LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/6/6   新宿 PIT-INN

出演:Coil
 (鬼怒無月;g、vo、早川岳晴:b、田中栄二:ds、guest:中山努:key)

 Coilのワンマン聴くのは昨年の7月、鬼怒無月のバースディ・ライブぶり。
 この日は他にも面白いライブあったが、仕事でくさくさな気分を解消したくてCoilを選ぶ。やー、すかっとしましたよ。

 朝からの雨模様がたたったか、客足はかなり少なめでびっくり。
 曲が多いせいかMCは控えめ。さくさく演奏が進む盛りだくさんなライブだった。
 ちなみに観客として渡辺隆雄の姿も。

 物販コーナーになぜか是巨人の1stあり。なんでだ?首をひねったが、鬼怒が単に間違えて持ってきたそう。
 是巨人の2ndにWarehouseの2nd、Eraの2ndとリリース・ラッシュだな。

<セットリスト>
1.Big games
2.Eleki dragon
3."Funk"(仮題)
4."アフロ"(仮題)
5."6月3日"
 (休憩)
6."04.5.10"
7.Jumina
8.Sand
9.プロディガル・ソング(?)
10.Hot ax
(encore)
11.Spoonful
 *guest:中山努:key:3〜5,8〜11

 1stの曲から未CD化曲までバラエティに富んだ構成だ。

 20時をちょっとまわったころ。まずCoilの3人がステージへ上った。
 
「2曲続けてやります。・・・久しぶりにやる曲ですね」
 前置きして、鬼怒はギターを構えた。
 ギターの音を長く伸ばす。

 無伴奏チョーキングがイントロ。
 早川と田中のビートが跳ね、一気に音が突き進んだ。

 バンダナでなく帽子をかぶった早川は時折アンプへ視線を向け、音飾をいじる。
 くいっとマイクスタンドを横へ向け、力強くエレキベースを鳴らした。
 確かこの曲でベースのソロはなし。
 ただしエンディング間近に一弦を開放のまま弾き、他の弦とフレーズを組み立てたサウンドが印象に残ってる。

 田中はライドシンバルを叩きまくり、バスドラを力強く踏む。
 よく見えなかったが、もしかしたら両足でひとつのペダルを踏んでたかも。
 ハイハットはぴくりともしなかった。

 ドラムのセッティングがかなりトリッキー。田中にとっては普通なの?Coilは久々なので、よくわからない。
 ハイハット寄りに小高くタムを二つ並べ、左奥にスネアを置く。
 右手のかなり遠くにクラッシュ・シンバルをぶら下げ、腕をぐんっと伸ばしてダイナミックに叩いてた。

 コーダからすみやかに次の曲へ。一曲目は10分くらい。あっというまだ。
 "Eleki dragon"のテーマはユニゾン。ブレイクするとぐっと音が静かになる。
 ドラムをきっかけにアップ・テンポへ、そしてベースのソロにつなげた。
 最初はゆったり。しだいにフレーズが早くなる。
 貫禄のアドリブだ。早川はがっしりと弦を指でかきあげた。

 ドラムとベースのコンビでブレイクを繰り返す。サイケなギターソロへ。
 田中は勢い余って、この曲だけで2回ほどスティックを取り落としてた。
 とにかくベースとギターが織り成すアンサンブルが気持ちいい。

 タイトル未決定な"Funk"からゲストが加わる。まずは鬼怒が中山を紹介。
 「前に共演したのは・・・一年ぶりだっけ?」
 と喋ったとたん、最前列の観客からツッコミ入る。そのあとにも共演したの、鬼怒自身が思い出せなかったみたい。
 「難しいことは置いといて」と、あっさりごまかし可笑しかった。

 「いっぺんに二つのことできないんですよ。今日もコーヒー飲みながらご飯食べようとして・・・コーヒーで米を炊いちゃった」
 わけの分からない鬼怒の言い訳に、早川らがウケていた。
 
 喋りを切り上げ演奏へ。中山はウーリッツァとムーグを持ち込む。ほとんどはウーリッツァを弾いていた。
 この曲のみピックでベースを演奏。リフを重たく繰り返す。
 キーボードのソロでは、腕を休ませペダルのみで早川は低音を操った。

 キーボードはオルガン風に鍵盤を鳴らした。田中がスネアの連打であおる。
 そして突入、ギターのソロへ。鬼怒は猛烈なスピードで駆け抜けた。

 "アフロ"はアフリカ音楽を意識したのかな。タム連打のリズムは、なんとなくアフリカン。たぶん4拍子。
 アレンジの肝は早川のベース。指弾きに戻して、がっちり音の背骨を形どる。
 鬼怒はついばむようなフレーズで、低音に絡んだ。

 テーマはベースとキーボードがユニゾンで刻む。こういうユニゾンのアレンジ、今夜は目立ったな。
 「静かめな曲」と鬼怒は演奏前に評す。たしかに隙間が多い曲。
 ころっとしたまとまり良さがある。

 前半最後"6月3日"は鬼怒の未発表曲。
 Harpyのイトケンとのテープレターで作曲されたと説明する。4chテープでリズムはイトケン、メロディを鬼怒。そのテーマが気に入って、流用したらしい。

 「中山くんと共演のために選んだんだよ。使い回しじゃないよ」
 と、慌てて笑う鬼怒。言わなきゃわかんないのに〜。

 キャッチーなメロディが意外だった。7拍子というが、8拍子や9拍子も混ざってそう。
 アレンジの主軸をほとんど中山に渡し、鬼怒はストローク中心のプレイ。 曲はあっさり終わって拍子抜け。
 イトケンのバンド"zuppa di pesce"みたいな、こじんまり感が楽しい。Warehouseでやったらはまりそう。

 前半は約55分。20分足らずの短い休憩を挟んだ後半が、しこたま怒涛だった。
 まずCoilの3人で"早川岳晴"作曲コーナーから。"04.5.10"が最近発表した新曲、そして3rdから"Jumina"を披露する。
 
 "04.5.10"はゆったりしたビートに、ほんのりブルージーさが加わる。
 テーマ直後に早川のソロ。存在感たんまりなアドリブだった。
 ここでのみ、早川は5弦ベース。鬼怒はレスポールを弾いてたはず。

 鬼怒のソロは猛スピードで疾走。アイコンタクトでがらっと音の風景が変わった。
 リバーブを効かせ、サイケにフレーズが舞い上がる。
 あれは転調したのかな。心地よかった。
 
 一転して"Jumina"だと、ギターはぐいぐい押す。
 鬼怒が弾きまくったあと、するりと繋がるベース・ソロ。
 早川は高音部分まで届くグリサンドを連発する。ほんのりアラブ風メロディのアドリブだった。
 
 3曲目から再び中山も加わる。ここからエンディングまで、快演の連発。
 素晴らしく聴き応えあった。

 "Sand"はパイプオルガンな中山の、無伴奏ソロが口火を切る。
 ドラマティックなプログレ風。リズム隊が加わって、ソロを鬼怒へ受け渡した。
 斜め上からの照明がギターのボディに反射。ギターがまばゆく、きらめいた。

 中山がゲスト扱いじゃなく、アンサンブルの一員で成立したのが"プロディガル・ソング"(タイトルは自信ない)。
 4人組バンドのレパートリーみたいにハマってた。
 
 ぐっとロックンロールな曲。ビール飲みたくなる。
 ソロまわしはキーボードからギターへ。
 ぐいぐいテンポが前のめりになる、ごきげんなロックだった。
 
 ちなみにこの曲は鬼怒に言わせると「Coilにしては明るい」そう。
 キメ部分が"Funk"と同じ、とリズム隊に突っ込まれて少々キメに手を入れたとか。
 今回はじめて聴いたが南部っぽいロックンロールは、ブルーズのカバーもやるCoilに似合ってると思う。

 本編最後は1stから"Hot ax"。
 鬼怒のブルージーなギターに誘われ、シンプルなリズムを田中はゲシゲシ叩きのめす。
 曲の冒頭はあんがい明るめ。
 ドラムのブレイク。・・・一気に、バンドが炸裂した。

 アンサンブルが見る見る分厚くなる。
 ギターソロなのに、ベースやキーボードもぐいぐい前へ出た。ちょっとインプロっぽい空間だ。
 中山は初めてムーグへ手を伸ばす。もっともスペイシーなシンセ音を混ぜる程度。実際はウーリッツァでソロをきめた。

 アンサンブルを貫いて、早川のベースが音を支える。
 ギター・ソロは猛烈に熱くなり、ラストはギターの振り下ろし。
 コーダへ。
 フィードバックが空気を切り裂いた。

 観客少ないし、アンコールは諦めつつ拍手を続ける。
 すると一息ついただけで、アンコールに応えてくれた。中山も加わった4人体制で"Spoonful"を。

 タイトルを言い放ち、いきなり鬼怒はボトルネックを太くぶちまけた。
 早川のコーラスはサビ以外でも積極的に絡む。
 間奏でほんのちょっと、ファルセットでのスキャットも聴けた。
 
 ベース、キーボード、ギターとソロ回しも、ぞんぶんに。
 早川は静かにアドリブを終え、中山がレスリーオルガン風の音色であおる。まずは単音。次第にふくらみ、最後は鍵盤を弾きまくり。

 ギターのソロはひとしきりボトルネック。いきなり鬼怒が足元へ、ボトルネックを投げ捨てた。
 そしてアームを引っつかみ、ハイテンションに弾き倒す。かっこいいなー。

 終演は22時40分頃。大満足のボリュームだった。
 Coilに中山の演奏がすんなり馴染む。プログレでも、ロックンロールでも自然に溶け込む。
 次のライブでも共演予定あるとか。いっそこのまま、カルテット編成ってのも面白そう。

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