LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2005/8/7  初台 Doors

出演:高円寺百景
(吉田達也:vo,ds、坂元健吾:b,cho、金澤美也子:key,cho、山本響子:vo、小森慶子:ss,cl)

 4th"Angherr Shisspa"のレコ発ライブ。
 メンバーが良く変わる高円寺百景だが、小森慶子が加わるのは意外だった。
 この顔ぶれでのライブは2回目だが、前回見逃したので初体験。

 高円寺百景を聴くのは03年9月の「変拍子で踊ろうNo.9」ぶり。前回は位置が悪く、女性メンバーがまったく見えなかった。だから今回こそは、と気合入れていく。
 
ところが道に迷うわ、ドアーズはフル・スタンディングでぎっしり満員だわ・・・。へとへと。体力落ちたなあ。

 入り口で新譜を売ってたが、吉田が準備したのは30枚程度らしい。早々に売り切れたそう。
 立ちづめでぼんやり待つのはつらい・・・開演時間を回ってもしばらく始まらず、少々しんどかった。

 ステージへメンバーがそろい、視線を合わせる。
 音が出たとたん、ライトがばっと輝く。明るく、メンバーを照らした。

 1stセットが旧譜から、2ndが新譜からの曲構成。
 全員が暗譜でびしばし変拍子を決める構成はたまげた。
 ルインズで見る、曲目メモも吉田は使わない。すさまじいリハーサルをやってそう。
 曲間で吉田達也がマメに曲紹介してたが、メモを取る気力が無かったので今回はセットリストをパスさせてください。

 ギターからサックスに変わってインプロ場面が多くなるかと思った。が、吉田のコンセプトにぶれは無い。
 むろんアドリブもあるが、ユニゾンを多用するきっちりしたアレンジだった。

 最初はPAのバランスがぼくの位置ではよくなかった。サックスがこもり気味で、金澤のシャウトも聴こえづらい。
 ドラムとキーボード、山本のオペラ・ボイスのみが、ガンガン響く。次第に改善はされたけど。

 そのせいか、1stセットは物足りなさを感じる部分も正直あった。
 小森はステージを通して(1曲を除き)ソプラノ・サックスのみを使用。音程がキーボードやボーカルとかぶり気味で、ほとんど目立たない。
 いっそテナーくらいまで音域を落としたほうが面白そう。

 旧譜のアンサンブルは小森の加入を踏まえ、アレンジを変えている。
 サックスの単独フレーズからキーボードへ受け継ぐなど、工夫をしていた。
 しかし2ndセットの充実ぶりを見ると、まだアレンジを煮詰める余地はありそう。

 数曲はメドレーで演奏された。好きな"RISSENDDO RRAIMB"がさらりとメドレーに組み込まれて残念。
 坂元が東京へ戻ってきたことで活動を増やし、今後は旧譜の曲もさらにアレンジを変えて演奏して欲しい。

 しかしステージがすごく華やか。女性三人がそれぞれに魅力を振りまき、暗黒プログレな音楽と対極的なステージングだった。
 ライティングもシンプルながら、曲のキメをきっちり踏まえた素早い切り替えがかっこいい。
 スモークがうっすら漂うステージを、場面展開を逃さぬめまぐるしい光のプランで盛り立てた。

 ベルカントで歌う山本は、ステージングはおとなしめ。
 時に身体を揺らしつつハンドマイクで歌うシーンがあっても、基本は穏やかに背筋を伸ばしてた。

 いっちばん凄かったのが金澤。裸足でがっしり踏ん張り、青筋立ててシャウトしまくり。
 キーボードを操り、パワフルに吼える姿が勇ましく、とてもいかしてた。だからこそPAバランスで声が聴こえづらいのが惜しい・・・。
 吉田も手数は多いが、それより派手に体力を使ってそう。
 一曲終わるたび、丁寧にストレッチをしてた金澤の姿が印象に残る。

 吉田は中央後方に位置した。ステージを広々使ったので吉田の前には誰も立たず、叩く姿がよく見えた。
 2タムにハイピッチのサブ・スネアをハイハットの奥へ置く。さらにフロア・タムも2個。
 ピッチをそれぞれ変え、メロディアスなリフを叩きわけた。

 キーボードとユニゾンで平然と叩きのめす。ときおりソロで突き進む姿も。
 けれど基本はアンサンブルを重視。吉田がビートの芯ではあるものの、過剰に前面へ出ない。
 PAバランスで一番聴こえたのが、やっぱりキーボードと山本のボーカルかな。
 前半セットでは途中でスティックをへし折ってしまう。かまわずそのまま叩きかけたが、さすがにすぐに持ち換えていた。

 50分弱くらいで1stセットが終わる。けっこう短め。
 ただし体力的にしんどいので、この長さが嬉しい。・・・ああ、書いてて情けない。

 20分くらいの休憩で、再びメンバーがステージへ現れた。
 いっきに音へ色気が増す。アンサンブルは明らかに締まってた。
 テンションはそのままに突き進む。
 
 中盤で坂元の曲から"RATTIMS FRIEZZ"から金澤の曲"GRAHBEM JORGAZ"に繋げた。
 たしか"RATTIMS FRIEZZ"ではサックスとピアノ音源のアンサンブルに、吉田が低くボイスを入れる。
 ここですぱっとミラーボールが回った。細い光の線がぐるりと客席を刺す。
 ベースの高音部分を歪ませ、ギターソロっぽく坂元が暴れたのも"RATTIMS FRIEZZ"だったか。

 後半でも小森は基本的にソプラノ・サックスを使用。
 途中でベルにくくったマイクに不具合生じたか、かがんでセッティングと格闘する。
 一曲だけクラリネットも吹いた。後半はPAバランスも好転し、ぐっと彼女の吹く音がよく聴こえた。

 彼女は目を閉じて、真剣に吹くスタイルを押し通す。
 しかし6/4+5/4拍子のリフでバルカン風に盛り上がる"MIBINGVAHRE"では、山本とあわせにこやかに身体を揺らしてた。

 "TZIIDALL RASZHISST"が良かった。
 山本のボーカルはきっちり3度の音程を踏まえて上下降する。
 ゆっくり浮かぶ小森のサックスは屈んだ姿で吹きはじめて、そのままじわっと身体を起こす。
 ダイナミクスをマイクとの位置関係で表現する姿が、いかにもライブらしい。優雅だった。

 2ndセットでアルバムからの曲は、おそらく全て演奏。
 「最後の曲はアルバムでも最後に入ってる曲です」
 吉田の曲紹介で"WAMMILICA IFFIROM"へ。
 山本のボーカルはファルセットから普通の声へ、三度進行で下降しながら切り替える。声が変わる瞬間のスリルが気になって、ずっと彼女を見てた。
 
 後半は1時間ちょい。アンコールの拍手は当然、飛ぶ。
 たいして待たせもせず、すぐにメンバーが現れた。
 「短めの曲をやります」
 と、2ndから"PAMILLAZE"を。さすがに演奏をCDと合わせてたか、覚えてません。

 山本はなぜかこの曲だけ、譜面を見ながら歌ってた。アンコールを想定してなかったのかな。 
 フリージャズ風に即興を各メンバーが繰り広げ、さくっと演奏終了。
 どかんと展開を期待したが、そのままステージを去ってしまった。

 いったん2回目のアンコールを求める拍手もあったが、客電もついてしまう。
 フルスタンディングで個人的にはへとへとだが、ステージのボリュームは凝縮されていたと思う。
 まさにCD発売に視点を合わせてた、お披露目ライブだった。

 小森の演奏はアレンジ面でもステージングでも、まだ遠慮がちに見えた。もっと派手に吹いて欲しい。
 アンサンブルがもっとこなれ、今のメンバーではじけたときの破壊力は凄まじそう。今後、バンドのさらなる深化が楽しみ。

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