LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/7/9  国立 No Trunks  

出演:片山+林+つの犬
 (片山広明:ts、林栄一:as、つの犬:ds)

 もともと渋さチビズとして企画されたが、不破大輔が体調不良で急遽欠席。三人によるライブへ変更になった。客席は、びっしり立ち見が出る大盛況だった。
 司会役は片山がつとめる。開演前に客席へ残念なニュースとして、不破の欠席を告げた。
 「そして嬉しいニュースとして・・・復帰しました。林栄一です」
 にっこり微笑む林。今日が退院後、初ライブのようだ。
 
 いきなり林と片山がサックスを吹く。完全即興からライブが始まった。
 つの犬はタム二つにスネアまで二つ使うセットだった。音量は控えめに叩いてた。
 冒頭はスティックを使わず、手のひらでタムを叩く。拝みこむようにタムへ頭を寄せた。

 前半の林は鋭いフレーズを多用し、ぎしぎしアルトを軋ませた。
 さえずるようなフラジオを出さない。入院して音が変わったかな・・・と早合点したが、リードの調子も影響してたようす。
 休憩時間にリードを交換、後半では滑らかなフレーズを多発させた。

 いずれにせよ前半では緊迫したアルトの印象が強い。演奏の展開は片山に舵取りを任せ、自由にサックスを吹いていた。
 片山はさりげなく林のソロを演出し、ドラム・ソロへ誘導する。
 根本は気心知れているのか、アイ・コンタクトもほとんどない。

 しばらく即興をやったあと、片山がテーマを提示。林がかぶせてアンサンブルを作った。
 「おじいさんの古時計」を連想させる旋律だった。これはジャズのスタンダードかな?曲名は分からず。

 林のソロへ雪崩れたとき、片山が入り口のほうへ視線を投げる。どうやら観客が入るチャンスを伺ってたようだ。
 入店を視線で促すが、どうやら観客が遠慮してるみたい。
 それ以上はかまわず、片山は演奏に集中した。待ってる観客は、曲間での入店を計ってたんだろう。
 ところが1stセットはそのままノンストップ。40分ほどメドレーで吹ききった。

 林が奔放にアルトを軋ませ、つの犬も刻みはほとんど無し。
 片山も即興で吹きまくる。しかしとっちらからない。全員が根本のところでサウンドを成立させた。
 ずいぶんと片山が、バンド・リーダー的な気を使ってるのが分かる。
 フリーキーに吹きつつも、演奏が弛緩しないように林やつの犬のソロと、自らのアンサンブルを巧みに整理してた。

 数曲、テーマらしきメロディをサックス二本で吹くシーンも。
 ディキシーっぽい旋律だったが、一曲も曲名は分からず。ごめんなさい。
 たいがいは片山がテーマの切っ掛けを出していた。
 
 林のサックスはサブトーンをふんだんに響かせる。
 片山のサックスを受け入れて、素早く場面転換するスピード感はさすが。
 ぴたりと息のあったサックスが心地よかった。

 林はサックスの感触を確かめるような箇所も見受けられた。
 たとえば1st最後に循環呼吸でロングトーンを吹いたが、最初はじわりじわりと音を切る。
 やがて呼吸が滑らかさを増し、そのまま延々とアドリブを吹きまくった。

 最後は片山のめまぜでエンディングへ。びしりとコーダを決めて、一旦休憩に入った。

 後半セットの冒頭で、片山が司会としてメンバーを紹介する。
 三人とも古くからの知り合いだそう。林を紹介したあと、
「栄ちゃんの曲です。"ナーダム"」
 とたんに大きな拍手が沸いた。

 二人とも譜面無しでアップテンポに押す。
 わざとつの犬がノービートに叩き、容易にダンサブルへ持ち込ませなかった。
 "ナーダム"だけで30分近く吹いていた。

 しょっぱなは林のソロ。片山はあまりブロウを激しくせず、丁寧にソロを取る。
 くるくると林と片山でソロを交換してはテーマをにおわせ、またアドリブへ戻ってく。
 小編成だからこその自由度溢れる演奏だった。
 最後は片山の合図で4拍子に変化。つの犬と拍の頭をずらし、奇妙な雰囲気で締めた。

 次は"Blue Monk"。片山の提案かな?
 つの犬は別に4ビートを刻まないのに、世界はぐっとジャズへシフトした。
 モンクのこの曲、片山のライブで何度か聴いた記憶ある。

 つの犬は冒頭、ブラシで演奏した。途中のソロもブラシで激しく叩きのめす。
 スティックのようにブラシで鋭く連打し、空間を埋め尽くす。
 打点を低くして素早くタム間を移動、めまぐるしくリズムをばら撒いた。
 ソロのあとは、わずかに4ビートも提示した。
 その後にブラシからスティックへ持ち替える。このときに片手で二本スティックを持ち、もう片手はマレット二本持ち。
 シンバルを挟み込むように鳴らし、ヴァイブを叩くように二本持ちスティックでタム回しも披露した。

 林は前述の通り、後半ではすっかり滑らかなトーンを取り戻し、とびきりのアドリブを存分に溢れさせた。
 ふとアルトサックスを置き、片山の背後へ回る。
 後ろから抱きつき、二人羽織サックスを始めた。マウスピースを加えたまま、にんまり笑う片山。
 そのまま片山はソロを吹ききった。
 
 これも15分くらいの演奏。メンバー紹介後、最後は"ダイナ"を吹いた。
 そのまに投げ銭の袋が回る。
 
 アンコールはなし、と片山が告げても拍手はやまない。
 「ソロの即興でやる?」
 と、林へ提案した。アルトをくわえた林は、しばしのソロ。やがて"My one and only love"のテーマが登場した。

 ロマンティックなメロディをゆったり吹く。
 しばし林のサックスを聴いたあと、片山が身体を大きく曲げてオブリを入れた。
 ぴたり同じタイミングで、つの犬もシンバルを軽く鳴らす。さすがのアレンジだ。

 そうとうにフリーな演奏だし、リズムも一筋縄ではいかない。
 しかしふんだんにジャズの香りは漂う。そんなライブだった。

 ハプニングによる変則編成となったが、これもまた良し。
  でも、林が加わるチビズってのはあまり印象ないので、ぜひあらためてチビズでの演奏を聴いてみたい。

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