LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/9/4  秩父ミューズパーク 音楽の森野外ステージ & ミューズの泉

     True People's CELEBRATION 2004〜This Day in a New Planet〜
出演:Jimmy Clif Mighty Crown DJ Quietstorm Sim Redmond Band

 ジャムバンド系を集めたイベントかな?それともレゲエ系がメインかな?どっちとも分かりかねる。
 ともあれ秩父で行われた"True People's CELEBRATION 2004"の2daysの、初日へ行ってきた。
 いわゆるフェスを体験って何年ぶりだろ。そもそも野外ライブ自体がすごく久々だ。

 このイベントはメインが"音楽の森野外ステージ"、サブに"ミューズの泉"を準備した。
 ステージ間は歩いて20分くらいかな。一バンドの持ち時間がもうちょい短ければ、両方のステージをハシゴして楽しめたはず。

 当日は昼から曇って、夜には土砂降り。
 メインステージは客席もほぼ屋根ありで、床も舗装済み。さほどひどい事態にならずほっとした。

 出張帰りで体力がへたってて、ほぼメインステージに居座ってしまったのが残念。
 体力あって、からっと暑けりゃビール片手にぶらぶらくつろげたろう。

 いちおう開演時間からイベントに参加してたが、面白かったバンドのみ印象を書きます。

Sim Redmond Band
 (Sim Redmond:Vo G Unit Carruyo:Vo Per、Jordan Aceto:G、
    Asa Redmond:Ds、Dan Merwin:B )

 イベントのめあてはこのバンド。とうさいさんから「初期ポイ・ドッグ・ポインタリング風」と紹介され、公式HPに載ってたMP3はいちおう聴いてました。
 余談だけどこのHP。せめてメンバーの名前やプロフィールくらいアップして欲しいぞ。なんにも情報ありゃしねぇ。

 実際には曲を覚えるとこまで行かず。したがって今回のセットリストはとうさいさん作成のものを引用させていただきました。ありがとうございます。

<セットリスト>
Life Is Water
Lovebird
This Fire
In An Instant
Holes In The Ground
(undefined)
Train Song
Ancient Chinese Secret
Break Like The Sun
Take A Giant Step
After Sense
Shining Through
Shine
Hurricane
Arms Around The Sun

 開演時間を15分くらい前倒しで登場する、珍しい進行だった。
 メンバーが姿を見せたとたん、幾人もが客席前方へ押し寄せ歓声を上げる。

 中央にシム・レッドモンドがギターを構えて立ち、歌う。その上手にジョーダン・アセト、下手にユニット・キャリューヨがタンバリンを持って歌った。
 このタンバリンはたまに音を拾うくらい。あまりアレンジの一環として意識してなさそう。

 後ろのドラムとベースは互いがやけに寄り添い、視線を合わせて演奏。モニターの調子でも悪かったの?
 ちなみにダン・マーウィン(b)の前にはコンガが用意されるも、実際は使われなかった。

 彼らは今までにアルバム4枚、ソロを2枚発表すみ。ジャムバンド系ファンには人気があるらしい。
 ただし演奏はさほどジャム・バンドっぽくなし。

 ギター・ソロはたびたび挿入されても、別にジャムじゃない。ゆるいリズムのギター・ポップスってとこ。
 曲によってカポをはめるシム・レッドモンドは、ほとんどリズム・ギター。アドリブはジョーダン・アセトが取っていた。

 ギターのイントロ一発。ユニットが身体をほんのわずか曲げ、のびやかな声を広げる。気持ちいい。
 ドラムがちょいともたつくが、タイトな演奏だった。

 曲の雰囲気はほとんど同じ。
 フォークやレゲエ、ちょっとラテンもあったかな。シンプルなアレンジで次々曲をこなす。
 シムは弾きながらぴょんぴょん飛び跳ね、たまにステージを左右に歩いた。

 対照的なのはユニット。下からマイクへ声を当てる格好で、身体をくねらせつつも、まったく立ち位置を変えなかった。
 したがって、ステージの絵面が単調になっちゃう。昼間の野外なためライティングもさほど効果なし。
 舞台がそうとう広々見えてしまった。

 タダでさえ似通った曲調なのに。
 テンポのメリハリをつけないもんだから、ずっとひとつながりの曲を聴いてる気分だ。
 それぞれの曲を、さほど長く伸ばさない。

 前述通りギター・ソロも短く、せいぜいリフレインで延長させる程度。
 曲を覚えてないから気持ちの切り替えできず。しだいに頭がぼおっとしてきた。
 このゆるい進行は、なんだかジャム・バンドっぽい。
 
 前半はMCもなし。ドラムのカウントすらなかったかも。すいすい曲が連なった。
 聴きものはやはりユニットのボーカル。トラッドを連想するほんのり掠れた歌声は説得力あった。

 ただし愛嬌なしの疲れた様子。
 なんだか「これは仕事よ」ってオーラを感じてしまった。
 もうちょい、にこやかならな。ステージが華やぐのに。

 演出らしきものは、中盤のゲスト紹介。
 よく聞き取れなかったが「友達の作った曲だよ」とシムが紹介し、男性ボーカルのゲストがいきなり登場した。
 
 イントロに導かれ、ステージ後方の幕のすそがぱっと上がる。
 白人男性がコミカルなステップでステージを練り歩き、力強く"Ancient Chinese Secret"を歌った。
 曲が終わるとそのまま、あっけなく舞台を去る。なんだったんだ。
 有名な人がヒット曲を歌ったのかもしれないが、残念ながら詳細不明です。

 それともう一箇所。やはり中盤。演奏中に客席後方から、大量のシャボン玉が振りまかれた。
 たぶん盛り上がった観客が、噴出させたんだと思う。
 風に乗ってステージ前へとたくさんのシャボン玉が飛んでゆく。

 聴いてるぼくらの身体をシャボン玉が包む。
 ゆったりしたリズムに乗って、ライトに照らされた大量のシャボン玉が舞う。
 そんな昼下がりの風景は、とてもきれいだった。
 
「この曲でステージは終わりです。またすぐ日本に来るよ」
 シムが告げて1曲演奏して、幕を下ろす。

 持ち時間は一時間半ほど。15曲くらいやったかな。
 舞台慣れしてるようだが、もうちょいエンターテイメントを意識して欲しい。
 ライブハウスならまだしも、屋外ステージじゃ間が持たないよ。

DJ Quietstorm

 メインステージの横にサブステージが組まれ、セットチェンジの間を持たせる演出。
 いいんだけどさ。なおさら席を立ちづらい。

 サブの別舞台もあるんだから、いっそいさぎよくBGMに変えたら?
 そうすりゃ人の動きも出て、物販や飲食物の売り上げも上がるはず。
 ・・・まあ、経営的なことはいいか。どっちみち大雨で動くの面倒だったし。

 冒頭はピンク・フロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐」に、なにかをミックスした盤から。
 ビートを効かせてエレクトロニカ風に盛り上げる。
 ぼくは気づかなかったが、ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」なんかもまわしてたそう。

 1時間くらいやってたかな。今まで座って聴いてた人を盛り上げ、ついには何人も踊らせる底力を見せる。
 とにかく聴いてて飽きませんでした。

 余談ながら。客席の右翼、後方のテントスペースのあたり。
 ポイをDJにあわせ操る女の子がいた。たしかこの時間帯だと思ったが・・・違ったかな。
 なんにせよ。ふわふわリボンがくるくる回るさまが綺麗だった。

 そしてDJは終わったのに。
 まだ次の演目をセッティング中。レゲエのBGMが鳴る。
 何のためのサブステージなのよ。DJって延々と時間を気にせず廻すものかと思ってた。

Mighty Crown

 15分くらいかなあ。レゲエのBGMにあわせ、うとうと寝てた。
 メンバーのMCで、がっと目が覚める。

 Mighty Crownは4人組のレゲエ・サウンド・システム。
 99年には世界大会で、ジャマイカ人以外として初の優勝を飾ったそう。
 MC役は一人だけ。帽子を目深にかぶり、威勢良くまくし立てる。

 他の3人はレコードを選ぶ役目か。
 時間帯で分業してるようで、一人は忙しく動くが、あとの2人は暇そう。
 客席へ背を向けたりで、ただレコードを繰るだけ。
 いっそ二人体制のほうが、スリリングさが増すと思う。

 サウンド・システムって、ライブ初体験。かなりけたたましいが、リズミカルで面白かった。
 一枚のレコードを物によっては10秒くらいで切り替えてしまう。
 めまぐるしくレコードを紹介し、低音を強調して踊らせる。なによりMCで観客を煽り立てた。

 さまざまな掛け声で観客に手を上げさせる演出は、政党のプロパガンダみたい。
 いまいち賛同できないが・・・まあ、大規模コンサートってのはそういうもんでしょう。
 ともあれオールドスタイル、ダンスホール、新曲とさまざまなレゲエを矢継ぎ早にかけ、客席前方は大盛り上がりで踊ってた。
 
 力強く吠えるMCは小気味好いが、使う言葉に慣用句が多くて残念。
 「I tell Yo〜!」とか「your mind got so!(って言ってたの?)」って言葉の、響きが気に入っちゃって。
 喋る内容は聞き流して、その連発を楽しみにしてました。ごめん。

 ステージは45分くらい。次の出演者を思い切り盛り立て、前座役をきっちり果たした。

Jimmy Cliff

 実は"ハーダー・ゼイ・カム"すら、ロクに聴いたことない。
 まったく事前準備なしでジミー・クリフのライブを体験した。
 60歳前くらいらしいが、すさまじいステージにぶっ飛んだよ。

 まずバンド・メンバーのみがステージに現れた。
 せっかくMighty Crownがキビキビ盛り上げたのに、ここでちょっと間が空いて惜しかった。

 全員黒人のミュージシャンで、ds b g key+cho Key+ts tp+cho(male) cho(female) perの8人編成。
 最後にメンバー紹介をジミーがしてたが、聞き取れず。皆がオレンジ色のTシャツでまとめてた。
 
 一曲目はインスト。軽いソロ回しでバンドの力量を見せ付ける。タイトで上手いよ。
 演奏の場面が次々変わる。ヒット曲のイントロをメドレーで演奏かな。
 トランペットを吹いてた男が名前を連呼。ジミーがついに登場した。

 しょっぱなから手足をぶんぶん振り回す。
 汗止めらしきヘアバンドを巻き、メンバーと一緒のTシャツへ、同じくオレンジ色のスーツ風上着を羽織ってた。

 なによりすごいのは声。びんびん響き、ハイトーンも声量もたいしたもの。
 全盛期の声って、一体どのくらいあったんだ。
 前述通りまったく曲を知らないため、これまたセットリストはご勘弁を。
 キャッチーなリフが多く、一聴してすぐに客席から歌声を送れる。もしかしたらヒット曲を片端からやってたのかも。
 「新譜から一曲」ってMCもあったけどさ。
 聴き手を踊らせつつ、サビを思い切り長く取る。コール&レスポンスをひっきりなしに観客に参加を求めてた。

 ベテランらしいステージ進行は、堂に行ったもの。
 切れ目なしに進行させつつ、曲はバラエティに富ます。

 シンプルなレゲエももちろんあるが、ロック風のリズムを取り上げたり、アフリカンにグルーヴしたり。
 聴いてて飽きない。体力へロッてて、つらいものはありましたが。
 ぐいぐい盛り上げぱなしで、息をつかせないんだもん。

 ジミーは腕や足をぶんぶん降って練り歩き、ステージが狭く見える。
 コーラス役の二人も積極的にメインで歌わせ、舞台の絵柄にメリハリをつけた。

 しかし、あくまで主役はジミー・クリフ。
 中盤から後半にかけ、コーラスの女性がかなりフィーチャーされた。
 モニター・スピーカーに片足かけ、腰をセクシーに振って歌い、客を煽り立てる。
 なのにスポット・ライトはジミーを常に狙い、彼女へスポットはあたらない。
 常に主役を意識させる。ショー・ビジネスの冷徹さをあらわにしてました。
 ・・・単純に会場でピンスポットの本数を、制限されてたのが理由ならご勘弁を。
 
 タイム・テーブルでは、彼の持ち時間は一時間半。たぶん、フルで駆け抜けたはず。
 中盤でバラードを一曲。すっとバンドメンバーが袖へ消える。
 観客はライターの火を灯し、ゆっくり揺らした。

 一息ついたのはここくらい。あとはほとんど、猛烈なテンションがぶっ続け。
 動きっぱなしのジミーの背中に、汗染みが浮かんだ。
 そして汗染みは肩から胸へ進行し、ステージ終盤ではまるでツートン・カラーのように、汗で上半身がずぶぬれだった。

 大雨でけっこう気温は低いはずだが、客席も熱気いっぱい。
 残念ながら動員は満員ってほどでもなかったのが幸いか。
 観客席前方はどんどん密集し、踊りまくる人で埋まった。

 ジミーはコール&レスポンスでも工夫する。客席の両翼にリフを歌わせ、声の量を競わせた。
 「こっちのほうが、大声で歌えてるぞっ」
 "大きな声援"と見なしたほうで幾度か歌わせ、今度は反対側へ。
 「反対側はどうした〜!同じように出来るだろうっ」
 と、あおって歌わせる。

 歌だけでなく、両手を上げさせ左右に振る。
 振り付けを真似させてもいたな。曲名不明だが、
 "I want I do I get"って歌詞。
 両手を上に上げ、次に胸の前で振り回す。最後は腕を胸の前で交差。
 シンプルなメロディに乗って、観客に参加を促した。

 "ハーダー・ゼイ・カム"は終盤に登場。
 かなり盛り上がっていた。
 
 次に初めて、ジミーがエレキ・ギターを抱えた。
 右利きのギターをくるりとひっくり返し、左利きの格好でストロークを。つたないギターだが、雰囲気は伝わる。

 さらに一曲やって、たしかライブ本編は終わりになったはず。ここで見事な股割りも数回、披露した。
 演奏が続く中まずジミー、次にメンバーらが去る。
 しかし薄暗くなったステージでは、素早くパイプ椅子がいくつか用意された。

 観客の声援に答え、アンコール。
 ステージ下手に据えられた大太鼓を、ジミーが幾度も叩いてみせる。
 
 そのビートを基本に、メンバー数人がパイプ椅子に座った。てんでにジャンベらしきものを叩く、シンプルなアレンジ。
 他の楽器は、たしかキーボード一台のみ。ジミーもジャンベを叩きながら歌った。

 単純なアレンジであるがゆえ、ビートの乗りはかっこいい。
 エンディングはやはりコール&レスポンスで終わったっけ?

 メンバーが全員ステージから去って、舞台の明かりが落とされる。
 盛りだくさんで濃密なステージに満腹してた。

 次のDJがサブ・ステージで準備を始めてるみたい。
 ところが。
 さらにメンバーが登場、本当のアンコールが始まった。
 すげえ。まだやるんだ。

 最後はアップテンポ。
 上着を脱いだジミーのTシャツは、もう隅々まで汗でぐっしょり濡れている。
 ラストに一曲、派手にぶちかまして、ほんとうに彼らのライブが終わった。
 アイズリー・ブラザーズを見たときも思ったが、ほんと黒人音楽は体力あるわ。ジミーをまったく知らないぼくでも、胸を揺さぶられたもん。

 このあとDJを挟んで、トリにMedeski Martin & Wood とCyro Baptistaのセッションあり。飛び入りゲストの可能性もあったそう。
 しかしもうおなか一杯。ジミー・クリフの余韻に浸って帰ることにしました。

 すっかりへとへと。でも、いやはや惜しい。
 体力万全で好天だったら、さらにイベントを楽しめてたろうな。

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