LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2005/3/19   荻窪 グッドマン

出演:クラシック化計画 
 (翠川敬基:vc、菊池香苗:fl、沢田直人:fl、塚本瑞恵:p)

 翠川敬基が奇数月に開くクラシックのライブが「クラシック化計画」。たまに昼間から開催されることも。
 てっきり今回も昼からと誤解し、2時頃に店へ行っちゃったのは内緒だ。

<セットリスト>
1.F.ボルン(?):カルメン幻想曲(沢田+塚本)
2.ラフマニノフ:チェロ・ソナタ(Op.19)(翠川+塚本)
(休憩)
3. ?(菊池+塚本)
4.クーラウ:フルート・トリオ(翠川+菊池+塚本)

 ほぼ客席が埋まる盛況。前説を翠川が努める。今日は菊池がダブル・ブッキングになってるそう。

 「聴きなれた曲と思います」と紹介した、「カルメン幻想曲」が幕開けだった。
 上のセットリストが、ちょいとあやふやなのはご容赦を。すべて演奏前に曲目解説はあった。でも、根本的なクラシック知識不足で、上手く覚えられていないのです。
 カルメンのオリジナル作曲者はだれだったかなあ。ビゼーだっけ?
 とにかくピアノとフルートで奏でられるメロディは、どれも聴き覚えあり。数楽章に分かれてたと思う。
 フルートの音がときに鋭く響き、いきいきと情景が転換した。ピアノによる和音も気持ちよかったな。

 「次はとんでもない難曲です。40分くらいありますので、覚悟して聴いてください」
 と、翠川が笑う。チェロはステージの左側に陣取った。
 
 演奏が始まって、旋律の美しさにはまった。初めて聴いたが、すごくいい。
 冒頭は音量を小さめ。曲の展開にしたがって、チェロはふくよかに鳴ってゆく。
 ピアノの音色はときにこもり気味なときも。1〜2音、ちょっと違和感ある響きは、楽器のせいだろう。

 軽やかに鍵盤が弾んだ。チェロのメロディを支えるように、めまぐるしく音が動く。
 確かに長丁場だったが、それだけの味わいはあった。

 あれは後半だったかな。
 旋律を奏でるチェロが、ふっと指を離す。
 開放弦で大きく弓が弦をこすった。
 胸を開くおおらかな風景と伸びた響きが、とても印象に残ってる。
 コーダへ至ったときの満足度がすごかった。CD買おうかな。

 後半はまず、前の仕事から慌てて駆けつけた菊池がステージへ上がった。
 「(前の仕事の)『帝国ホテルから、丸の内線の駅まで二分で走りました』って言ってたけど・・・そういう問題じゃないよな」
 翠川が笑いながら菊池を紹介した。
 
 二人で演奏した曲はフランスで課題曲として、よく使われるそう。作曲者名は聴き取りそびれました。
 "早い"と"ゆっくり"を意味するテンポ指示が曲名("プレストとアダージオ"だったかなあ)。
 翠川は「早いのから遅いのまで、という曲です」と紹介してた。

 曲そのものはあっさり気味。こうしてソロで聴き比べると、吹き方の違いを微妙に感じた。沢田の力強いフルートと、菊池のそっと響くフルートと。
 二人ともクラシック畑の人だ。テクニック云々で、じゃない。まったく別次元のところで、響きが違うなあと興味深かった。

 最後はクーラウの曲を。本来はピアノとフルートが二本で演奏される。
 第二フルートの譜面をチェロが弾く、という趣向。チェロでの演奏は珍しいそう。
 「いきなり低音から高い音へ行く。(チェロの)構造的に、弾くのは無理あるよ」
 翠川がぼやいてみせる。
 
 菊池がステージ左手に立ち、チェロはステージ右手手前へ。つまりチェロは第一部と逆の位置に座った。
 翠川は演奏前にスポットライトの位置を調整し、譜面へ明かりを当てる。

 場所によってチェロの響きが、まったく変わっておどろいた。
 第一部はふくよかな響きが、耳へストレートに飛びこんだのに。第二部では金属的な高音がぐっと強調された音色。響きも小さめだった。
 
 むろん曲によって弾き方を変えると思う。それでもドラスティックな変化だった。場所での響きがこれほど変わるとは。

 上品な楽想。チェロはピチカートから白玉まで、ひんぱんに音が変わる。
 第一フルートと掛け合いやユニゾンまで、細やかな展開を見せた。

 前半のラフマニノフの印象があまりに強く、後半はあっというまに終わった。
 クラシック化計画を聴くのは4回目くらい。いつも寛いでクラシックと向きあえる、貴重なひとときだ。
 次回はフルートがもう一人増えるらしい。どんな曲を演奏するのかな。

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