LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/9/17 渋谷 CLUB QUATTRO
〜MEKANIK DESTRUKTIW
KONZTRUKZIOHN!〜
出演:MAGMA
3度目の来日公演、最終日。この日はライブが色々かぶってて、どれに行くかすさまじく迷った。結局このあと一番、見る機会が少なそうなバンドを選ぶ。次の来日、あるのやら。
でも、はじめに断っておきます。ぼく、マグマは何枚かCD聴いた程度。今回の曲もなにをやったかさっぱり分からないし、メンバー名すらあやふや。つまりシロートの感想です。
聴きながらずっと考えてた。イントロが始まると、声援が上がるからね。
ライブって、バンドの音楽を知らずに聴きに来ちゃいけないのか。つねに予習をしとくべきか。一期一会な即興演奏のライブに、すっかり慣れてたから、よけいしみじみ考えた。マニアが多いバンドだしね、マグマは。難しい。
SmashのHPによれば、本来3夜に分けるライブ構成を、2夜に再構成したのが今回のツアーだそう。
第1夜 ピアノと声だけの編成---「GENESIS」(マグマの心臓部)。
第2夜 リズム隊による編成:ギター、ピアノ、ベース、ドラムス---「EXODUS」(マグマの骨格)。
第3夜 完全な編成----「REVELATION」(マグマとしてのアンサンブル)。
東京では前日が第3夜のアレンジ版「MAGMA Kohntarkosz
Anteria」、今日が1夜と2夜のアレンジ版「MEKANIK DESTRUKTIW KONZTRUKZIOHN!」。
Part 1: Kosmik
Wokehl
Part 2: Perkutehr Slakehnzain
の2部構成となった。
観客はクアトロがみっちり埋まる。フロアは当然スタンディング。開始が押さなくて助かった。
ステージ中央にスタンドマイクが5本。どんな演出か知らなくて、冒頭からヴァンデの前に、ボーカル5人が立つアレンジかと戸惑った。ヴァンデのドラム、せっかくだからじっくり見たいもの。もちろん杞憂でした。
客電が落ち、メンバーが静かにステージへ登場する。グランドピアノに一人座り、女性三人に男性二人の人がマイクの前へ立つ。そのうち二人はクリスチャンとステラ・ヴァンデ。
最後にクリスチャンが登場した。胸にマグマのペンダントが光る。
グランドピアノがシンプルに響く。五人は、ぴたり足並み揃えて歌いだした。
余談だが彼は演奏中、幾度も胸のペンダントを握りしめていた。キリスト教徒のロザリオを、単純に投影するのは早計だろう。しかしストイックな1部の演奏を聴きながら、賛美歌文化が根付いた上でのサウンドなのかな、と幾度も思った。
前半はピアノの伴奏だけで、延々と5人が歌いまくる。
アレンジは声域の違いこそあれ、基本はユニゾン。ピアノもアドリブ無しで、音楽をそのままなぞる。本来なら、かなり退屈なアレンジ。
しかしドライブするピアノと、ボーカルのかっちりしたスリルに、約一時間ぶっ続けの構成にもかかわらず、ぐいぐい惹かれた。
変拍子のリフを、譜面無しでぴしりと4人は揃い歌った。クリスチャンがちょっと引き気味か。
若干の掛け合いもあったが、直立して淡々と歌い続ける。
ダークな色合いは控えめ。ライティングも効果的だった。
場面転換でキューを出し合うそぶりもなし。全て暗譜みたい。
アドリブっぽい場面が、ほとんどないのが惜しかった。
ステラやクリスチャンは、手にパーカッションを持ってときおり鳴らす。
クリスチャンのリズム感が肝。さりげなく震わす、タンバリンのタイミングがみごと。
ステージがまばゆく照らされ、大団円のハーモニーに。まず30分、一気に進む。
いったん4人が下がり。クリスチャンのソロ・ボーカルになった。
ステージが進むにつれ、尻上りに声が出る。
首を左右へ鋭く振り、めまいのように視線を宙へ泳がす。
その仕草を歌のときも、第二部でも、しきりに繰り返してた。
ひとしきりクリスチャンが歌う。そっとマイク前へ戻る4人。フレーズがすぱっと切り替わり、5人で突き進む瞬間の凄みにぞくっとくる。
かっちり構築された凄みが素晴らしかった。
第一部が終わると、観客が大歓声を送る。
「マグマのエッセンスよ。クリスチャンがピアノで作曲して、歌った。
・・・これが、始まりだったの」
ステラがさりげなく語る。
セットチェンジでしばらくの休憩。
後半はキーボード二人、ギターとベースにドラムの編成だった。
よく見えなかったが、クリスチャンは1タムに1スネア、2フロアタムのシンプルな構成だったようす。
ライド一枚に、セット前面にたかだかとクラッシュ・シンバルを4枚も掲げる。内1枚はリベット入り。しゃらしゃら言う余韻がきれい。
ハイハットは始終スパスパ踏み続けてた。
後半セットは静か目な場面が多い。全部で2〜3曲かな。ヴァンデの手数も思ったより少なかった。
ソロパートはあるが、きっちりアレンジされている。
場面ごとにキーボードやギター、ベースのソロがたっぷり織り込まれるアレンジ。クリスチャンのソロは無かった。
ベースを特に前面に出すアレンジ。ファズを軽くかけ、高音域部を多用し、ぶいぶい早いパッセージを弾く。
とたんにかなりの低音成分をPAで出す。音圧で体が震えた。
演奏の切れ目、イントロだけで観客から大きな声援が飛ぶ。有名な曲なのかな。
アップテンポでぐいぐい押すあたり、かなりの迫力。好みでいうなら、やはり1部のボーカルの方に軍配を上げる。
2部はシンプルなアンサンブルと思った。右側にいたキーボードとベースの演奏の存在感が際立つ。
アンコールではクリスチャンと、その二人がまず登場した。
シンプルをバッキングで、ボーカルをたんまりとクリスチャンは披露した。
ドラムセットではなく、ステージ前に立つ。スタンドマイクへ両手を様々に広げ、首を鋭く振り、朗々と声を響かせる。
アンコールだけど、演奏的には今日のクライマックスだった。
こめかみへ手をやり、相当苦しみながらファルセットを次々搾り出す。
やがて、ハンドマイクを持ったステラら4人がそっと登場。
コーラスでびしりと切り込んだ。
ギターともう一人のキーボードも登場し、ヴァンデは歌いまくる。ドラムは叩かず。圧巻だった。
歓声は延々続き、クリスチャンは「Thank
you.アリガト」と一言挨拶。
ゆっくりとステージから去った。
ステージの明かりが消えてゆく。
最後は紫色の明かりが数本残る。そっと、ドラム・セットを照らした。