LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2004/11/13  東高円寺  LosAngeles Club

   〜natural gift - vol.59〜
出演:lotos,still life in the attic,狂うクルー,ギブソンズ,cubic star minimal orchestra

 若手ミュージシャンを集めたコンパクトなライブを、立て続けに聴かせるイベントがnatural gift。ひさしぶりに行ってみた。
 もう59回目か。早いなあ。とにかく継続して成立させていることを、高く評価する。

 ギターポップとアヴァンギャルドな要素を併せ持つnatural giftだが、今日は両方の中間かな。初めて聴くバンドばかり。
 どれもインストながら前衛まで足を伸ばさず、ロックに留め置いた音楽だった。

cubic star minimal orchestra

 5人編成のバンド。音の響きは好み。ドラム、ウッドベース、パーカッション、キーボード、エレキギターの編成だった。
 
 冒頭にウッドベースがアルコで静かに音を響かせ、キーボードが横笛を鋭く鳴らす。
 一呼吸置いて、アップテンポのビートが提示された。
 
 全て生演奏ながら、どこかミニマルさが残る。
 たぶんどれも、基本はワンコードでは?ウッドベースがひたむきに同じパターンを繰り返す。
 メロディを取るのはキーボードとエレキギターがメイン。
 ギターはエフェクタで音を歪ませず、素早くメロディを弾く。椅子に腰掛け、ステージ奥でこそっと弾いてる姿が面白かった。

 演奏が上手いなと思ったのはウッドベース。同じパターンをタイトに奏でる。
 ジャンベをはじめ各種の鳴り物を叩くパーカッション奏者や、ギタリストもかなりしっかり弾いた。
 惜しむらくはPAバランスがいまいち。ギターがあまり聴こえなかった。
 
 10分弱の曲を、3曲演奏して終わった。
 耳ざわりのよい器楽的なメロディをミニマルに重ねつつ、ジャンベがあおることでグルーヴっぽさも多少ある。
 変拍子や転調があるとばっちり好みだが、するとコンセプトが変わっちゃうかな?

ギブソンズ

 エレキギター、ベース、ドラムの3人編成で、ギターを前面に出したインスト・バンド。
 エフェクタで音を歪ませ、でかい音でギターを弾きまくる。即興性はあるにせよ、どの曲も作曲されていた

 ライティングがきれいだった。キメの部分ですぱすぱライティングが変化する。
 ちゃんと曲にリンクしてたから、リハをきっちりやったのかも。

 違和感あったのがベーシストの姿勢。完全に客席へ背を向けて、ドラムを向きながら演奏する。
 しかし演出の必然性は感じられず。スタジオでセッションしてるのを、壁から眺めてる気分だった。
 
 ステージなんだから、客席を向いてアピールすればいいのに。音楽を聴くより、なんだかそんなことを考え続けてしまった。

狂うクルー

 ギタートリオの3人編成へ、アルトサックスが加わる変則構成のバンド。
 ステージ左手に立ったサックスは、高い箱の上に機材を載せて足元へペダルを並べる。
 したがってステージが分断された格好。フロアの右手にいたら、サックスはほとんど見えなかったはず。

 この機材の置き方も違和感ある・・・。場面転換を早くするために、窮余の策かもしれない。
 しかしサックスをステージ右手へ配置したほうが、ずっとステージは広々見える。
 今回はPAバランスがいまいちで、サックスはほとんど聴こえなかった。なおさら、サックスの異様さが目立つ。
 ギタートリオで盛り上がる横で、自閉的に吹いてるように見えてしまった。

 うずたかく積んだサックスの機材は、音加工のためらしい。
 ダブ風にリバーブで飛ばしたり、サンプリングして加工された音を電子ノイズっぽく重ねたり。かなり複雑なことをやっていた。
 それだけにPAバランスが残念でならない。
 
 ギターもベースも足元にエフェクターをずらっと並べる。
 ギタートリオの編成は、あんがいシンプルなインスト・ロックだった。
 ドラムがもうちょい、シャープなほうが好みだな。

 いずれにせよ完璧なPAバランスの元で、もう一度聴いてみたい。
 ずっぽりとアレンジがはまったら、かなり面白そう。

still life in the attic

 音楽性がピンと来ず、かなり困惑しながら聞いていた。
 ドラム、ベース、ギター2本とキーボード&エレクトリック・バイオリンの編成。
 ハードロックっぽいリフを基調に、プログレやサイケを織り交ぜた格好か。
 
 1曲目はシンセで電子音を飛ばす横で、ギターが吠える。
 どの音に視点をあわせて聴くか戸惑った。

 あとの曲では鍵盤奏者がエレクトリック・バイオリンに持ち替え、ステージ右奥で静かに弾く。
 たまにメロディを取ることもあるが、メインのメロディはステージ左にいたギタリストらしい。
 体躯を震わせ、激しくギターを弾いていた。

 どの曲もしっかり作曲され、即興要素は少なそう。
 ミニマルな展開も多々あったが、ドラミングがつんのめる性急なビートで、なかなか音が馴染まない。
 ビートを溜めないのは、ドラマーの手癖だろう。曲が変わりハードに連打し始めたとたん、リズムがはまったもの。

 ステージの立ち位置を工夫したら、もっとアピールできるはず。
 バイオリン奏者が右奥に下がったら、ぽっかりステージ中央が開いて見える。
 中心をバイオリンにしないなら、ギター奏者がセンターに立つなど手はある。
 いずれにせよ後半のハードロック調の曲では、バイオリンがアンサンブルにほとんど絡まず。残念。

 やりたいことが混沌としてるみたい。どの要素でもいいからピントを合わせたら魅力が増すと思う。
 最後はギタリストの一人がシンセへ回り、がしゃがしゃに弾きまくって終わった。

lotos

 結成一年だそう。エレキギター2本をフロントに立てた、ギター・インストバンド。
 なぜかドラムをステージ右手へ移動して演奏された。スペースの問題だろうか。ギタリストの一人は、そうとう身体を動かしつつ弾いてたから。

 演奏は今夜の中でも、もっともシャープ。すっきり音へ馴染めた。
 しかし聴いていてセンターに、音が欲しくなった。
 かなりメロディアスだが、どこかもどかしい。カラオケを聴いてる気分。
 つまりもう一人、メロディをがしがし弾く人がいるような幻想にずっとしばられた。

 パンク要素を絡めた、フュージョンっぽいサウンド。ハードに押しもしたが、全体は爽やかなイメージが強い。
 ラストはギターをほおり投げ、踏みつける演出だった。

 どのバンドもアイディアとステージングの合わせ方に、まだ進歩の可能性がある。
 客観的にサウンドと魅せ方を分析したとき、化けるバンドばかり。

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