LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

05/4/23   西荻窪 アケタの店

出演:早川岳晴 超セッション
 (早川岳晴:b、片山広明:ts、渡辺隆雄:tp、加藤崇之:g、田中栄二:ds)

 早川岳晴のセッションを久々に聴く。ぼくは聴き逃してるが、たまに植村昌広がドラムの、トリオ編成でもやってたはず。なお今夜は片山広明の名前が、当初アケタのスケジュールに記載無し。急遽出演が決まったの?
 ドラムはCoilつながりの田中栄二をブッキング。予想通り、バラードは皆無。とにかく轟音系で突き進んだ。終わったら耳鳴りしてたもの。

 客席は満員の盛況。パイプ椅子がずらっと並んだ。
 「早川って人気あるんだなー」
 アンコール前のMCで片山が、しみじみ笑ってたのが面白かった。
 
(セットリスト)
1.Traumanequo
2.いかれた地図
3.Worm hole
4.Caravan
 (休憩)
5.玄武
6.On a little boat to Aivalik
7.ケラケラ
8.Watermelon man
(アンコール)
9.Off the Door

 過去の自作レパートリーが中心。珍しい曲もあり。
 一曲目、ドラムのカウントからいきなり轟音が飛び出した。この店は轟音でも耳に優しい。響き方が違うのかな。
 だけど片山のサックスが聴こえづらいときには呆然とした。そんなに音でかいのか。

 (1)の"Traumanequo"はCO2の"zero"(1988)に収録。
 極太のファンクネスで、いきなり体が持ってかれた。
 でかい音とベース&ギターが産み出すグルーヴが、ストレートなドラミングとかち合って、微妙にポリリズムっぽい感触あり。

 田中は腰から上が泳ぐ、突っ込みドラミングで叩きのめした。
 ここではパーカッシブなビートが多い。手数多くフィルをひっきりなしに入れ、ぐいぐいあおった。

 ソロはテナーから渡辺隆雄のまっすぐなトランペットへ。
 切り替わった瞬間、早川がすっと音を止める。
 ドラムとギターのみをバックに、トランペットの響きがストレートに伝わった。
 ドラムはシンバルからカウベルへ切り替える。メリハリあるアレンジがかっこよかった。

 加藤崇之のギターは冴えまくり。ほとんどの場面はピックを使わず指で撫で弾きする。
 メロディアスなフレーズもばんばん出た。チョーキングもカッティングもすばらしい。
 目の前にエフェクターを幾つか並べ、時にはノイジーな音も飛び出した。
 ギター・ソロから短い早川のベース・ソロ。
 片山が頭を指差し、テーマへ飛ぶ。

 盛大な拍手のなか、すぐに早川は次の曲へ移った。
 (2)"いかれた地図"は、過去のセッションで聴き覚えあり。このあとのMCで曲の由縁を喋ってたが、覚えてないです。ごめん。
 ハイハットの上部分を取り外してチェックしてた田中は、上手いタイミングで音を立てて装着。きちんと音楽の一要素に仕立てた。

 ギターとベースのソロをじっくり聴けた。
 ベースソロの時に片山は腕を軽く振り、にんまり楽しそう。
 ぐっと一歩前へ出て、早川はソロを取った。

 曲紹介を兼ねたMCが軽く入る。
 「次の曲は"Worm hole"と言って、おれのバンド"HAYAKAWA"の元ネタになったアルバム"HAWAKAWA"に収録されてます。
 ・・・"HAYAKAWA"ってどっちみち、おれの苗字か」

 "Worm hole"はベースとドラムのコンビネーションが激しい曲。
 なお今夜の早川は四弦のエレベのみ。豪腕ぶりをたんまり披露した。

 片山も参加したくなったか。ドラムとベースの動きへ唐突にフラジオをぶつける。
 すかさず加藤も鋭い音で切り込んだ。
 とうとう全員で賑やかに盛りあがる。
 
 ラストは田中のシンバル連打。立ち上がってライドとクラッシュを激しく細かく叩いた。むろんバスドラを踏みながら。
 勢いあまってスティック飛ばすわ、ライドシンバルの留金具飛ばすわの熱演だった。

 テーマの繰り返しは「もう一度」と片山が指を一本。
 再びテーマへ戻る。爽快な演奏だった。  
 ラストでは、最後までギターのフレーズがディレイで残る。
 
 前半最後は、エリントンの"Caravan"。しばしば早川のセッションで選曲されてるような。
 イントロは田中のドラミング。おもいっきりエイトビートで叩くため、えらくパンキッシュな"Caravan"となった。
 イントロで加藤がテーマを律儀に演奏する。テーマはしっかり提示された。

 ここで初めて、ドラムの無伴奏ソロ。バッキングでのフリーキーさと対照的な、穏やかなタム回しが意外だった。
 早川や片山はピアノに寄りかかって聴く。二言三言、なにやら相談してた。
 おもむろにテナーを加える片山。フラジオでドラムをあおる。
 さらに加藤も参加。ドラムソロからトリオ編成に。
 渡辺がすっと立ち上がる。ベースも乗っかり、テーマへ雪崩れた。

 一旦休憩。やっぱり軽く耳鳴りしてるな。

 後半は"HAYAKAWA"(1996)に収録された"玄武"から。
 この曲はコ・プロデューサーとして、片山が録音に立ち会ったそう。
 「実際はほとんど、スタジオ向かいの焼き鳥屋にいた」
 早川は笑って紹介する。

 PAのバランスを変えたのか、なんだか聴きやすい音だった。
 むろん音は骨太。さらにソロ回しのあたりから、またもやボリュームが上がる。
 次第にテンポを上げて突き進んだ。
 
 今夜、若干スローテンポだった"On a little boat to Aivalik"。DUBの"D"(1986)に収録。
 「これ、もう手に入らないよな・・・」
 「新星堂に在庫あるだけかも」
 曲紹介のとき、早川と片山がぼやく。
 すかさず加藤が「おれ、LP持ってる」と言ったら、「なら、ギターにサインしてやろうか?」と早川がにやりとした。

 CDで聴けるハミングは、早川本人らしい。
 「バックコーラスがおれだ」
 とは、片山の弁。今回はテーマで、片山や渡辺がのんびり歌う。

 アフリカンのほのぼのビートで、ゆったり曲が流れた。
 イントロのドラムで手のひらを使ったのが、たしかこの曲。
 ギターのソロはアイディアたんまり。かちりと輪郭を固めた音色で、素早いメロディを転がしたのはここだったか。
 
 (7)の"ケラケラ"は生向委時代のレパートリー。
 今日のMCではそれぞれ作曲年度も喋ってた。メモって無く、詳細覚えてませんが。
 渡辺が入りを片山に尋ねる。譜面の一部を指差して、「こっちとこっち。えんえん繰り返すだけだよ」と、シンプルな説明が頼もしい。

 無造作なベースの無伴奏ソロがイントロだった。
 片山のソロがよかったなあ。単なるブロウでなく、細身のメロディが柔らかく歌う。
 ファンクでもジャズでもくくれない、身軽なタッチの曲にぴたりとはまってた。
 続く渡辺のソロも曲のイメージを膨らます。ギターのチョーキングもとびっきりだった。

 本編最後がハンコックの"Watermelon man"。意外な選曲だ。
 昨年末のアケタ・オールナイト・ジャムでも演奏してた。あのとき提案したのも、早川だった。
 渡辺もそのときこの曲を吹いてたっけ。

 あの時は深夜の唐突なジャムで、めろめろなところもあった気がする。
 今日はきっちりタイトに"Watermelon man"をキメた。二管のテーマは、最後でぐにゃっとテンポを崩す。
 片山がつっと加藤を指差し、ソロをうながした。
 
 加藤がブルージーにソロを披露し、スッと身体をねじる。素早くピックを掴み、高速フレーズをばら撒いた。
 そのままピックでシャープなカッティング。
 早川も負けずにぐいぐい押し倒すソロで、サウンドを持ち上げた。
 オーラスは"モーニン"の旋律。さわりをひとふし、早川がベースで奏でた。

 アンコールの"Off the Door"は"Kowloon"(2002)で再録されたが、元はDUBの曲だったという。
 怒涛のファンク・ジャズで大団円を迎えた。
 加藤はふたたびピックでソロを取る。がっちりアンサンブルがまとまった。

 今夜は早川の気心知れたメンバーを集めた編成。いきなりアンサンブルが成立する。
 片山も渡辺もひっきりなしにバックリフやカウンターでオブリをいれて、複雑なアレンジを構築した。
 そして田中のドラミングがジャズっぽさを打ち消し、早川が目指すであろうロックやファンクの味付けを増す。
 安定した演奏は、まるでバンドみたい。

 やたら濃密なひととき。2セットみっちり、2時間以上やってたのに。えらく時間が短く感じた。

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