LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2004/12/12 渋谷 NHKCR505スタジオ
出演:ROVA Saxophone Quartet
(Bruce Ackley:ts ss、Steve
Adams:as、Larry Ochs:ts ss、Jon Raskin:bs+永田利樹:b、堀越彰:ds)
1977年に結成されたアメリカのサックス・カルテットが、来日ツアーを行った。
東京で四公演、全部でライブは6回行われる。今回はNHKーFM"ライブ・ビート"の公開録音。
初めてこのスタジオへ行ったが、天井高いね。さすがプロのスタジオ。マイクも高価そうだった。
なお今回の来日招聘には、藤井郷子、田村夏樹も絡んでるようす。
どうやら2003年にアメリカで二人を招いたユニットOrchestrovaでの活動がきっかけらしい。今日も二人はスタッフとして(?)会場に姿を見せていた。
初めてこのスタジオへ入ったが、天井高いね。さすがプロのスタジオ。マイクも高価そう。
ステージ奥にサポート・メンバーのドラムとウッドベースあり。
ドラムの回り込みを避けるためか、ベースの間にプラスティックの板が立ってた気がする。
下手奥にはテーブル。何かと思ったらアナウンサーが座るスペースだった。
この収録は初めて行くから、段取りがいつも同じか知らない。
しかし喋りまで同録とは思わなかったよ。
水谷浩章が日記で書いてたが、ここはマルチへ落とさずいきなりステレオ2chマスターにするらしい。
あとの商品化って発想がないのかな。マルチのほうが後加工がしやすいのに。BBCを見習って欲しいぞ。余談でした。
開演前にスタッフから拍手の練習が入る。
「強く細かく長く」だっけな?指示あり。「公録だなあ」としみじみしたよ。
(セットリスト)
1.Cジャム・ブルーズ
2.アフター・ザ・レイン
3.チャック
4.S
5.ジューク・ボックス・ジョー
6.ラキム
7.アインシュタインの止血器
聴き取れた曲名はこんな感じ。
タイトルコールのあと、4人による簡単な演奏からライブが始まった。
最初はオーソドックスなサックスのアンサンブル。
スタジオはルーム・エコーがきっちり響くが、中高域が強調されてちょっと痩せて聴こえた。金属質な音色が目立つ。
(2)、(3)でサポートに永田利樹と堀越彰が加わった。かなり気持ちいい演奏で、途中でうとうと。特に(3)だな。
(2)の"アフター・ザ・レイン"はコルトレーンの曲。
リズム隊がまともに刻まず、フリーにビートを重ねて揺らぐ感じ。
続くスティーブ・アダムスのオリジナル曲、"チャック"では逆。サックスのソロを思い切り前面に出し、かっちりリズムを提示した。
かなり長めのサックス・ソロを入れてたと思う。
演奏が上手かったのは、スティーブ・アダムス。きっちりとアルト・サックスをコントロールしてた。
バリトンを吹いてたジョン・ラスキンも、前半は粒立ちのいい音を出してたな。
ただし後半はリードがヘタったか、ちょっと音色がずるずる気味。
逆に辛かったのがラリー・オークス。テナーはブレス・ノイズがきつく、ソプラニーノはラフさが目立つ。
なまじスタジオ演奏で残響が残るだけに弱点が強調される。ライブハウスだと音がブーストされたろう。
あとブルース・アックレイは可もなく不可もなくと感じました。
(4)以降はサポートがなくなり、サックスのみの演奏へ戻る。
インタビューが挟み込まれ、彼ら独自のハンドサインについて語ってた。アナウンサー曰く「ブロック・サインみたいで面白い」とのこと。
実はぼく、彼らの音を聴くのは今日が初めて。いったいどんなサインか楽しみだった。
しかし続く2曲はサインがごくわずか。ちょっと腕を振って見せるサインを導入したくらい。
素早いフレーズをユニゾンで吹く(4)、ほんのりブルージーな(5)と、2曲続けて演奏された。
たとえば(4)でフリーっぽいソロが停滞しかけたとき。ハンドサインで次のソロやテーマへ繋ぐ。ハンドサインは、指揮の役割らしい。
そしてジョン・ゾーンのカバー(6)。これはマサダのレパートリーかな?聴き覚えあり。
冒頭のテーマが勢いたっぷりで、かっこよかった。
サインがいくつか飛び交うが、すごくシンプル。奏者を指差しソロ交換の順番を、交通整理する程度。
指をいくつか立てるサインもあったが、意味はよくわからず。
二人でグループになってソロをてんでに展開するシーンもあった。
もっともコブラほどコントロールされた、ハンドサインじゃない。
なまじゾーンの曲を演奏しただけに、ついコブラと比較したくなる。
プロンプターを立てずに、全員が指揮を取るわりに混乱しなかったのがキャリアのなせる業か。。
そういえば藤井郷子カルテットも去年8月のライブで、同様のサインを取り入れた即興やっていたな。
最後の曲"アインシュタインの止血器"は、完全即興。
熱狂するソロの応酬を期待したが、かなり静かなトーンが基調。
たまにアグレッシブに盛り上がるものの、すぐに消音で探りあいになる。
舌でリードを叩く音がやけに大きく響いた。
キャリアは長いが、ゾーンとの共通性をかなり感じた。
奏法しかりメロディしかり。クレツマーっぽいメロディもたまに顔を出す。
サポート・ミュージシャンはわずか2曲のみの参加。
4人だけの演奏だけでも大丈夫じゃないか、と聴いてるときは考えてた。
しかしこの感想を書きつつ思い出すと、むしろ全編にサポートを入れて、さらに盛り上げたほうが面白かったかもしれない。
あまりグルーヴするジャズには興味なさそうだったが。
ベテランの貫禄で、約1時間のステージを押し切った。
けれども最後の即興は盛り上がる余地があるはず。
実際のオンエアは2月だそう。この日の録音、全て放送されるのかな?
ぼくの感想は以上の通り。ぜひラジオで彼らの演奏を耳にして下さい。