LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2005/3/11 早稲田 茶箱
出演:川下+不破+岡村
(川下直弘:ts,harm、不破大輔:b,岡村太:ds)
ライブの案内は地底新聞で見た。茶箱のHPを見ると、"LIVE a.k.a
fedayien"と記載。すわ、再始動か?と、仕事をなんとか終わらせスッ飛んでった。
この店は初めて行くが、ライブ時間の20時が開店らしい。19時半頃についたが中へ入れず。リハの最中だった。時間まで辺りをうろつき、20時ちょっと前に再訪問。何とか入れて頂く。
BGMはテクノ仕立てのジムノペディ。きれいだったな。
川下の機材が気になって、きょろきょろ見回す。どうやら今夜はテナー・サックスのみ。ソプラノやエレクトリック・バイオリンは無し。
すると"海"や"Toki"はやらないかな。残念(実際、演奏されなかった)。
珍しいのはハーモニカを準備してたこと。吹くとは知らなかった。
20時15分くらい。「そろそろやろうか」とメンバーはステージへ向かった。
無造作に川下がテナーを構える。
ドラムとベースが静かに加わった。
テナーのソロが冒頭から延々と続く。ときおり、顔を覗かすテーマ。
"ナポリタン"・・・かな?聴けることが嬉しくなった。
トリオ編成でのセッションはドラマーを替え、フェダイン解散後も幾度か行われた。でもぼく自身は、かなり聴きそびれてたからね。
次第にテーマの輪郭がくっきりしてくる。
不破と岡村は、すぱっと演奏を止めた。
テナー・サックスが無伴奏で、テーマを高らかに吹いた。
アップテンポで3人のアドリブが続く。フェダインとは明らかに違う。ドラムがぐっと明るかった。
岡村のドラムはハイハットでなくライドで刻んで賑やか。
力強く叩きのめすが、生き生きした爽快なリズムだ。全体のイメージがぐっと浮き立った。
不破はウッドベースを抱えてぶいぶい言わす。
弦を力強くスラップさせ、前へ音楽をつんのめさせる低音だった。ドラムとベースのコンビネーションは自由に。
コンビで突き進むシーンは無く、互いがテナーのソロをあおった。
この編成だと、川下はとにかく吹きまくり。以前聴いたときより、ふくよかな音色だった。
メロディが見る見る変容し、ソロが展開した。
集中して聴いてたら朦朧としてきて気持ちいい。川下のサックスで感じるこの快感、久々だ。
サックスのソロはドラムへ繋ぐ。ことさら賑やかに岡村はタムを回した。
へんてこなフィルやビートを紛れ込まさない。シンプルなドラムソロだけど、弾むリズムのノリで聴かせる。
一方で不破のソロはかなり短め。すぐに川下が加わった。
次の曲は初めて聴くアップテンポの曲。イントロを川下が口で説明し、「どっちをやろうか?」と相談してた。曲名は不明です。
切羽詰った性急さが心地よい。テナーのソロはますます勢いがつく。
川下はテナーを体の前へ挟み、上体を揺らしながらアドリブをほとばしらした。
しかし肩の力を抜く余裕は、常に残してる。
これもドラムソロをふんだんに入れたわりに、ベースソロが短い。なぜだ。
不破は単にランニングさせるだけでなく、カウンターのメロディを自由にぶつける。
そのベースソロがたんまり聴けたのが、続く曲だった。
フェダインで聴き覚えあるが、曲名思い出せません。ごめん。
サックスのソロから、ウッドベースへ。メロディ崩しからアドリブは始まった。
唸りながら指板をせわしなく指が上下し、奔放に旋律を繰り出す。
低音がスネアの響き線を共鳴させ、サワリをびりびり鳴らす。
不破はマシンガン早弾きフレーズは出さない。ベース一本で曲を構築するような、充実したアドリブだった。
前半最後はムーディな曲。岡村はブラシに持ち替えた。
ハイハットをほとんど叩かず、スネアのこすりとバスドラがメインなリズムが新鮮だった。
不破と川下はなじみ薄い曲なのか、横の椅子に置いた譜面を見ながら演奏する。
横目で眺める不破はまだしも、低い椅子にぽんと譜面を置いた川下は、上体を思い切りかがめて、譜面を強引に覗き込む。もちろん吹きながら。
アドリブに切り替わると、ゆったり上体をそらしフレーズを展開させた。
30分ほど休憩を挟んで、第2部へ。最初に演奏されたのは"ヨーロピアンズ"・・・かな?
イントロは川下による無伴奏のハーモニカ・ソロ。
楽器の性質上センチメンタルな空気は漂うが、全体としてはクールにまとめる。
最初、吹き始めたところで。
「あ、わすれてた」と横に置いたサックスを首からぶら下げる。改めてハーモニカを吹きなおした。
川下はテナーに持ち替え、アドリブからテーマに繋いだ。
ドラムはライドシンバルを叩きながら、ブラシからスティックへ持ち替える。
ベースソロはここでも、じっくり聴かす。冒頭に強烈なピチカートをかました。
マシンガン・フレーズも飛び出した。唸りながら猛烈に弦を弾き倒す。
右手も左手も激しく弦をスラップさせるさまが、素晴らしくかっこいい。
ベースのソロが終わりかけるころ。椅子に座って聴いていた川下が、すっくとたちあがった。
テナーを咥える。アドリブへ。
二曲目へはメドレーで演奏された。
いったん、曲はバンド全体でコーダへ向かう。
ところが川下だけ音を止めず、えんえんサックスを吹き鳴らす。
循環呼吸で無伴奏ソロを続けた。
ベースとドラムが構える。サックスが吹いたのは、馴染みあるメロディ。
アルバート・アイラーの曲だと思う。いまだに曲名知らないんだが。
次の曲が面白かった。なにやら岡村がぼやいたあと、ハイテンションでドラム・ソロを始める。今までのジャズとは違う。
不破は五弦エレキ・ベースに持ち替えた。タイミングをうかがう川下へ、指で4拍子を取って頭を確認しあう。
がつんと入ったのは、とびきりファンキーなR&B。この面子で、聴けると予想しなかった曲想だ。くー、いいなあ。
めちゃ早いテンポで、ドラムがエイト・ビートを叩きまくる。ベースはあまりアドリブを加えず、ドライブするフレーズで煽った。
川下はぞんぶんにサックスを吹き続けた。
最後は"平和に生きる権利"。聴きたかったんだ、これ。
冒頭のイントロからテーマの片鱗が出たとき、嬉しくなった。不破はエレキベースで演奏。
最後は穏やかに決めるかと思ったら。岡村がばっしゃんばっしゃん、力強くシンバルを打ちつける。
ライドシンバルはスタンドの固定が外れ、だらんと垂れた。横のクラッシュやハイハットに切り替え、派手に叩き続ける。
不破のベースがぐいぐい曲をひっぱった。
温かいフレーズをサックスが幾度も繰り返した。
同じ3人でのライブは、まだいくつか予定あり。しばらくは固定で活動するのかも。
リラックスさと枯れないパワーが混在する面白さがあり。
今度は"ラジオのように"や"海"や"Toki"をこの顔ぶれで聴いてみたいな。