LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/8/10 浅草 アサヒ・アートスクエア
出演:Bondagefruit +
Yae
(鬼怒無月:g、勝井祐二:vln、大坪寛彦:b、高良久美子:per、岡部洋一:per)with Yae
(vo)
ボンデージ・フルーツのライブは、ずいぶん行きそびれてた。02年の末ぶりに聴く。
会場のアートスクエアの中はひろびろ。机が変形で、いったん入り込むと出づらい。しかし椅子がばっちり。気持ちいい。前へぐっとリクライニングして、心地よかった。
ボンフルのワンマンに、Yaeがゲストで参加する。
開演時間が6時半だから、三時間コースの長尺と期待したが・・・各セット1時間、2ndにYaeが加わる構成だった。
<Set
list (1st)>
1.Three Voices
2.I/O
3.Rath
4.Dear
Gazelle
ボンフル単独でのリストはこんな感じ。CDのタイムからそれぞれ数分程度、引き伸ばして演奏された。
中央にYaeのスペースを確保したため、鬼怒無月と勝井祐二がぐーんと離れる。
岡部洋一のセットはバスドラが無く、左右にジャンベやアフリカ(?)の太鼓などをセッティング。高良久美子は中央へマリンバを置き、横へ小物やパーカッション類を並べた。
久々だから以前と比較しづらいが・・・1時間を有効に使うためか、さくさく進行だった。
MCも鬼怒の曲紹介のみ。演奏もぐっとコンパクトなイメージだ。
(1)では静かなギターの爪弾きがイントロ。ゆらぎながらバンドの音が加わっていゆく。
全員揃って、がつんと前へ突き進む瞬間がかっこよかった。
鬼怒がいっぱいソロを取ってくれて嬉しい。
エンディングも静かなリフが再登場。ゆっくりフェイドアウトし、一人、また一人、音を止めてゆく。
最後に残ったのは鬼怒のみ。
ギターの音が絞られ、消えていった。しかし鬼怒はしばし指だけを動かしていた。
この日のPAは、かなりいじって聴こえた。冒頭がエコーをずんと効かせ、次第にドライな音へまとめてく。
エレキギターのファズが痩せてると思ったが、これも途中で気にならなくなった。
楽器バランスも最初はソロ中心で戸惑ったが、演奏最後にはころっとまとまった響きに。つまり冒頭の音はそうとう違和感を覚えた。
2曲目は高速アコギ・リフのコンパクトなつくり。猛スピードなリフが軽々と跳ねた。
バスドラ無しでハイハットを叩く岡部のリズムが、はたくように決まる。タイトな刻みじゃない。柔軟なビートの操りが粘っこく膨らむ。
PAのせいか、低音は過不足なし。大坪寛彦のエレキ・ウッドベースはしっかりと底から支えた。
アンサンブルでもっとも好みは(3)。たぶんぼくはボンフルに、くっきりした編曲より混沌なインプロを求めてるんだろう。
これは曲自体もあいまいなテーマだし、ステージではより即興要素強く、音がむずむずと展開した。
今夜は鬼怒と勝井のフロントへまず意識が行く。次に岡部。思ったより大坪や高良が前面で暴れるシーンが少なかった。
ソロも鬼怒が弾きまくり。よりリーダーらしいアレンジに変わってた。CDとは大きな印象の違いは無い。もちろんライブのほうが自由度高いが。
最後に(4)をさくっと決め、ボンフルはステージを去った。
以前見たときの重苦しさがきれいに消え、爽やかな印象すら残った。しかし1時間はあっけない。MCないからなおさら。
もっといっぱい、聴きたいなあ。
後半はまず、ボンフルのメンバーがステージへスタンバイ。一呼吸置いて、Yaeが登場した。
こっちはMCで曲紹介したが、メモ取りそびれたのでセットリストは割愛させてください。
冒頭はアコギを構えた鬼怒をイントロに静かな展開。
スキャットをYaeは載せる。曲紹介なかったが、Yaeの"ながれうた"だろうか?
作曲者の鬼怒がいつもの思いつきな喋りで、「作曲した10年前から、Yaeさんに歌って欲しいと思ってた」と言う。やんわりとYaeがつっこんでいた。
しかし2ndセットも、喋りはあまり無い。ボンフルって喋らなくなったのかな。音楽と落差の激しい、勝井と鬼怒の掛け合いも好きだったのに。
Yaeが教わった曲という"ジャコ"。これがボンフル+Yaeの組み合わせでは、ベストだった。あとでやった、新曲を除いて。
これはYae寄り。したがってボーカルもいきいき弾む。
スペインに伝わる古い曲らしい。ボンフルがみごとにアレンジし、大陸風の雄大な風景を作った。
間奏ではパーカッションを手に乗せながら、Yaeが優雅に身体を揺らす。キュートで素敵な光景だった。
次がボンフルの"Locomotive"かな?前置き無しに鬼怒がエレアコを、ボトルネックで強烈に弾いた。
曲は以前よりコンパクトにまとまった。
Yaeはテーマでスキャットをかぶせた。しかしPAがボーカルを絞ったか、さっぱり聴こえない。1st時代を思わせるトリッキーな展開を期待したのに、もどかしいまま終わって残念。
一度だけMCが長めに入る。新曲のエピソードを熱っぽく鬼怒が語った。
しかし「これを演奏するのは、次の次です」と落とす。次の曲じゃないのか、あそこまで喋っといて。
Yaeは初めて聴いたが、チラシによれば加藤登紀子の次女だそう。父親のほうで育ったみたい。だから千葉で有機農園を続けてるようだ。
新曲は鬼怒とYaeの共作。作曲が一段落ついたら、いきなり鬼怒がYaeの自宅へ行って完成させたという。
「そこに蛍がいたんです!・・・蛍って知ってますか?」
客席へ熱っぽく語って、笑いを呼ぶ鬼怒。
チューニング前に勝井が鬼怒へ尋ねる。
「なら"蛍"ってタイトルは考えなかったの?」
「考えたよ。・・・でも、そんなヤツとバンドやりたい?」
冷静に返してて、面白かった。
ともあれこれは次の次の曲の話。前に一曲挟んだ。ハワイで録音時の曲をやったかな?
のんびりしたムードで、勝井がアコースティック・タッチなソロを取ったと思う。なおこの日は複数の五弦e-vlnを持ち込み、曲ごとに持ち替えた。
1曲だけかがんでエフェクタをいじったが、あとは素直にバイオリンを弾く。
そして最後の曲。タイトルは"Yae
1"。ほんとに仮題だな。
6/8を基本に、フレーズの最後で5拍子で締めて聴こえた。
リズミカルに乗せつつ、どっかでノリにズレがあり。けれども根本は滑らか。リズムはとても自然に流れた。
途中のアドリブは4拍子にも変わってた。勝井がバイオリンを弾き倒す。
牧歌的な明るさがYaeの影響か。充実した新曲だった。
後半も1時間くらい。アンコールは1stから"飛行する子"。なつかしい。
アコギをイントロに置き、おっとりした演奏にからりと変わる。オリジナルのトリッキーさはぐっと抑えられた。
コーラスで大坪もハミングするシーンあり。それで彼にボーカル・マイクが立ってたのか。それまで一言も喋らなかったので、マイクの理由が不思議だったんだ。
アンコールを入れれば2時間強。しかし物足りなさが残る。もっともっと聴きたいよ。
ツアーを重ねて音が締まってるボンフルは、さらにアンサンブルが締まってロックなムードを醸し出した。
新曲連発でおそろしくクリエイティヴな方向へも、まだ向かうんだろう。今後がますます楽しみ。