LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2005/3/8   西荻窪 アケタの店

出演:江藤直子セッション
 (江藤直子:Key,Voice,大津真:G,Comp,藤井信雄:Dr,西村雄介:b)

 「Giulietta Machine名義ではないですが、Giulietta Machineの曲もありです。」

 と、Giulietta MachineのHPで告知されたライブへ行った。昨年12月ぶりに聴く。20時をまわった頃、ステージが始まった。
 大津がラップトップに顔を寄せ、ノイズを出す。しだいに人の声のサンプリング・ループが浮かび上がった。
 PCのノイズへピアノの爪弾きが加わる。つと立ち上がった江藤。ピアノの上に積んだコルグで、電話のベルみたいな音を出した。
 音色をリアルタイムで変容させる、文字通りシンセサイザーとして使う。

 「Giulietta Machine・・・」と断続的な声のループが聴こえる。このオープニングは前回と一緒。
 ただし今回の一曲目はタフだった。エレキベースがシンプルなリフを連ねる、冷静なファンク。
 藤井のドラムがタイトなビートを刻む。テンポは一定。アクセントやパターンを変えて、新鮮なリズムを続けた。

 前半は曲間なしのメドレー方式。拍手を入れる隙もない。
 ひとつの曲がゆっくりとボリュームを下げ、音が消え去る直前。江藤か大津が次の音を提示、クロスフェイドのように繋がってゆく。

 たしか二曲目は江藤の呟きが入る、静かな曲。
 真剣な表情で、彼女は演奏していた。マイクへ向かって歌うさまは、客席から見てると首の上しか見えない。
 なんだか首のオブジェが歌う風景を見てるみたい。不思議な光景だった。
 
 前半は4〜5曲かな。あまり聴き覚えのないメロディが多かった。
 メリハリある硬質なアップテンポの曲が印象に残る。
 同じテンポ、パターンで繰り返すことで強靭なファンクが産まれた。

 西村はベースを淡々と操り、藤井のシャープなリズムとかみ合わせる。
 サウンドのイメージだけとるなら、全員がなんだかストイックな雰囲気を漂わせていた。各自が自分の音に責任を持ち、アンサンブルを成立させる。
 だからこそ、たまに飛ぶアイ・コンタクトの緊張が増す。

 前半最後にやったのは、"Tudo"だろうか。
 ギターとピアノのユニゾン。エレキギターの歪んだ音色が、ピアノの音と重なって、しぶとく責めるリフ。
 リフは最後にベースとギターのユニゾンに変わったかも。

 ソロを取る部分はもちろんある。しかしソロ回しの展開は意識なさそう。
 あくまでアンサンブルとして、彼らは音楽を成立させた。 前半はおよそ45分くらい。

 後半もやはり冒頭は、大津のPCノイズが幕開けだった。

 しばしの休憩を挟んだ後半は、Giulietta Machineのレパートリーが多かったような。
 後半一曲目が"Pi-Pi"かな?たしか"Nemo"もやったはず。後半の二曲目あたりで。
 他にはぐっと演奏が盛り上がった、後半中盤の"Mingo"も。

 後半ではメドレー形式って1曲くらい。あとは明確に曲間を作る。
 コーダのあと、ふっと奏者がリラックスするのが分かる。
 でも前半の構成にあてられたか、拍手すらはばかれる。したがって本当に静かに、ステージは進行した。

 藤井は後半のドラミングも冷静に決めた。あれは"Pi-Pi"でだったか。
 メロディがAブロックからBブロックへ移る時、リズム・パターンが変わる。
 ハイハットとスネアのリズム・パターンから、タムとフロアタムを軽く叩くビートへ無造作に移る。そんなアレンジが見事にきまってた。

 ハウス・ドラムを叩いてたが、シンバルは自前。ところどころ穴があいて、リベットもつけたクラッシュを一枚吊るしてた。
 軽く叩けば、シズルが店内へ繊細に響く。

 江藤はコルグのほかに、ピアノの横へシンセをもう一台置いた。
 後半のファンクな曲では、オルガンっぽい音で演奏をあおる。
 たしか"Pi-Piではピアノと横のシンセを使い分け、途中でつと立ち上がり、静かにキーボードへ向かった。

 ピアノでのアドリブは、叙情性を意識的に排除したようす。アップテンポはおろか、バラードでもセンチメンタルさは無い。
 あくまでも硬くてきれいなサウンドを提示続けた。

 大津はずっと座ったまま。曲によってエレキとアコースティックを使い分ける。
 目の前に置いたパワーマックと譜面台にさえぎられ、弾いてる姿が見づらく残念。
 どの曲だったろう。ボサノヴァを連想する軽やかな曲を演奏したとき。ギターのカッティングが、とてもきれいだった。

 逆に立ったままで演奏が、西村。リフともソロともつかぬベースを挿入する。
 これもどの曲かは忘れてたが。開放弦と高音でのスライドみたいなビブラートを混ぜるリフあり。
 淡々と同じフレーズを繰り返す。その姿勢がきっちり、堅いファンクネスを支えてた。

 ラスト前の曲は、ギターとピアノのリフの交錯がテーマ。
 冒頭にユニゾンで奏でたフレーズが、次第にずれて輪唱のように鳴る。
 幻想的な曲だった。

「最後の曲です」
 江藤がつぶやく。今夜のライブで、MCと言えるものはこれだけ。
 ラストは"Chuva"かな。穏やかなムードで、静かに幕を下ろした。

 今夜は演奏中。ずっとハムノイズが鳴り続けてた。パワーマックからの意図的なノイズなのか、マイクが鳴ってたのか。いったいどちらだろう。

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