LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/7/3  高田馬場 茶箱   

出演:川下+不破+岡村
 (川下直広:ts,harm、不破大輔:b、岡村太:ds)

 店内は何だか広々。前回来たときと、レイアウト変えていた。
 机を取っ払っい、スピーカーやステージの位置もずらしてる。キャパを多くできるようにしたのかな。
 ソニー・シャーロックのCDがBGMで響いてた。岡村太が買ってきたそう。

 川下はテナーとハーモニカを演奏、不破もウッドベースのみと、シンプルな編成。
 床へスティックをガムテープで貼り付け、バスドラが歩かないよう押さえてるのが、なんだか面白かった。
 演奏前に不破はクリームをベースの指板の後ろへ塗る。あれはなんだろ。滑り止め・・・でもなさそう。

 テナーサックスが無伴奏でイントロを吹く。
 ドラムとベースがおもむろに加わり・・・いきなりトップギアで疾走した。
 今夜のセットリストはパスです。耳馴染みあるものの、曲名が分からない。ごめんなさい。一曲目が"ヨーロピアンズ"かなあ?

 岡村はシンバルを控えめに、タム群を連打。ジャングル・ビートで二人を煽る。
 つぎつぎと果てしなく、テナーサックスからメロディがあふれ出す。このサックスが好きなんだ。
 川下は循環呼吸もときおり織り込み、ひたむきにサックスをふきまくった。
 むろん不破も容赦なし。初手から激しい指使いで、怒涛のグルーヴを提示する。
 
 とにかくベースとドラムのアンサンブルが気持ちいい。胸元をわしづかみにして引きずり回されるようだ。
 今夜はベース以外は生音だった。ところがドラム寄りの位置で聴いてると、ベースが隠れるくらいの音量。
 それほど、ドラムの音がでかい。

 ドラムの素朴な響きは楽器とハコの音場特性の、どっちだろ。
 重心軽くストレートに鳴って、あまり余韻を残さない。
 ラテンの要素を思わせるビートだった。手数の多さと重心の軽さが、パーカッションのように聴こえた。
 
 いつしか奏者の額に汗がふきだす。心なしか室温も上がったような。
 岡村は叩いてる手を休めずに、腕で額の汗をぬぐう。
 
 不破がチラッとドラムへ視線を投げた。とたん、川下がテーマへ雪崩れる。
 サックスはベースを見てるそぶり無かったのに。すごいな。

 しょっぱなから20分近く吹いていた。
 続いてもアップテンポ。たぶん、コルトレーンの「至上の愛」第二楽章だ。フェダイン時代から馴染みのレパートリーだが、勇ましくて好き。
 ハイテンションの三位一体を聴かせた。
 不破のベースが激しく暴れる。猛烈な右手のフレーズと同時に、左手で弦をスラップさせ、荒々しく低音を操った。
 
 川下のハーモニカ・ソロが入ったのもこの曲だったか。
 サックスがたんまりソロを吹いたあと、すっと横へずれてドラムのソロへ。
 岡村がストレートな連打で応じる。
 ドラミングもさることながら、不破のバッキングがいかしてた。
 ウッドベースでリフを提示し、ドラムをあおる。フレーズは弾かない。あくまでリフのみ。
 指をスライドして音程を変えるだけの、リフ攻撃でドラムを盛り立てた。
 前半最後の曲は聴いたことあるかすら、あいまい。ちょっと凝ったメロディラインだった。
 イントロは完全フリー。ドラムとベースのアンサンブルが小節感をあいまいにぼやかし、ノリの落としどころを探り合う。
 川下がテーマの断片を挿入。次第に寄り添い、曲のピントをあわせる。

 テンポを落として一息ついたテンションながら、これもグルーヴたんまりだった。
 とうとう前半はベースのソロが無し。
 もっとも不破はサックス・ソロの裏で、自在にフレーズを変化させ、単調さはかけらもない。
 テーマへ戻った瞬間、いきなりぐいぐいと後ろからサックスをあおる。ベースでさすがの凄みを見せた。

 休憩の間に、「暑い〜」と奏者のぼやきを受けて、室温が下げられた。
 「そろそろやろうか」
 不破が二人へ声をかけ、ウッドベースを持って椅子へ腰掛けた。
 ハーモニカをいじってた川下は、すっと立ち上がってステージ中央へ。

 無造作に吹く音が、やがてイントロへ変わった。
 やがてポケットへハーモニカを押し込み、テナーに持ちかえる。
 テナーの太い音で、みるみるアドリブが溢れた。

 聴き覚えある欧州風味のメロディ・・・これが"ヨーロピアンズ"かな? 
 セットの終わりでメンバー紹介するくらいで、MCはまったくなし。
 曲順は事前に決まってるのかもしれないが、川下がその場で決めてるようにも見える・・・。
 セットリストを知りたいなあ。もっとも、どの曲もCD化されてないか。

 室温が下がったのに、演奏もクールな雰囲気で幕を開ける。
 前半は全てスティックで通した岡村だが、この曲の冒頭はブラシを使った。マレットも準備してたが、使ったかな?

 はじめてのベース・ソロも挿入された。
 音程を変えて押すリフ攻撃と、得意のマシンガン・フレーズと両方が聴けて嬉しい。不破はぞんぶんにベースを唸らせた。

 そのままメドレーで2曲目へ。
 これは川下のライブで幾度か聴いたが、曲名分からず。ごめん。
 アップテンポに押せる曲だが、比較的穏やかなテンションだった。

 ドラム・ソロに唸った。タムの連打が基調ながら、リズムが歌ってる。
 音量もアクセントも特に凝ってない。なのに、まったく弛緩せずに最後まで聴かせた。すごい。 

 パワフルなドラム・ソロの最中、川下は椅子に腰掛ける。
 すっと足を伸ばし、さりげなくバスドラが動かないよう押さえてた。

 不破はタバコへ火をつける。強く煙を吹き出した。
 ウッドベースの肩に煙があたり、ふわりと宙へ広がった。

 今夜のライブの圧巻は、最後の曲だった。
 イントロはフリー。岡村はタムの上でスティックをスライドさせたり、フロアでタイミングを抜いたビートを叩いたり。

 やがてテーマへ。聴き覚えあるも、曲名不明。
 ドラムは完全にエイト・ビート。ジャズじゃなく、ロックンロールだった。
  
 後半では抑えたテンションを、爆発させる。川下はテナーを振り回し、激しくメロディを叩きつける。
 みごとなタイミングでスネアがぴしりと鳴り、不破がドラムへ視線を投げてにやりと笑った。

 怒涛の最後はドラムが大爆発。R&Bかな?
 打音が軽いので、なんだかサーフ・ロックを連想した。
 もっとも演奏はサーフ・ロックと違い、とんでもなくグルーヴィだけど。

 テナーとドラムのバトルが始まる。
 岡村はタムよ破けろ、シンバルよ割れろ、といわんばかりの轟音でめまぐるしく叩きのめした。にこにこ笑いながら。すっげえかっこいい。
 圧倒的なテンション。演奏終わったあと、「膝が痛え〜」と大笑いしてた。

 前回、このトリオを聴いたときはどうしても、フェダインを意識していた。レパートリーもかぶってるし。
 しかし別物のバンドだと、あらためて実感した。

 果てしなくアドリブが続くテナーと、それをがっちり支えつつ骨太のグルーヴを提示するベース。
 そこへ歌心あるパワフルなドラミングで、独自のバンド・サウンドを産み出す。
 次第に彼ら独自のレパートリーを増やして欲しい。
 観客数こそこじんまりしてたが、演奏は素晴らしく充実したライブだった。

 ・・・上で書いたことと矛盾するけれど。
 川下はバイオリンやソプラノを弾かないんだろうか。この顔ぶれでの海やTOKIを聴きたいよ。

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