンションが上がった。

 そのまま"股旅"へ。賑やかにテーマを奏でる中、下手からにゅっとシモが現れた。
 じわりじわり歩を進める。客席をゆっくり舞いながら通過、椅子を並べた上手スペースに上って身体をくねらせた。
 薄めの白塗りで、筋肉の動きがくっきり見える。間近だと体だけじゃなく、表情も混みで踊ってるのがよくわかった。

 ステージ上方のビデオではバスの車窓風景が写された。
 力強い長尺ソロを取ったのが辰巳。
 テンション高く吹ききり、きれいに空気をなぎ払った。
 
 片山がニコニコ笑いながら、次々とソロを回す。テーマへのタイミングもキューを積極的に出し、吹きまくっていた。
 演奏は尻上りに良くなる。

「"大沼ブルーズ"ね」
 不破の声が客席へも、微かに聴こえた。
 鬼頭と高岡あたりがイントロだったかな。室舘が唐突に、
「Fisherman's ba〜nd♪」
 と歌って、ムードを変える。てんでに続く、混沌としたインプロ。
 すっと立ち上がった片山が、高らかに"大沼ブルーズ"のテーマを吹いた。 シモはテーマが終わった頃に、姿を消してたはず。

 これもソロが聴きどころ多い。
 川口はハーモニカ・ソロを無伴奏に近い状態で、低く続ける。
 片山の目配せで、大塚がエレキギターのボリュームを上げた。
 このギターがよかった。最初はボトルネック、あとはピックでブルージーにじわじわと盛り上げる。

 ステージ上方のビデオに、大塚の姿がリアルタイムで映った。
 この効果、ライブが進むにつれてばんばん使う。時に特殊処理も織り込んで。
 一曲それぞれが20分くらい。あっというまに一時間がたっていた。

 後半戦は"反町鬼郎"。シャープなリフがびしびし決まる。休憩後の音のつやは、明らかに変わってた。誰ものソロが手癖じゃなく、アイディアを意識したものに。
 やはりキーは片山か。長尺ソロを吹かせながら、次々別のメンバーへソロを促す。並行ソロの演出が目立った。
 エレキベースへ持ち替えた不破は、後ろできっちり睨みを効かす。
 片山のサインとあわせ、腕を降ってステージをまとめた。

 "反町鬼郎"のエンディングから間をおかず、不破がベースのリフ。"サリー"だ。
 ぐるっとソロ回しがあったのはここだったろうか。
 辰巳から順に、ホーン隊全員がソロを繋いだ。中島のソロをまたぎ、ドラム・ソロへ。
 倉持はタム回しをときにラッシュさせ、パワフルに叩きのめす。
 変拍子やポリリズムを使わず、強弱とタイミングだけでソロを聴かせた。
 
 その次が不破のソロかな。ドラム・ソロを聴きながら、入るタイミングを伺う。
 アイコンタクトが飛び交い、苦笑しながらソロを受け取った。
 ぐいっとつまみをひねって、おもいっきり歪んだ音が飛び出す。
 思うさまディストーションをかけた。
 チョーキングも挿入するエレキギターみたいなソロで空気をびしっと引き締める。すごい。不破のああいうソロ、初めて聴いた。

 "ナーダム"に雪崩れる。ゆったりイントロから、インテンポへ。
 ライティングが派手に瞬き、きらびやかに映えた。
 シモが再び現れる。完全白塗りだった前半に対し、腰に布を巻いて顔に隈取りを施した。
 下手の客席で、したたかに踊り続ける。

 片山が辰巳や立花、川口らを次々ソロへ投入。個々の音がまったく分からぬほどに、濃密な並行ソロが響き渡る。
 曲にあわせて体を揺らしてた小森もソロへ。そして、片山も。
 頭上のビデオは輪郭だけを抜き出した画像処理で、シモやメンバーの姿を映した。

 「最後の曲の前に・・・メンバー紹介を」
 この日は幾度かメンバーが紹介される。そのたびに、毎回違ったポーズでキュートに挨拶した、小森の姿が印象に残る。
 「"P-chan"ね」
 不破の選曲に、なぜかメンバーがてんでにふきだし、ほのぼのした空気になった。
 
 ドラムとパーカッションのデュオがあったのはここ?
 ステージ下手奥で隠れ気味な関根だったが、シャープなビートを倉地と競って打ち鳴らした。

 この曲に限らず、小森も次々ふくよかなアドリブをかました。
 室舘もフルートのソロを披露。曲によってはユニゾンでテーマを歌ったようだが、ぼくの位置ではほとんど聴こえず残念。

 "P-chan"の終盤はブレイクし、片山ソロの独壇場に。
 「もうネタが無いな・・・」
 ぼやきながら、スタンダードとおぼしきメロディを次々吹く。
 唐突にクリスマス・ソングが始まり、バンドの幾人かが加わるシーンまで。
 最後はいきなりバンドのテーマとなった。
 各自が自由に吹いてるから、最初はわやくちゃ。次第にテーマのメロディが浮かび上がる姿が心地よい。

 そして最後は"千頭"。ライトがまばゆく、めまぐるしく変わる。
 テーマをもろもろに丸めながら、猛進した。

 曲によって、ソロの切り替わりと同時にテンポや風景もガラガラ変わる。
 並行ソロもこのくらいの規模だと、たいがいは聴き分け可能だ。
 時にコール&レスポンス、時にはフリーでてんでに吹きあう効果も楽しい。
 ぐいぐいテンションも上がり、濃密にまとまったアンサンブルを、どっぷり堪能できた夜だった。

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