LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
04/04/30 三軒茶屋 グレープフルーツムーン
〜変拍子ナイト番外編〜
出演:大文字、ピラルク、る*しろう
グレープフルーツムーンは初めて。すこーんと広めのハコだが、いかんせん音のヌケが悪い・・・。
PAをだいぶ工夫してたが。ボーカルが埋もれたり、音が団子になったりと、少々聴きづらかった。
それとミュージシャン側スタッフ(だと思う)の、唯我独尊な写真撮影がすごく気になった。
でっかい三脚を立てて演奏中にばしばし撮るだけでもうっとうしいのに、大文字ではホッピー神山の前へ陣取ってシャッターチャンスを狙う。
ライブのある一定の時間、ほとんどの観客はホッピーの姿が見えなかったのでは。
あとでライブ写真を商品にするため、必要な行為かもしれない。だけどぼくはカメラマンの背中や三脚を身に、ライブに行ったわけじゃない。音だけ聴こえりゃいいってもんじゃないんだ。
最前列の一席を独占した上で、あの撮影方法は猛省を促したい。
さて、ボヤキは置いといて、ライブの感想へ。
開演は19時30分。時間ちょうどに客電が落ちてびっくり。えらく律儀だ。
もっともミュージシャンは姿を現さず。しばらくそのまま、空のステージを前にぼおっとしてた。
暗いから、手元のチラシも眺められないんだもん。
BGMはパイプオルガンの音を使用した、沈鬱なテクノ。
10分くらいしておもむろに登場したのは、る*しろうの菅沼道明と吉田達也だった。
る*しろう
(井筒好治:g、菅沼道明:ds、金澤美也子:key)
それぞれのドラムセットに座る。
吉田達也がBGMにあわせるように、低くつぶやく。ドイツ語っぽい響きで唸った。
やがてランダムにドラムを素早く叩く。すぐに菅沼もドラムで加わった。
二人とも手数多く打ちのめす。パルス状のビートが次々と炸裂。
菅沼は吉田のドラムの様子を伺いながら叩いてたが、吉田は奔放にセットをひっぱたく。
おのおのに立てられたマイクへ向かい、歌声も挿入してた。
5分くらいして金澤美也子が登場。なぜかギターを構えた。
スタッフへ向かって「叫ぶマイクをちょうだい!」とマイムで伝える。
いきなり吉田達也が立ち上がった。
ドラムを叩きながらマイクスタンドを引っつかむ。
ばっしゃんばっしゃんシンバルを乱打しながらドラムセットを降り、中途半端に演奏を中断。金澤へマイクを渡す。
吉田はそのままステージから、あっけなく降りてしまった。
そのドラムセットへ井筒好治が座る。菅沼はキーボードへ。
変則編成でる*しろうのライブへ繋がった。
たぶん一曲目はかなり即興だろう。ときおり、シンプルなリフをユニゾンさせる。
金澤はギターをかき鳴らしが基調ながら、ときおりフレーズも盛り込んだ。
両指を使ってすばやくフレーズを組み立てる、菅沼の鍵盤がパーカッションっぽい弾き方で面白かった。
一曲終わったところで、自分の楽器へ持ちかえる。
「裏る*しろうでした」
迫力あるセクシーな声で、金澤が簡単に自己紹介。そのまま即興歌へ雪崩れた。
まずは2曲ほどやったか。セットリストは省略させてください。ごめん。
逆回転の「犬」では、まず音源を流した後で演奏してた。
印象は暗黒チェンバー・プログレ。CDで聴けるコミカルな要素は影を潜め、力づくで場面展開しつつ駆け抜けた。
かなり即興要素が多そう。実験精神を前面に出したステージだった。
「ここでゲストの登場。シュールな世界に行きます」
金澤の紹介で狩俣道夫がソプラノ・サックスをぶら下げてステージ隅へ。頭に載せたサングラスをかけなおした。
かなりフリーなサウンドだった。
冒頭はノーリズム。鉄琴を菅沼が叩き、鍵盤がランダムに鳴る。
狩俣はぼそぼそとつぶやく。英語と日本語を交互に喋ってたようだが、PAバランスがいまいちで、よく聞き取れなかった。
途中からサックスで入った。ビートがくっきりしてきても、サイケな雰囲気は変わらなかった記憶あるなあ。
「前回のライブで受けた」と紹介されたのが「魅惑のハワイ旅行」(だっけかな?)という曲。
冒頭こそキーボードが軽やかに連打されるが、中盤はやはりダークなチェンバーへ。曲名とのギャップがおかしかった。
「鳥」を挟んで、「マジックカーペットライド+α」が最後の曲。
この「マジック〜」は、何かの曲(聴き取れませんでした)と「マジック〜」を合わせたアレンジだそう。
まだ半分くらいの出来で、次回ライブあたりで完璧になるとか。
「マジック〜」をよく覚えてないので、どの程度ミックスしてたかは判別付かず。
「重層的に曲が動く」って言ってたが、ブロックごとのつぎはぎじゃないのかな。
ライブ全般を通し、もっとも印象に残るのが金澤のシャウト。テンションの赴くまま、叫びとおすさまが痛快だ。
逆に井筒の印象が今日は薄い。さまざまな部分で弾いてたんだが・・・。なぜだろう。
約50分のステージ。きっちりアンサンブルを軽快に決めるって予想は裏切られたが、奔放なライブは楽しめた。
願わくばもっと、いいバランスで聴きたい。3人ともボーカル取りながら演奏するから、もこっとしたサウンドじゃ魅力半減だもの。
ピラルク
沖縄から来た男の二人組。どちらもエレキギターを抱えた即興がコンセプトだ。
基本は椅子に座って、エレキギターの音をエフェクターで変調させる。
別に目新しくはないので、前半部分は辛かった。
奏者の一人がめがねをズリ上げつつ、にっこにこしながらツマミをいじったり小さなベルを鳴らしてみたり。
ハウリングもさせてたな。ノイズ出してて、楽しいのはわかる。
音にスリルが出てきたのは、相方のギタリストがカッティングを繰り出したとき。
スピーディにかき鳴らした瞬間を、ループさせる。
そこへさらにギターの音を積んだ。
彼の演奏はセンスがあって楽しめた。いっそギターソロで聴きたいな。
音量が次第に高まり、最後はハーシュノイズに。それなりに音はでかいが、インキャパやメルツほどじゃない。
いきなり右に座ってたギタリストが立ち上がり、客席に背を向けアンプの前へ座り込む。
なにやらツマミをいじってたが、ギターのシールドを引っこ抜いてしまった。
もう一人のメンバーが、吹き出るノイズのボリュームを下げて演奏終了。
約40分のステージ。 正直、観客も含め一番楽しそうだったのは奏者の片割れだったろう。
練習スタジオで大音量出して遊んでるさまを、横から見てる感じ。
観客への視点を、もっと意識した構成で聴きたくなった。即興と手癖せは違うと思う。
大文字
(ホッピー神山:key、吉田達也:ds、ナスノミツル:b)
インプログレ?!から大文字の名義へ変わって、ライブ聴くのはじめてかも。
ステージ中央にスクリーンが下ろされ、ロシア(?)あたりの短編映画が流される。
ホッピーの手元で、画像加工できるようだ。
「プログレとはシンメトリーです。だから、画像もシンメトリー」
ってMCで説明してたっけ。
どういう仕組みか知らないが、画面の一部を拡大したり、鏡面仕立てにしたり。シュールな加工をしてた。
スクリーンの邪魔にならぬよう、ナスノミツルは座って演奏する。
吉田達也はスクリーンの後ろでドラムを叩くため、なにを映されてるか見えないみたい。
演奏前や曲の合間に身体を大きく突き出し、スクリーンを覗き込む。ホッピーから「気になるんでしょ」とからかわれてた。
一曲目は吉田達也の即興の唸りから。
つるべ打ちドラミングに、ナスノのベースが載る。冒頭は画像処理に軸足を置いて、ホッピーのキーボードは控えめ。
最初はいわゆる即興っぽい、中心点の見えない演奏だった。
吉田がハイトーンで歌いながら叩き、音が次第に締まってく。
おもむろにホッピーも裏声で加わったあたりから、大文字らしい「構築された即興」演奏っぽくなってきた。
二人のファルセットが素晴らしく響く。
メロディをキーボードが繰り出し、リズム隊がユニゾンで乗っかった。
中盤でナスノが重たいリフをディストーションかけた音で提示し、盛り上がった瞬間がかっこよかった。
リフのリズムを合わせ、加速する。いったんはびしっとエンディングっぽく決めた。
しかしホッピーがそのまま静かにキーボードを奏で、演奏を繋げる。
このあとはボーカルの応酬とパターンの変化で飽きずに聴けた。
吉田がリフとなりうるリズムを次々に乱打の中から提示。ほとんどが奇数拍子だった。
約20分の即興。続いて、大文字のメンバーだけでもう一曲。こっちは15分くらいかな。
3曲目からる*しろうのメンバーが加わる、ツイン・バンド体制。
準備してるときナスノと井筒の外見が似てる、と金澤が大笑い。二人は肩を組んだりも。確かに似てるや。
大文字+る*しろうのセッションは、人数多いせいかジャムっぽくなってしまう。
計算されたアンサンブルっぽくなるかな、と期待はかなわなかった。
菅沼がいちばんはまってた。吉田とドラムの応酬だけでなく、鉄琴などの小技も織り込んでたはず。たしか。
金澤は鍵盤よりもシャウトがメインだったと思う。フレーズを弾いてホッピーとぶつかるのを避けたかな?
このダブル・トリオで2曲を演奏。後半は狩俣も加わり、ボイスやフルートを演奏してた。
二曲目はいったんびしっと決まったが、狩俣がこぼれてしまう。
そのまま喋り続ける狩俣。しだいに他のメンバーも演奏へ戻った。
大文字らしからぬ混沌さを感じた演奏だった。
最後のほう、井筒や金澤はすっかり聴衆に回ってたなあ。
大文字のライブは約50分。る*しろうとのセッションも意外に面白かった。
僕自身の気分的なコンディションも悪かったので、混沌さがまず印象に残ったライブだった。
ひさびさに吉田達也の痛快なドラムをライブで聴けて楽しかったよ。