LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/6/9   西荻窪 アケタの店

出演:三上寛デラックス
 (三上寛:vo,g、明田川荘之:p,key,オカリーナ、藤川義明:as,ss,fl、石塚俊明:ds、田中倫明:per)

 アケタの店「30周年記念セッション」で企画されたライブ。
 この店ではなじみのコンビな石塚俊明に加え、オーナーの明田川も加わる(ちなみに3人でのセッションもCDで発表済)。
 さらに藤川義明と田中倫明という大所帯な編成となった。
 
 まさにメンバー紹介の前。
 「ふだん一人で演奏してるから、メンバー紹介ってやらないなあ」
 と、三上寛がぼそっとMCで喋ってたっけ。

 観客は次々来場、時刻は19時50分ころ。
 おもむろに三上がステージへ上がり、エレアコを肩からぶら下げた。
 他のメンバーが順に楽器を構える間、無造作に日本情念的なフレーズを爪弾く。

 ギターへパーカッションの二人がリズムを合わせる。
 そして、自然発生的にライブが始まった。

 トシはずっとドラム・セットを演奏。後半で、ちょっとシェイカーを振ってたな。
 スティックやマレット、ブラシを使い分けるものの・・・とにかく音がでかい。生音なのに。
 三上がギターを強くかき鳴らすと、他の楽器はほとんど埋もれてた。
 一番不利だったのは明田川か。ピアノのほかにキーボードも持ち出したが、ほとんど音が聴こえずじまい。残念。

 田中はコンガを三つ並べ、素早く叩きのめす。
 パーカッシブなトシのドラミングと重なり、独特のファンクっぽさが産まれた。
 三上の曲は詳しくないので、残念ながらセットリストは書けない。珍しいレパートリーをやってたかもしれないが・・・。

 この日はとにかく小節感が希薄で面白い。
 三上や明田川の演奏へほんのわずか小節を感じるものの、基本はフリー。
 そもそも三上の歌そのものがノーリズム。自由にテンポを揺らがせ、歌声を聴き手の耳へ叩き込んだ。
 声色も変幻自在。喉を絞り、時にファルセットで吠える。
 歌詞は完全に聞き取れない。しかしたまに聴こえる言葉の一つ一つが、すごく脳髄に響いた。

 三上の音楽と相性良くてびっくりしたのは藤川のサックス。
 前半一曲目こそ三上の世界観にあわせるような音作りだったが、曲を重ねるにつれ、がんがんフリーになる。
 フラジオを織り交ぜつつも、メロディアスなプレイが多かった。

 サックスの文脈は完全フリージャズなのに、三上の歌声とぴったりはまる。
 最初はアルト、そのあと2曲はカーブド・ソプラノ・サックス。
 あとは曲によって、フルートやサックスを持ちかえる。ときにサックス二本吹きも披露した。

 冒頭の2曲はまず、全員が怒涛で弾き倒す。
 ステージ中央に立った三上は、歌の合間もおとなしくしてない。
 空を見つめ、力強くステップを踏む。次第に顔が赤く染まり、汗が滴った。
 その横で藤川が飄々とサックスを吹いた。時折、軽く足を上げ。
 濃密で暖かい空間だった。

 パーカッション二人の手数で埋め尽くし、三上のエレキギターも大きく鳴った。
 アドリブ部分はほぼ全て、藤川がつとめる。明田川の音がほとんど聴こえなかったのは、前述の通り。

 前半セットの中盤、明田川が「インバを」と一声かけた。
 これは彼の曲かな。つぶやくように三上は演奏へ、言葉を載せた。
 4曲目かな。ちょっと音を抜き気味に、三上がイントロのフレーズをギターで提示する。
 一息ついて藤川のサックスが滑り込み、明田川はキーボードの鍵盤を押さえた。
 この曲では隙間の多い静かなアレンジだった。

 今日のメンバー、セットリストを用意し演奏してないかも。
 誰一人譜面なし。奔放な歌声にそれぞれがランダムに絡み、ぐいぐい盛り上がっていくスタイルだ。
 そのわりに三上は曲名すら言わない。曲が終わると一声吠え、すぐに次のイントロを爪弾いた。
 
 リーダーは間違いなく三上だが、アレンジの指定は奏者へゆだねていた様子。
 だからエンディングのキメがあわず、しばしば雪崩たのはご愛嬌か。
 前半セットは50分くらいやってたかな。
 MCは特になし。「30周年おめでとう」って挨拶を三上がしたくらい。
 曲名、喋ってくれないかなあ。膨大なCDを出してるので、とても全部は付いていけない。
 聴いたことある曲も、歌ってた気がする。

 後半戦は、バックの演奏も立てたアレンジが多かったと思う。1セットはとにかく三上の存在感で押し切ったもの。
 やはりセットリストがあるようには見えない。
 一曲終わると拍手する隙もなく、すかさず次のイントロをギターで弾くシーンもあった。

 明田川のピアノもボリューム上がり、いくぶん聴きやすい。だけどパーカッションの二人がテンション上がると、やっぱり埋もれちゃう。
 あれは隙間の多いアレンジな曲を演奏してるとき。中盤だったかな。
 一曲だけ、オカリーナを明田川は吹いた。

 トシのドラミングは勢いばっちり。
 スタックしたシンバルの鈍い響きをアクセントに、バスドラをガンガン踏み、盛大にスネアを叩き込む。
 田中の細かい連打もかみ合って、パワフルなリズムだった。

 リーダーシップを奏者がとる、最初のきっかけは藤川だった。
 歌声の途切れた瞬間、サックスのソロへ。最後にR&B(だっけか?)っぽいフレーズを数度繰り返す。
 すかさずトシと田中が乗っかって8ビートを提示。ぐんぐん疾走した。

 次の曲あたりで明田川が、キーボード・ソロで曲を演奏。聴き覚えあるメロディだが、曲名思い出せない・・・悔しいなあ。
 ソロのオマケじゃなく、メロディを通して弾く。
 奏者らはすかさず付いていけるが、三上はギターで追随は苦しいか。音数を極端に抑え、半身を引いてちょっと残念そうな様子だった。

 後半の最大の盛り上がりは「夢は夜開く♪」って歌詞が繰り返される曲。
 けっこう長めにやってた印象あり。心地よくって。夢見心地で聴いていた。
 クライマックスはやっぱり怒涛。クラスターが飛び交った。

 時間は21時半を回ってた。
 観客からの拍手はやまず、客電がついてもずっとアンコールを求める。
 店の外で一息ついた三上が、おもむろにステージへ上がる。

 最後はエレキギターの弾き語りで二曲、歌ってくれた。

 三上のライブを見たのはずいぶん久しぶり。しかし聴いた瞬間、彼の世界に引きずり込まれた。
 説得力ある歌を、そして歌の世界を壊さず自由に奏でる伴奏を、堪能できた。あとはもうちょい、明田川が目立って欲しかったな。

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