LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2005/2/20 調布 GINZ
出演:warehouse+Farmyard
Animals
(warehouse:鬼怒無月:g 大坪寛彦:b etc. 高良久美子:per)
FARMYARD ANIMALS: BRENDAN KELLY:sax GIDEON JUCKERS:tuba
PETE FLOOD:ds)
イギリスのアコースティック・トリオ、ファームヤード・アニマルズと、warehouseのジョイント・ライブ。
ファームヤードの日本ツアーの一環として行われた。初競演みたい。
三部構成と盛りだくさん。休憩時間には高良久美子から、クッキーと紅茶のサービスまであった。
たしか開場は18時半。えらく早い。若干リハが押したものの、19時過ぎには開演した。
動員が読めなかったが、蓋を開けるとほぼ満員の盛況だった。
Warehouse
<セットリスト>
1.Cat Box
2.Ezumi
3.Good night
honey
4.Bunbaka
5.Tomboy and me
「30分くらいやります。ちょっと押すかもしれませんが」
鬼怒無月の挨拶で、まずはwarehouseの演奏から。(5)以外は全て1st収録。
(1)〜(3)の曲順は、よほど気にいってるのかな。1st
CD発売前のライブでも、同じ曲順だった記憶ある。
以前はアドリブ要素を控えめだったが、今回はばんばんソロが入った。
(1)では高良、(2)で鬼怒と大坪のソロかな。延々とアドリブってわけじゃないが、コンパクトなアンサンブルを膨らます要素が楽しい。
今夜の大坪はエレクトリック・ウッドベースを使用。"Cat
Box"では胴を叩いて低音を響かせた。
鬼怒はエレキとアコースティック・ギターを曲によって使い分ける。
(3)のイントロは長めの即興つき。高良がヴィブラフォンの鍵盤を、コントラバスの弓で弾いて倍音を出す。いくつかの音が重なり、玄妙に響いた。
werehouseと言えば定番(と、勝手に思ってる)なチューブ・パーカッションを使った"Bunbaka"もきっちり演奏された。この曲にしか、使わない楽器なのに。
高良がチューブ・パーカッションのアドリブでイントロをいれる。鬼怒もギター・ソロを長めに弾いた。
盛りだくさんの企画なためか、鬼怒のMCは控えめ。今夜の構成を淡々と他人事みたいに話してて、おかしかった。
最後に"Tomboy and
me"で軽快に駆け抜け、一部をしめた。50分弱の演奏かな?
小物も多く使うwarehouseだが、今夜は抑えてる。大坪のリコーダー二本吹きが印象に残った。
Farmyard
Animals
まったく初めて聴く。プログレと誤解してたが、若干ジャズ寄りのアプローチだった。曲によってはクレツマーの要素も。
イギリス出身。アンサンブルのベースラインをチューバが努めるのは、地中海音楽の影響だろうか。
サックス奏者は曲によりテナーとアルトを使い分けた。サブトーンをテナーでは響かせ、ちょっとぼくは辛い。
きれいな音色で吹く、ソプラノのほうが馴染めた。
ドラム・セットは手作り。廃物利用もしてる、と言ってた気がする。
薄胴の大口径ドラムをバスドラ代わりにし、あとはスネアがメイン。シンバルはチャイナを右側に置き、ハイハット代わりに自転車のホーンを踏む。
小さなベルを多数打ち付けた板を置き、たまにメロディアスなフレーズを叩いてた。
他にギロや鉄板をアクセントで鳴らす。
ほとんどの曲が静かめなせいか、繊細なキック使い。膝を動かさず、指先だけでペダルを踏んでいた。
一曲目はバルカン音楽をイメージさせる楽想。おおらかなアンサンブルで、ピッチもけっこう甘い。
チューバはコンタクト・マイクで音を拾ってたが、バランスが低めで残念だったな。
主にサックスのアドリブが全面に出る格好か。
次に演奏した"Don't Buy Ivory
Anymore"が聴きもの。
フランスのベーシスト、アンリ・テキシエの曲(注*1)。演奏前に彼の曲だ、と紹介したようす。
物販してたファーマーズのCDにも収録されてるそう。馴染みのレパートリーだろうか。
ふくよかなメロディと、たっぷりしたサックスのアドリブに惹き込まれた。
以降は数曲、メンバーのオリジナルが続く。
MCは全て英語。ぱっと曲紹介をしてたくらいか。今回の感想は事情で10日ほどたってから書いており、あまり細かい内容覚えてません。ごめん。
それぞれのメンバーによるオリジナルを回り持ちで演奏。
だれかが明確なリーダーシップを取らず、フラットな立ち位置でアンサンブルを成立させる。それが求心性に迫力を欠いた。
小さな音を多用する探りあいのアドリブが多く、がっと盛り上がらなかったせいもある。
変拍子を強調したリフでもない。ほんわかと演奏が進む。
普段、どういう場所での活動だろ。パブならもっと派手じゃないとだめなんじゃないかなあ、と大きなお世話を考えつつ聴いていた。
ラス前の曲もジャズのカバー。MCでガレスピーがうんぬんと言っていたので、たぶん"Con
Alma"のはず。メロディに聴き覚えあった。
たしかサックスはテナーを演奏。アドリブがメロディアスでかっこよかったと記憶してる。
最終曲では「シークレット・スペシャル・ゲスト」として、唐突に川口義之(as)が登場。
えらく唐突な人選だが、二日前にシカラムータがらみの対バンでファーマーズはライブをやってる。その関係かな。
めまぐるしい曲を猛烈に吹き鳴らす。この曲が一番アグレッシブだった。 およそ1時間のライブ。
warehouse+Farmyard Animals
最後は両バンドによる共演。まずは組み合わせで即興が行われた。
鬼怒+ケリー(sax)、大坪+ジューカーズ(tuba)、高良+フラッド(ds)の順番で、それぞれ5分くらいの持ち時間。
即興としてまとまってたのは、高良組じゃないか。
鬼怒はケリーの盛り立て役につとめ、鋭いストロークが中心のプレイ。存分にサックスのソロを聴かせた。
大坪とジューカーズはエール交換のイメージが強い。まずは大坪がアルコでソロを取り、チューバが加わる。互いのアドリブ交換のようだった。
最後の高良組は静かに探りあって、即興アンサンブルが成立して聴こえた。
そして一堂に会しての競演。4曲ほどやった。
まずファーマーズの曲。早いパッセージのアンサンブルをファーマーズが回し、次のコーラスはwarehouseが即興で加わる。最後に双方が一体となって演奏する。
かなりめまぐるしい旋律で、聴いてて楽しい。
warehouseのレパートリーは"Tonekey"、"Carrot
Party"を演奏。
サックスがメロディを奏でるだけで、ふだんのコンパクトなアンサンブルに一色足された魅力がにじみ出るのを実感した。
"Carrot
Party"でライブは締められるも、拍手は続く。
鬼怒は一旦ステージから去りかけるも、そのまま元へ戻る。どうしたもんかと戸惑い顔なファーマーズの表情が面白かった。
そのままなし崩しにアンコールへ。第三部の最初に双方でやった曲を、再演することに。
客席で聞いていた川口も呼ばれ、アンサンブルに加わる。
ほんとうはwarehouseがテーマ部分で即興はファーマーズと、本編とは逆アレンジでアンコールをやろうと企画したとか。
「だけど、ぜんぜん弾けないので諦めました。ファーマーズは譜面に強いです」
と、鬼怒がぼやいてみせる。
最初こそファーマーズにメロディ部分を委ねたが、次第にwarehouseもメロディを重ねる。一番辛いのは、初見で加わった川口では。
内容たっぷり、がつんと歯ごたえある演奏に大満足のライブだった。
(注*1:一緒にライブ聴いてた、茶坊さんにご教示頂きました。ありがとうございます。
"Don't Buy Ivory
Anymore"の、アンリ・テキシエによるオリジナルはHenri Texier "Azur" Quartet "An Indian's
Week"(1993:LabelBleu/LBLC6558) に収録とのこと)