LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2005/2/19 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之
(明田川荘之:p occa)
毎月恒例、アケタの店の深夜ライブ。今夜は雨上がりでとても冷え込む夜だった。
0時頃に店へ入ると、明田川がピアノに向かってなにやら弾いている。調律じゃない。作曲中かな?
フレーズを確かめるように、幾度か和音を変えながらフレーズを鳴らしてた。
しばらくすると弾きやめ、店の外へ出てしまう。
0時半になろうかという頃合。すたすたとステージへ向かう明田川。
彼を追うように、客電が消えていった。
明田川はピアノの上に置いた、セットリストに目を凝らす。
「ベーシストに捧げた歌です。"テーマ・フォー・ヤスキ"」。
一言つぶやき、ライブが始まった。
<セットリスト>
1.テーマ・フォー・ヤスキ
2.おい、ゴー、お前
3.Pop
UP
4.安里屋ユンタ
5.ディア・森さん
6.アドリブ・1・7・オー・オー
7.ネフリュード・タカギ、又は、コサック・フォー・イサオ
8.ロクシネマ
9.マジック・アイズ
今夜は全て演奏前に曲名を告げた。聴き取り間違いがあるかも。
ぼくは(9)以外、聴くの初めて。めったにやらない曲を、あえて選んでるようだ。
(8)の前だったかな?「これもめったにやらない曲です」と前置きしてたっけ。
(3)、(4)以外は、たぶん明田川のオリジナル曲。(6)のみがオカリーナの独奏で、あとは全てピアノ・ソロ。ずいぶん今夜はオカリーナの演奏が少なかった。
(3)は早川岳晴の曲。彼のライブで聴いた覚えはあまりない。ドクトル梅津バンド時代の曲(注*1)だ。
"安里屋ユンタ"は沖縄民謡だと思う。この曲、聴いたことあってもメロディーが頭に入ってなくって。
"テーマ・フォー・ヤスキ"は鈍いメロディが、次第に変奏される曲。
あまりアドリブで崩さず、テーマを幾度もフェイクさせる。あっけなく終わってしまい、拍手のタイミングに戸惑った。
ちらりとメモへ、再び目を投げる明田川。
「ここの昔のスタッフへ捧げた曲です。"おい、ゴー、お前"」
続いての曲も、あっさりと弾かれた。
優しげなメロディの途中に、"マイ・フーリッシュ・ハート"の断片が挿入される。
わずかにうなり声が出たかな?めったにやらない曲のせいか、どことなし緊張感が高まる。
静かにスイングするムードが気持ちよかった。
前半の山場が、早川岳晴の作曲"Pop
up"。たっぷりとアドリブを挿入する快演だった。
元はバンド向けに作曲じゃないかな?大胆に曲想場面が変わる。
明田川はふっと空白を挿入し、転換を強調した。譜面はまったく使ってない。
爽快なフレーズと優しげなメロディが順に登場する、ドラマティックないい曲だった。いくどもテーマのフレーズを強調する独自のスタイルで、粘っこくアドリブが展開した。うなり声も登場してたはず。
"安里屋ユンタ"はあまり沖縄っぽい印象を受けない。明田川のオリジナルみたいだった。たまにテーマでそれっぽく響いたかな。
調律がおかしいのか、唐突にエンディングへ。弾きやめて、そのまま調律を始める。
それは次の曲でも同じ。いきなり終わらせて、また調律を確かめてた。
"ディア・森さん"もロマンティックな雰囲気でよかった。ここまで"Pop
up"を除き、一曲あたり5分くらいで終わってたんじゃないかな。
すごくさくさく進む。いろんな曲が聴けるのは嬉しいが、もっとじっくり一曲を味わいたい。この願いは、最後にかなえられたが。
ここまでオカリーナは一瞥もされず。
やっと足元のハード・アタッシュケースから、いくつかのオカリーナを取り出す。
小ぶりのを二つほど使い分け、"アドリブ・1・7・オー・オー"が演奏された。
テーマはなんとなく、聴き覚えあるかなあ。自信ないや。せわしなくメロディーが店の中で広がる。
"ネフリュード・タカギ、又は、コサック・フォー・イサオ"は、タイトル後半どおり、コサック・ダンスのようなフレーズがテーマに取り入れられた。
あんがい長く演奏されたと思う。ピアノの内部弦を幾度も爪弾いたのが、この曲かな?
続く"ロクシネマ"だけ、どうしても記憶が蘇らない。ごめん。のめりこんで聴いてた記憶はあるんだが。
「最後の曲です。"マジック・アイズ"」
ぼそりと明田川がつぶやいた。正直、「え、もう?」ってとまどう。次々に曲が登場し、頭の中が整理されていなかった。
"マジック・アイズ"も明田川のレパートリーで、好きな曲のひとつ。なぜかCDだと、20分くらいの長尺になる。"アルプ"や"マジック・アイズ"に収録。
どちらもピアノ・コンボ演奏なので、ソロで聴けて嬉しかった。
15分くらいはこの曲に与えたんじゃないかな。
唸りながらアドリブがぐいぐい力強くドライブする。温かく骨太のジャズがたんまり聴けた。
クライマックスはクラスターへ。曲をふっと締めたあと、無造作に鍵盤へ右エルボーを垂直に落とす。
いきなり混沌へ走らなかった。クラシックのフレーズ(曲名は思い出せない・・・)らしききれいな旋律の断片をはさみ、肘打ちやクラスターの比率を次第に高める。
油が次第に回るように、激しさは増してゆく。
"アケタズ・グロテスク"を連想するフレーズも、一瞬だけ登場した。
両肘で鍵盤を幾度も叩き、あっというまにライブは終わった。
ほんのり風邪気味だった頭は、ぼおっとしてる。
クールさも見せたライブだった。音の密度は濃い。
今まで聴いてきた明田川の深夜ライブは、セットリストはころころ変わるものの、馴染み曲を取り入れて寛いでいた。
ところが今夜は、ちょっと雰囲気が違う。
そういえば先月の深夜ライブも、耳慣れない曲が多かった。もしかしたら今年は、深夜ライブのコンセプトを変えるのかな?
終演後には電車が無くなるためか、なかなか聴きづらいライブかもしれない。
でも、もっと多くの人に聴いて欲しいジャズだ。刺激的だったよ。
(*1) つかぽんさんにご教示頂きました。ありがとうございます。"POP UP"の初出は"Danger"の1stとのこと。メールスのライブ盤にも収録され、2004/1のD.U.B.仙台復活ライブでも演奏されたそう。