LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/12/28   入谷 なってるハウス

出演:MUMU
  (植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂本一孝;key)

 MUMUの今年の活動は、月一回の定期ライブ+αで全13ステージ。
 すべて東京でのライブだった。そのうち今夜を入れて3回聴けたことになる。

 今夜はその総決算。月に一曲、新曲を発表したMUMUが2004年のレパートリーで埋め尽くすセットリストだった。

 この日はボンフルとかぶっており、どっちへ行くかずいぶん迷った。
 なってるへ入ると、客席は予約でいっぱい。何人か、最後まで予約席が空いたままだったが。
 最終的になってるハウスの椅子がほぼ埋まった。

<セットリスト>
1.2004 #4
2.2004 #9
3.2004 #11
4.2004 #8
5.2004 #2
6.Bolero
(休憩)
7.2004 #10
8.2004 #12(初演)
9.2004 #3
10.2004 #7
11.2004 #1

 MUMUのHPを参照したセットリストです。
 #のあとの数字が、発表された月を指す。植村らしいタイトルのつけ方だ。
 2004年の新曲を網羅はしない。#5と#6はなぜか削られた。
 それぞれ7〜9月のライブでは演奏されてたのに。なぜだろう。
 
 20時15分頃、メンバーがスタンバイ。
 なにも言葉を発しない。植村のアイ・コンタクトとカウントで、ライブが始まった。

 あれはバスドラかな?"2004 #4"は拍の裏と頭の、トリッキーなところにアクセントが入る。つんのめるリズムの、ビートに乗りづらい複雑な曲だった。 
 しょっぱなから無伴奏でドラムのソロもあり。
 期待するも、同様のアレンジはこの後で見られなかった。ちぇっ。

 今夜のMCも中根がつとめた。いつものひょうひょうとした喋り。
 MCマイクを忘れたとかで、トロンボーン用のマイクを使用する。ときどきマイクを吹いてしまうが、このコンパクトなスタイルがMUMUらしくていい。
 むしろ演奏中にトロンボーンに溜まる水滴を吹き飛ばす音まで、マイクで拾ってしまうのが気になった。
 あの行為が必要不可欠なのは、ブラバン経験者として理解できるが。

 喋りは基本的に中根のみ。
 冒頭に「今年はいかがでしたか?」とメンバーに尋ねて、どちらも反応せず。
 「・・・返事なしだよ」
 と、ぼやくのが面白かった。

 直接に客へ話しかけないポリシーでもあるのか、植村も坂本もすべて中根へ向かって喋る。
 それを中根が客席へ語りかけるスタイル。生声もぜんぶ聴こえてるのにね。

 まず1曲演奏し、立て続けに数曲。そして最後に1曲弾く、というMUMU風の構成で、今夜も進められた。
 立て続けにMUMUの曲群を聴いてると、なんだか音に酔ってぼおっとしてくる。
 ほとんど新曲ばかり聴いてる気分だから、情報量の多さで脳がいっぱいになるのかも。

 あえて総括めいたことを言うならば。2004年のMUMUは、よりリズムとリフへ軸足を置いたようだ。
 2003年のメロディアスさはトーンを下げ、バラードのような曲は特にない。
 リズムは複雑怪奇になり、デスメタルやパンクのような連打がそこかしこに見られる。
 たしか#9を聴いてるときに、デスメタルっぽさを感じた。
 ドラムを打ちのめす雰囲気がそう思わせるだけで、実際のリズムは複雑なんだけど。

 テンポがひょこひょこ変わる手法も、数曲で見られた。
 一番顕著なのが・・・#7だったかな?その演奏前の曲でも、同様のパターンがちらりと登場してた。
 ときおり登場するパンチのあるリフがかっこいい。
 
 坂本は今夜もソロはなし。譜面を見ながら的確なリフを入れる。
 どこまで即興度があるのか、よくわからない。
 しかしひょいひょいとたやすく複雑なMUMUの曲を奏で、音の骨格を支えてた。

 その坂本が活躍したのが、今夜のカバー曲。
 前半最後に演奏されたラヴェルの"ボレロ"だ。
 なんでもイタリアへ山下洋輔のツアーへ植村が同行した際、2番目に感動したのが切っ掛け。アンコールで山下が演奏したらしい。
 
 ちなみに植村が1番目に感動したのはサッカーの試合、と中根が言っていた。
 試合・・・なのかな?激しい応援合戦に感動したそう。
 観客が喚き、発炎筒(爆弾、とMCでは言ってた)が飛び交うさまに。もう身振り手ぶりつきで「爆弾が投げられるんだぜ〜!」と感激した喋りで植村は説明してたらしい。

 さて、"ボレロ"。基本は同じパターンをえんえん繰り返す。
 これをMUMUらしいアレンジでかました。
 冒頭のメロディーはミュートをかけたトロンボーン。続いてキーボード。さらにトロンボーンとキーボードのユニゾンで演奏する。
 次第に音が増えるようすを、坂本のキーボードは的確に表現してた。

 ドラミングもさすが。冒頭はハイハットとリムショットで静かなパターンを続ける。
 上物のメロディが膨らむにつれ、ドラムの手数はどんどん多くなった。

 この曲を聴いて、MUMUのアレンジや曲構成を確信した。
 中盤でトロンボーンが長尺のメロディを延々吹くが、あれはアドリブなんだ。・・・たぶん。
 いままで書き譜かも、と思ってた。
 だけど"ボレロ"の中間部で、あきらかにアドリブをトロンボーンがつとめる。
 構成はMUMUらしいアレンジだから、ほかのオリジナルも同様アレンジだな、と推測した次第。
 
 演奏はクライマックスに向け、ドラムが激しいフィルを雪崩れ式に注ぎ、すさまじくテンションがあがる。
 改めて"MUMUサウンド"を実感した。
 キーボードががっしり支え、トロンボーンが軽々とメロディを吹く。そしてドラムが複雑なビートをきっちりと提示する、というサウンドを。
 
 "ボレロ"はザッパも88年バンドで演奏してる。
 初めて聴いたときは感心した。よくロックなアレンジにしたなあ、と。
 ところがMUMUは軽々とザッパのレベルをクリアした。
 MUMUオリジナルのような高みへ到達してる。聴いててひっくり返った。素晴らしい演奏だった。

 休憩を挟んだ後半も、MUMUの進撃は快調に進む。
 たしか一曲目の#10は、ドラムの連打が果てしなく打ち鳴らされる。
 バンドが一丸となり、シンバルとスネアの連打がいつまでたっても終わらない。

 いつもニコニコとドラムを叩く植村の顔が、次第に強張る。
 しかしロールはひたすら続く。
 曲が終わった瞬間、さしもの植村もしんどそうな吐息を漏らした。

 続く新曲は・・・どういう曲だったかなあ。立て続けに演奏されるから、どうも個々のイメージがごっちゃになってしまう。
 なんとなくリフが力強かったイメージあり。
 
 後半はMUMUのリズムやリフに翻弄されて、いつのまにか終わった気分。
 トロンボーンのソロと、ドラムが噛み合うコンビネーションを楽しんでいた。

 べらぼうにいかしてたのが、最後に演奏された#1。中盤でいっきに音像がファンキーになる。
 フロアで聴いたら面白いだろうな。
 前回聴いたときよりも、ぐっと親しみやすさが増していた。

 長いソロをトロンボーンが吹いた後、中根は楽器を置いてしまう。
 キーボードが音を絞り、ドラムだけのブレイクへ。
 ふっとドラムの音がやんだ。

 「よいお年を」
 植村が客席を向いて、一言。
 
 すかさずドラムが復活し、一気にコーダへ。
 絶妙のタイミングだった。
 
 とうとうレコーディングを始めるそう。ゲリラ的に録音するとか。
 発売など細かいことは未定らしい。

 昨年から毎月、新曲を発表してるMUMUのレパートリーはおそらく30〜40曲あるだろう。
 これをCD一枚に収めるのは不可能だと分かってる。だけどいっぱい聴きたいな。
 MUMUの曲は、どれもこれも個性的だから。

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