LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
04/7/27 大泉学園 in F
出演:太黒山
(太田恵資:vln,etc.、黒田京子:p、山口とも:per)
このユニットのライブは今回が3回目だそう。
山口ともは初めて聴く。自作楽器がメインのパーカッショニスト・・・だろうか。
髪を横へなびかせ、もみ上げを丸くまとめる。ぷくっと膨らんだ薄いサングラスに黄色いカッターシャツ。さらにネクタイをきっちり締めた、派手なステージ衣装だった。
彼のセットは自作のようで、ドラム・スタンドへさまざまな鳴り物をくくりつける。小さなハイハットとライド・シンバル以外は、日常雑貨も多用。
容量20リットルほどのポリタンクと、ベコベコの灯油缶をタムみたいに小高く積む。シンバルは鉄板も使ってたようだ。
ポリタンと灯油缶のタムで正直、ぼくの席からは山口が見づらい。手元で何を鳴らしてるかが、さっぱりわからず。
ライブなんだから演奏する姿も見たいよ。これがちょっと惜しかった。
店内は満員の盛況。太田によるメンバー紹介のあと、ライブへ。
今夜は全て即興演奏。派手な展開を予想してたが、ぐっと構築された音楽だった。
<セットリスト>
1.即興(約20分)
2.即興(約20分)
3.即興(約8分)
(休憩)
4.山口とも・ソロ:即興(約5分)
5.黒田京子・ソロ:即興(約5分)
6.太田恵資・ソロ:即興(約5分)
7.即興(約20分)
(アンコール)
8.即興(約10分)
まず3人が無言で交わした視線。静寂の中、ゆっくりと山口が腰掛けた椅子を左右に回す。
きい。きい。
かすかな軋み音が、in
Fに響いた。
太田はアコースティック・バイオリンを構え、加わるチャンスをうかがう。
軋み音へあわせ、弦を静かに爪弾いた。
黒田が音を重ねたのはしばらくたってから。ピアノと噛み合わせて、太田はトラッドっぽいメロディを奏でた。
やがてエレクトリック・バイオリンへもちかえる。楽器の変化を力強く、ピアノが支えた。
山口はドラム風に楽器を組んでいるものの、複合ビートはほとんど出さない。パーカッション的なノリで、手元で床に置いた何かをランダムに連打した。
いきおい音像を支えるのは、黒田のピアノになる。
奔放に旋律を降りまくバイオリンと対話しつつ、音が広がった。
全員が互いの演奏を聴くスタイルで、興の趣くまま猛烈に突っ走るシーンはほとんどなかった。
むしろストイックなイメージが強い。
もっとも山口のインパクトが強くて、どこかコミカルな雰囲気が常に漂う。ライブを見てる時には、だが。
もし今夜のライブを音だけ聴いたら、シリアスな印象をまず受けるのでは。
話が飛んだね。まだ一曲目の即興の感想だ。
綺麗なメロディをいっぱい弾いた太田が、ホーメイへ切り替えた。
バイオリンを弾きやめて山口を見つめる。倍音を効かせた歌を続けながら。
ピアノも演奏をやめてたかな。
山口は太田の声の挑発に乗らず、黙って見つめ返す。
再び。みたび。太田は一息つきつつ、山口へホーメイをぶつけた。
それが、1曲目のエンディングだった気がする。
すぐに次の即興へ。こんども山口がイントロ。背を向けて音を出す。べいん、べいんと何かが響いた。
どうやらゴムひもをひっぱり、ハンド・パーカッションへ当ててたみたい。
たまに狙いがくるった鈍い音が、観客の笑いを呼んだ。何度か繰り返すうちに、紐の先っぽが結べてしまう。
ちょっと持ち上げて戸惑い顔の山口だが、かまわず演奏を続けた。
いつしかピアノもバイオリンも加わってた。
太田が細い縦笛を引っ張り出し、ずっと吹いてたのはこの即興だったかな。
どの曲か忘れたが、ハナモゲラ日本語を歌いつつ、バイオリンを弾く姿も楽しかった。
山口はゴムチューブらしきものを幾本も握ってキイキイ鳴らしつつ、「裏庭には二羽ワニがいる」とつぶやいて、観客を笑わせる。
影響を受けたか太田は、ゴム製のワニのオモチャを持ち出した。
尻尾の部分を弓代わりに、アコースティック・バイオリンを弾く。さすがに音はあんまり出なかった。
ついでに即興でって口ずさむ。
「ブラームスが好きでよく練習している〜♪いつ本番があっても大丈夫〜♪」
先日、ブラプロを聴いた、マスターを含む一部の客に大受けだった。
即興が二曲終わったところで「そろそろ休憩にします?40分くらいたったし」と太田が提案。
「3分くらいやりましょう」
山口が応える。くるりとほかの二人に背を向け、木の箱をマレットで叩いた。
平らな板に見えたが、叩く箇所で音程が変わる。どういう仕組みだろ。
一人で演奏する姿を、太田も黒田も静かに見つめる。
くるっと振り向く山口。
「演奏しないの?」って問いかける視線に笑った。
再び演奏に戻る山口。
しかし、太田も黒田も演奏しない。
・・・しばらくして、また山口が振り向いた。
こんどはバイオリンもピアノも、静かに演奏へ加わった。
休憩を挟んだ後半は、太田のアイディアで各人のソロから。
順番はじゃんけんで決めたが、最初の数度は見事にあいこが続いたな。
山口が勝ち抜け。勝ったらどうするか決めてなかったが、結局はトップ・バッターを選んだ。
「山口さんのあとにやるのはつらいなー」とつぶやく太田。
そして山口が演奏したのは、塩ビ(?)のチューブを縦に並べた自作楽器。
Warehouseが"ブンバカ"で演奏するチューブ・パーカッションみたいなやつ。・・・えらくマニアックな説明だな。すみません。
音を出し始めると、きっちり音程が刻めてて驚いた。
MCによれば偶然の産物な楽器だそう。本体より「ケースに5万かけたんですよ!」と苦笑してた。
ランダムな演奏からメロディへ。「さくらさくら」や「ずいずいずっころばし」に繋げる。
フリービートでとつとつとつぶやく「ずいずいずっころばし」がクライマックスか。
続く黒田は「自分がどこにいるかわからない」「このあいだの調律士にピアノをいじってもらった」と即興でふうわり喋り、合間へピアノを挿入する。
山口の即興へつなげたか、黒田も「かごめかごめ」(だったかな?)を弾いた。
クラシカルで幻想的で。硬質なタッチがとても綺麗だった。
最後の太田は「やりにくいなー・・・ここでお時間が来てしまいました」
苦笑しながら、観客を笑わせる太田。「ブラームスは?」と客席から突っ込みが入る。
思いっきり「ぶらぁむす〜?」と太田が顔をしかめてみせてたな。
「日本風メロディが続いたので・・・」
前置きしたけど、まったくかまわず。アラブ風に歌いながらエレクトリック・バイオリンを弾きまくった。
ディレイとサンプリングを駆使した多重奏法がすばらしいのなんの。
ときおりカットアウトさせ、がらりと音像を変える構成が見事。
ふくよかなメロディや、ボディを叩く鈍い音をたくみに織り交ぜ、トラッド風の旋律を多用したソロだった。
激しく弾いても、音の根本に美しさがある。
最後に行われた3人の即興。これがとびっきりの名演だった。
前半セットはコミカルな要素もあったが、ここではぐっと音が引き締まる。
しかしステージの絵柄は、聴き手を圧迫させない。したがってリラックスした緊張を味わえた。
さまざまなパーカッションをランダムに叩く山口へ、黒田と太田がメロディアスな即興で畳み込む。
ときおりピアノとバイオリンによるフレーズの交換も。
アコースティック・バイオリンがソロで弾きまくってるとき、二度ほど黒田が明るい音像を提示。いわゆる転調か。
鍵盤一打ちで音世界をがらり塗り替え、サウンドを引き締める手腕に感動した。
太田はバイオリン以外の楽器演奏も盛り込む。
店に並んだ人形を手にとって「1号」「2号」とつぶやいたり、持ち込みのパーカッションをいじったり。
ちなみに今夜はハンド・パーカッションは使わなかった。
さらにリード付きの木笛も、じっくり吹いていた。
山口はそこらじゅうのものを叩く。しまいにはステージスペース奥に飾ってあった、日本酒の瓶も。そっと気を使って叩いてた。
この即興では冒頭に、後ろへ並べた鉄の鉢を叩いたかな。
ラストは三人で音像を高めあって終わった・・・はず。
この感想書くまで時間空いちゃったので、メモを見てもいまいち記憶が蘇らないや。
「なんか中途半端ですけど・・・おわりましょうか?」
太田が一声かけて、本編が終わった。
当然、拍手がやまない。
アンコールに応えた最初は、太田と山口のネタ合戦。
手元が見えないが、山口がなにやらざらざらこする音を出す。
おもむろに「入園式」と一声。
太田が乗って、メガホンを使って怒鳴ったり、笙を吹いて「神前式」など、立て続けに7〜8種類、やったはず。
なかなかオチないので、えんえん続いた。
黒田はずっと微笑みながら眺めてる。
が、山口がギロ風にスタンドをこするシーンあり、太田がきょとんとした瞬間。黒田が一声かけた。
「ケイスケさん、花火見に行かない?」
「あー、なるほど」
頷く太田。花火の音模写だったのか。
最後は三人の合奏による即興。
エンディングは山口のみが残り、テンポを落としながら音量を下げてゆく。
シメで太田がバイオリンの弦を爪弾こうと構えた。
ところが気づかずに、山口は呼吸を緩めて演奏を終えてしまう。
入り損ねた太田は苦笑してた。
最後の最後までコミカル要素も盛り込んだ即興だった。
きっちり構成を意識した即興もいいなあ。特に山口。相手のリアクションを拾って舞い上げるタイプじゃなさそう。
自作楽器のインパクトが強くて、山口の個性までつかみきれなかった。手数で勝負するタイプじゃなさそうだが。
ユニット名義だし、次のライブもあるかな。聴いてみたい。