LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
04/7/18 高円寺 Penguin House
〜日本万音楽博覧会:音楽の進歩と調和〜
出演:MUMU,Optrum,Conti
Contiの仕切りによるイベント。演奏前には大阪万博時代のラジオ放送らしきアナウンサーの喋りも流される。
フライヤーは入場券風の凝ったもの。「割引入場券:青年」とにじんだ文字が目立つ。これは当時のチケットから転用したの?
立ち見も出る盛況な入りだった。けっこう年齢層が若くて、居心地悪い。
Conti
(小林拓馬:ds,vo、鹿島信治:sitar,vo)
冒頭に一曲PAから流し、それのコピーからスタート。
初めて聴く曲だけど、歌詞から想像するに四人囃子"空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ"かな?
エレキギターをシタールで代用し、小林が叩きながら歌う。二人きりなのにあんがい雰囲気出てて楽しめた。
本編は変拍子を多用し、スタート&ストップを多く織り込んだデュオ。ルインズほど切迫感はなし。
ビートがジャストで、クラブ・テクノっぽい空気もあったな。
シタールは響きの面白さから取り入れてるようで、インド音楽との親和性はなさそう。
グルーヴはあえて排除し、切れのよさを追求したか。約40分の演奏。
Optrum
(伊東篤宏:Optoron、進揚一郎:ds)
オプトロンとは蛍光灯とノイズ発生をリンクさせた自作楽器らしい。
大きな蛍光灯がステージ中央に立てられる。ステージは暗闇に包まれた。
伊東はテーブルの上に各種エフェクターを並べる。機材のコードが錯綜し、どういう仕組みでノイズを出してたか不明。
進が暗闇で手を上げるのがぼんやり見えた。それが合図で、一気にノイズが炸裂する。
断続的に蛍光灯がストロボ風に照らされては消える。ハーシュノイズがばら撒かれた。
、そこへドラムはタイトに切り込んだ。
ライティングなど何もなし。伊東が操る蛍光灯のみが照明。
かなり高速でスイッチングしてるのか、ちかちか瞬く照明はかなり目に厳しい。
轟音とあいまってふらふらしてきた。
延々とこの調子だったら、めげてたかも。
実際は進がかなり頻繁に合図を入れ、演奏をスタート&ゴーさせる。
曲があるとは思えないが、きっちりコントロールされメリハリあるノイズだった。
連続明滅する蛍光灯の明かりが瞳に残像を残し、波のように広がらせる。
パルスっぽく叩きのめすドラミングと、一本調子に押す電子音のからみが心地よい。
ステージは約20分。視覚的にきついのが難だが、じっくり聴きたいノイズだ。
進は勢いあまってめがねのフレームをすっかりひん曲げてしまってた。
MUMU
(植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂本一孝;key)
毎月ライブをやってる彼らだが、ぼくは今年の4月ぶりに聴く。
前に演奏したOptrumの演奏が気に入ったのか、なにやら進と植村が話してた。
しばらくしてセッティングが完了。かなり狭いステージのスペースなためか、植村はシンバル以外は店のセットを使用。
思いっきり割れたシンバルのスタックをセッティングしてたのが目を引いた。
まずはセットリストを。いつもどおりMUMUのHPから引用です。
<セットリスト>
1.ワンピース #1
2.03/10/2
3.2004
#2
4.2004 #6
5.2004 #1
(4)以外は4月のライブでも演奏された曲ばかり。(4)が先月の新曲。
7月の新曲は、今月末のBinsparkで披露予定らしい。
さて、まず結論から。
すごい。こんなMUMUを初めて聴いた。今まで幾度も彼らのライブを聞いたが、5本の指に入る名演だった。
今夜のPAはぐっと低音を強調し、床からびりびり低い音成分が伝わってくる。
狭いスペースでみしゃっとワイルドに、音を作ったのが功を奏したか。
なんだかタフで凄みあるMUMUだった。あ、ドラムは生音ですが。
どの曲もサイズをかなり長くしてるみたい。
特に(2)。中盤でブレイクをいれ、15分くらい演奏してた印象ある。
(1)も聴き覚えないフレーズあり。ライブでしか聴けないMUMUだから、ぼくの記憶違いの可能性も多分にあるが。
「ひさしぶりに"ワンピース
#1"をやりました」
ひげを蓄えた中根が今夜も司会役。
律儀に今夜のテーマを紹介するが、「日本万音楽博覧会?音楽の進歩と調和?」と、客席で聴くContiにいちいち確かめるさまが笑える。
ちなみに坂本は律儀に、Contiが今夜のために作ったTシャツを着込んでた。
植村は『今夜は眼鏡ドラマー・ナイトだ』とつっこむ。
途中で眼鏡を壊したOptrumの進は「権利放棄」で、自分らが金メダルか銀メダルは確実だ、とコミカルなMCを。
スタッフ側から「植村さんも眼鏡壊して〜」と声があがり、「これ一個しかないから、壊したら大変」と笑う。
中根は「自分も眼鏡かけてきたけどだめかな」とおどけつつも。
「アドリブ効かないからMCをちゃんとやらせて」と慌ててたのがおかしかった。
MUMUの恒例で、(2)〜(4)は続けて演奏される。
テーマのテンポがガラガラ変わるのが(2)だっけ?
坂本と植村がきっちりアイコンタクト交わしつつ、滑らかにテンポを前後させた。
今夜はソロ・パートっぽい部分もいくつかあり。
坂本のキーボードは着実に響き、低音がみりみり足元から伝わる。
エンディングを完全に支配した曲も。どの曲か忘れたが・・・。植村も中根も弾きやめ、フェイドアウト気味にフレーズを繰り返す。
なかなか終わらせず、延々と音世界を構築する姿が新鮮だった。
ドラム・ソロっぽい瞬間が(2)や(5)であった。
無伴奏ではないがシンバルを軽やかに打ち分け、飄々とリズムを操るさまがかっこいい。
トロンボーンのソロはふんだんに。
もっとも中根はじっと譜面を見つめており、どこまでソロか今ひとつ分からない。
今夜は低音を鈍く強調する音色で鳴る。抜けの悪さがスリルを増していた。
そう、今夜はMUMUの演奏に、はっきりとグルーヴを感じた。
本人たちがどこまで意識したかわからない。だけど(5)の演奏は、ほんとうに"ジャズ"だ。
3人が一丸となって突っ走り、アンサンブルが組みあがる。緊張感たんまりの猛演だった。
MUMUの演奏は、時期によってだいぶ違う。
初期はキュートでタイトで複雑怪奇。だが昨年くらいはメロディにだいぶ軸足置いた演奏に変わった。
さらに今年はリズムとメロディが一体化した、独自のアンサンブルが構築されてると思う。
しかし、今夜の演奏はさらに凄い。ほとんど書き譜とおぼしきテーマの部分すら、楽器の交錯がタイトに吠えた。
ラストの曲で中間部のトロンボーンのソロを軸にした、ドラムとキーボードの、がむしゃらな掛け合いったらない。
極上のやり取りを夢中になって聴いていた。
盛大な拍手が飛んだが、アンコールはなし。約50分ほどのライブだった。すぐに楽器を片付け始めるMUMUの綿々。
フライヤーに「もう一つこの三組を繋ぐ何かがあります」と書かれてたので、共演でもあるかと期待したが、かなわず。
植村が言ってた眼鏡ドラマーってのがその「繋ぐ何か」かな。