LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
05/3/27 新宿 Pit-inn
出演:Oruqesta-Nudge!
Nudge!
(芳垣安洋,岡部洋一,高良久美子,山北健一,関根真理,坂田
学,Ryu-Dai,茶谷雅之,高田陽平,Taichi:Per)
芳垣安洋の率いるパーカッション・ユニット、Oruqesta-Nudge!
Nudge!は、ピットインに初出演らしい。聴くの初めて。
全員がドラムセットを叩かないにせよ、各種太鼓がステージ上へ所狭しと並ぶ。
もうちょいゆったり聴けるかと思いきや、超満員の盛況。立ち見がびっしり。すごいな。
20時15分くらいかな。客電が落ちる。
ひとり、またひとり。
楽屋から登場したメンバーが、手の小さなベルや鐘を鳴らしながらステージへ上がった。
音を出した後でゆっくりとベルを動かし、空気を揺らす姿も。
高良は弓弾きヴィブラフォンで、ぴいんと倍音を広げる。
1)テーマは各種キメがユニゾンで決まる、威勢のいい曲。構成はかなりしっかり決まってそう。
打つ手もそろえ気味に幾人ものメンバーが、ぴしりとそろえる。がんがんリズムを走らせるさまは、オレカマ状態で楽しい。
ダンサブルなリズムながら、どこか引っかかるビートだった。
スティール・ドラムや高良のヴィブラフォンがリフを繰り返す。ラテンアメリカをイメージしたそう。
芳垣の軽いMCを挟んで次の曲へ。ちなみに来月、レコーディングを控えてるそう。レーベルを持ってると、活動が早いなあ。
・・・ただしまだ、曲名をつけてないらしい。
2)ゆったりした6/8から5拍子っぽいリズムをはさみ、4拍子に切り替わる。
テンポは次第に速くなった。
ポリリズムっぽいシーンはあるものの、さほどリズム混交は見せない。この曲だけで、30分近くやっていたような。
3)7拍子のリフで刻む。この曲だったか記憶があやふやだが、リズムがクロスフェイドするシーンもあった。高良がミニマルなフレーズを刻む。
いわゆるソロ回しらしきシーンは無し。しかしここでは、芳垣と岡部のソロ。
ライブを通じて、さほど高良や関根は目立たず。岡部がステージの芯を努めていた。むろんリーダーの芳垣の次に。
前半は1時間弱。
メロディという取っ掛かりがなく、リズムに酩酊してきた。
後半ではメンバーが、三々五々登場。特に鳴り物の演出は無し。
4)ガムラン風に、メンバーが互いに同じリフを繰り返す。音像の輪郭はくっきりと。
イントロで岡部と芳垣が一弦のコラみたいな楽器をスティックで叩き、パーカッションとして使う光景も。
この曲が一番、ポリリズムっぽかった。
岡部がコンガを両手で、ひたすら頭打ちする姿がなんとも迫力あり。
芳垣は各人をときおり抜き出す。いわゆるDCPRGの"キャッチ・22"スタイル。
ドラム・セットに座ったメンバーは、タムを叩き分けてメロディアスなリフを作る。手前のメンバーが、トライアングルでビートを作った。
なまじメロディ楽器がいない分、一旦取り出されたビートが頭に残る。
芳垣のハンド・キュー一閃で、全員のアンサンブルへ戻ったとしても。
直前に抜き出されたビートへ意識が保持され、全体のリズムへも耳が行く。
そんな無意識な多層構造の混載ビートが楽しかった。
しみじみ感じたのは、リズム感を聴き手にも要請するなあ、ってこと。
つい拍の頭でビートを取っちゃう。
指揮をする芳垣は、あえて個人プレーを強調しない。
アンサンブルの対比を基礎に、ひっきりなしにメンバーの抽出と全員演奏を切り替える。
小気味よいシーン・チェンジで飽きなかった。
5)「気持ちよくなるまで、続けることにします」
と言ったのは、この曲だったかな?そうとう長くやっていた。
芳垣はシェイカーを振る。ときおり頭に戻りながら、全員でリズムを発展させた。
高良がいくつかの鐘を叩き分け、リフを提示。
冒頭で静かなリズム。ラストはグルーヴ大会になった。
6)"ブンバカ"をイントロに持ってきた。Warehouseの同曲で高良が叩く、チューブ・ドラムのこと。"ブンバカ"って大坪の命名だったんだ。
イントロでチューブ・ドラムを高良と芳垣で挟んで向かい合う。
最初は同時に、続いて交互に。チューブ・ドラムでのソロを聞かせた。
バンド演奏が始まると、リズムはアップテンポに。前曲で関根が叩いてた、ひしゃげた灯油缶を岡部が引っつかむ。
のしのしとステージから降り、客席へ。
ノーマイクなのにバカでかい音で、派手に叩きのめした。観客に隠れて、姿は見えなかったが・・・。
中盤ではステージ後方に立った三人が、揃ってプラスチックのホースを振り回し、風きり音を挿入。
気づかなかったが、芳垣がキューを送ってたのかも。いきなり揃って立ち上がってた。
すでに22時半を軽く回ってる。ところが客電が消えず、アンコールへ。
全員がデンデン太鼓を使い、ソロ回し。こういうときにミュージシャンのセンスが出る。出る音に大差ないから。
竹とんぼのように振り回し、テンポを変えるパターンが多い。
が、岡部だけが片手演奏を多用。スナップを効かせる。さらに太鼓を鳴らす部分をつまみ、ぽとんと打面へ落としたりこすったり。もっともアイディア多彩な奏法だった。
全て終わったのが23時をまわる頃合。2時間半に及ぶ長尺のライブだった。
アフリカンやラテンのリズムを多用しており、ダンサブルで楽しめる。前衛の世界へ依存はほとんど無さそう。
芳垣や岡部、関根あたりはしょっちゅう楽器を持ち替え、視覚的にも飽きない。お腹一杯のライブだった。